異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全

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第15話11日目の出来事

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(この国で困っている人達は、みんな助けて欲しいな。
 龍ちゃんならできる?)

(任せなさい!
 僕にできない事なんてないからね)

 龍神の本心は、人間など助けたくなかった。
 滅べばいいと考えていた。
 だが、シャロンのお願いを無視できなかった。
 だから最低限の人間、シャロンの眼に触れそうな人間だけ助けようと思った。
 旅程の先にある村々にだけ神龍鱗兵を派遣して、可哀想な民を助けようとした。

 しかしそうはいかなかった。
 シャロンは純真無垢で天真爛漫で慈愛に満ちている。
 真直ぐに、旅程通りに進んでくれなかったのだ。
 あの町が心配だ、あの村が気になると突然言いだしてしまう。
 そうなると、その町や村だけでなく、変更された旅程の間にある町や村はもちろん、周辺の町や村も救わなければいけなくなる。

 神龍にとってはとても面倒な話だった。
 この国を完全に滅亡させる心算だった、神龍の思惑とは完全に違ってしまう。
 だが、自分の思惑など、神龍にはどうでもよかった。
 シャロンの哀しみに沈む顔など見たくなかった。
 シャロンが自分に失望と落胆の表情を向ける事だけは、絶対に許容できなかった。
 神龍はシャロンの笑顔だけを見ていたいのだ。

 神龍はいちいち神龍鱗兵の派遣先を選ぶのが面倒になった。
 派遣先を選ぶから命令に細々とした条件をつけなければいけないくなる。
 心正しい人間を救えとだけ命令することができれば、神龍心底嫌っている人間を救う必要がなくなる。
 だが問題は、それをシャロンが認めてくれるかどうかだ。

(ねえシャロン。
 悪い人間も助けないといけないかな?
 今は弱い立場で苦しめられる側でも、立場が変われば平気で人を苦しめるような人間も、助けないといけないのかな?
 シャロンは自分が助けた人間が、その後で人を殺したり傷つけたりしても平気でいられるの?)

(……たぶん、耐えられないと思う。
 そんなことになったら、自分で自分を責めてしまうと思う。
 でも、眼の前で苦しんでいる人がいたら、後の事を考えずに助けたくなると思う。
 私は自分勝手だね……)

(そんな事はないよ。
 シャロンは優しいだけだよ。
 でも僕は、シャロンが苦しみ哀しむ姿は見たくないんだ。
 だから僕に任せてくれないかな。
 シャロンの眼に入る範囲では、全ての苦しむ人を助けるよ。
 その上で、悪事をしないように話して聞かせて、それでも悪事を働くようなら厳正に処罰する。
 だけど、シャロンの眼に入らない範囲では、後で悪事を働く人間は見捨てる。
 その見分けは僕に任せてくれないかな。
 僕はこれでもこの国の守護龍だったからね。
 決して悪いようにはしないよ)
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