異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全

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第36話3年後の出来事

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 ひき逃げ事故から三ヶ月。
 骨折やその他の怪我が無事完治した女は、大学の講義中に居眠りをしていた。

 事故以降、女は突然眠気に襲われ、ぼんやりとすることがある。
 詳しい検査もしてもらったが、何度調べてもらっても健康体で、原因はわからないと言われた。
 
「事故に遭った時に頭を打ったことが、なにか影響しているかもしれない。頭のことになるから、違和感を覚えたらすぐに病院に来るように」と女は医者から言われている。

 
 療養中は眠気を感じても、実際に眠ってしまうことはなかったが、今日は久しぶりの講義で、講義内容を理解できず、眠気に誘われるまま眠りに落ちていた。

 
 女は夢を見る。

 友人たちと大学構内を歩き、雑談をしている。
「来週の大型連休に旅行へ行こう」と、隣を歩く彼女が言う。
 何人か、こちらをチラチラと見てきた。
 こちらに気を使っているようだ。
「まだ本調子じゃないし、わたしは遠慮しとくね」
 そう友人たちに伝える。 
 
 
 体を揺すられ、女は目を覚ました。
 講義はすでに終わっており、教室から学生が続々と退出している。
 その中で眠り続ける女を、友人が心配し起こしてくれたようだ。
 少し眠ったおかげで女の意識は、はっきりとしているが、頭に締め付けられるような痛みを少し感じた。
 
 女を起こした友人が、心配そうな表情を浮かべた。

「大丈夫? 保険センターまで付き添おうか?」
「……少し眠かっただけだから大丈夫よ。起こしてくれて助かったわ。ありがとうね」
「それならいいけど……他のみんなは先に食堂に行って、席を取ってくれてるから、食べれそうなら一緒に行こう」

 さっき出たばっかりだから、すぐに追いつくだろうけど、と彼女は女の荷物をさり気なく持ち、女を先導した。
 友人の気遣いに感謝し、彼女と共に食堂に向かうと、教室を出てすぐに他の友人たち五人に追いついた。

 どうやら会話が盛り上がり、歩みが遅くなっているようだ。
 
「これじゃあ、先に行ってもらった意味がないじゃないの」
 
 女の荷物を持った彼女が、隣でぶつくさと小声で愚痴をこぼす。
 女はその愚痴が聞こえなかった振りをして、そのまま集団に合流した。

 七人になった集団で食堂へ向かう。
 女は集団の一番後ろを歩き、隣には荷物を持ってくれている彼女が歩いていた。

(夢で見た光景と似ている……似てるけど、少し違う?)

 夢で見た友人たちとは、何人か顔ぶれが違っていた。

(違っているけど、夢で見たのはみんな知り合いだったし、夢なんてそんなものね)

 痛みの引かない頭を、なでるように押さえる。
 すると、前を歩いている友人が振り向いた。

「来週のゴールデンウィークに、みんなで旅行とかどうかな?」

 さっきもこの話で盛り上がってたんだよ、と楽しげに話してきた。

 女の頭に強い痛みが走る。
 夢と現実の差異、似ているのに確かに違う。
 その世界のズレが、女の中で歪みになり、痛みに変わっていく。
 
 女は思わず顔をしかめた。
 その反応に友人たちに緊張が走る。
 一瞬、沈黙が空間を支配した。
 
 すぐに女は自身の失態に気づく。

「ごめんなさい、まだ本調子ではないみたいなの。みんなは楽しんできてね」 

 だから私達のことは気にしなくていいわと、つけ入る隙もなく言い切る。

 その後、気まずげな友人たちと一緒に昼食を済ませた。
 
 そして、頭の痛みを診てもらうため、午後の講義を自主休校にし、女は病院へ向かった。


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みんなの感想(13件)

怠惰皇
2020.06.18 怠惰皇

龍神に守られ安心し、龍神から与えられる食べ物を美味しそうに食べる、そんな人間の姿を見るのが幸せって……
シャロン、それ相手を人間としてじゃなく、ペットとして愛でてる感覚だからね?
それも水槽の金魚が餌を食べているのを観賞してホッコリしているレベル。
でも現状、シャロンにそれを指摘出来そうなのが居ないから、まだまだ悪化して行きそうですね。

2020.06.18 克全

感想ありがとうございます。

強大で身勝手な神族に護られる世界観を考えると、こういうパターンも1作は書いておくべきだと思いました。

今後の小説では、そんな神に抗うヒロインも書いていきます。

この世界感を固めて行こうと思っています。

解除
rickdius
2020.06.12 rickdius

 …たまごさん、身近に「ドラえもん」がいたら大抵は「のび太君」になると思いますよ。

2020.06.12 克全

感想ありがとうございます。

未だに24時間ポイントが2万を維持しているので、それなりの需要があるのだと思っています。

解除
たまご
2020.06.10 たまご

主人公が優しいを通り越して、思考放棄した頭が可哀想な子になっちゃってるような......。
龍がシビアに物事を考えるので、その対比で余計に主人公が残念な感じに思えちゃうのかもしれませんが。

主人公「あの町もあの村も助けてあげなくちゃ!」→読者「馬鹿言ってないでさっさと国出なよ。他人の力で人助けして、ぶっちゃけ感謝される事に快感覚えてるでしょ」
主人公「あれできない?みんな自立した人間でありたいと思うの」
→龍「純粋無垢で天真爛漫で慈愛に満ちてる!」
→読者「自立とは無縁な主人公なのに台詞だけは立派とか、悪質な人間だと思うよ(真顔)」

これからの展開で、主人公が周囲から慈悲深くて素晴らしいと評価されるんだろうけど、「無能な上に寄生虫なだけなのに、龍の手柄を自分の手柄にしやがった」という、読者のツッコミが増える予感がします。
主人公が便利な龍に頼らず、クワを片手に汗水たらしてムキムキの筋肉をゲットできるまで努力するような主人公だったら、きっと心優しいんだなと思う読者は多かったと思います。

2020.06.10 克全

感想ありがとうございます。

次作はそういう主人公を用意します。

解除

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