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第24話27日目の出来事

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 ロナンデル王国は地獄のような状態だった。
 喰うか喰われるかの弱肉強食の世界となっていた。
 村単位や街で生き残ろうと、他の弱い村や街を襲うような状態だった。
 弱い者は強者に従って生きるしかなかった。
 だが、食糧が限られているので、強者も全ての人間を養えるわけではない。
 
 飢え死にするまで働かせるか、その場で愉悦のために殺すか、わずかに優しさの残る強者に出会えた時だけ、追放される。
 そんな追放された者と、最初からあきらめて彷徨っている者が、一緒に他国を目指して逃げていた。
 流民としか言えないような悲惨な集団だった。

 だが、彼らの多くは絶望する事になった。
 最初の頃には国境を越えられたのに、今では誰一人国境を越えられないのだ。
 彼らが自暴自棄となり死を選ぶ、死を選ぶくらいの覚悟ができたのならと、他人から略奪し殺す者になるのか、どちらかの道を選ぶ事になる。
 ある噂が流れていなかったら、そうなっていた。

 その噂とは、エドワド王太子とジェスナ嬢に陥れられたシャロン嬢が、守護龍に守られて生き延び、楽土で幸せに暮らしているというものだった。
 守護龍は人間を忌み嫌っているが、シャロン嬢にお願いしたら、人間にも生き残る道があるのだと。
 地獄に差し込む一筋の希望の光のように、全ての流民の心を救った。

 そんな噂を流したのは、戦いの女神セクメトだった。
 セクメトは勇猛果敢な一騎打ちも好きだが、智謀を駆使した戦略戦術的な戦いも大好きだった。
 それが例え噂を流すような謀略戦でも、楽しめるのなら構わなかった。
 今回相手にする神龍は単純な一騎打ちが好きで、今迄は互いに死力を尽くして正面で戦っていたが、今回は他の神々のお願もあったので、謀略を加えていた。

 シャロン嬢との時間を優先し、力任せの一騎打ちが好きな神龍は、戦いの女神セクメトの謀略に全く気がついていなかった。
 ある意味好き勝手にやられていた。
 だが、そもそも神龍は、そのような事を気にしなければいけないような、弱い神ではなかった。
 敵神が正面から攻撃を始めた時に戦いを始めても、簡単に勝てる強い神だった。

 だが戦いの女神セクメトは、最初から神龍と戦う気がなかった。
 魔と人間が隣国に漏れなければいいだけだった。
 だが、それだけではなく、戦いの女神セクメトには、ほんの少し神龍よりも人に対する優しさがあった。
 そも優しさが、ロナンデル王国の民に希望を与えることにした。
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