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第17話13日目の出来事

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(ねえ龍ちゃん。
 この荒地を緑あふれる草原にできないかな?
 いえ、稲や麦が実る畑にする事はできないかな?
 ごめん、いくら龍ちゃんでも、これほど広い荒地を緑の畑にするのは難しいよね)

 神龍は最初から嫌な予感がしていたのだ。
 荒地に住む人達が心配だと言われた時から、こう言われるかもしれないと、心密かに思っていたのだが、その通りの展開になっていた。
 この国を滅ぼしたい神龍からすれば、全くの無駄でしかない。
 まあ、神龍の持つ魔力からすれば、どれほど広大な荒地でも、畑にするくらいは簡単な事ではあるのだが。

(大丈夫だよ。
 その程度の事は、居眠りしていてもできるよ。
 なんなら今直ぐやってあげようか?)

 やっぱり断れなかった。
 まあ、最初から神龍にシャロンの頼みを断る考えなど爪の先ほどもない。
 それどころか率先してやる気になってしまう。
 それほどシャロンの憂い顔は神龍の心に痛みを与え、シャロンの笑顔は神龍の心に喜びを与えるのだ。

(お願い、龍ちゃん。
 みんな働きたいと思うの。
 誰だって誇り高く生きたいと思うの。
 食べる物も住む所も着る物も与えられる、誰かに飼われるような生活ではなく、自立した人間でありたいと思うの)

 シャロンの言葉は、神龍には納得できないことだった。
 人間はもっと汚い存在だと思っていた。
 極一部の者以外は滅ぼすべきだとも思っていた。
 だが、それでも、シャロンが望むなら助けるしかないとあきらめていた。
 いや、シャロンの笑顔を見る事ができるのなら、積極的に助けてもいいと思った。

(じゃあ見ていてね。
 一瞬で草花が芽吹き、緑が広がるからね)

 そう言いながら、既に下準備をしていた。
 大気の組成を組みかえて、雨を降らすのはもちろん、霧や露を創り出した。
 他の町や村に迷惑をかけたのが後でシャロンにバレて、哀しそうな顔をされるのが嫌で、どこにも迷惑がかからない大河や地下水脈からも水を引いている。
 そこまで下準備をしていたから、直ぐに緑の大地にできると口にしていた。

(うん、ありがとう。
 やっぱり龍ちゃんは凄いね。
 なんでもできるんだね)

 満面の笑顔を向けられて、神龍はまさに天にも昇る喜びを感じた。
 その喜びのまま、溢れんばかりの、神龍からみればそれほどでもない魔力を使って、荒地に陸稲・小麦・大麦・ライ麦・高粱・蕎麦・粟・稗を芽吹かせた。
 人さえいれば、直ぐに実りを刈りいれる事ができるようにした。
 荒地の高低や日当たり、風の通りや水源の近さによって、芽吹かせる穀物を変えて、穀物毎に分けて収穫できるようにした。
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