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第11話7日目の出来事

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 王城内、いや、王都中に噂が広まった。
 先妻のロージーを殺して正室の座を奪い、義理の娘となったシャロンを苛め抜き、遂には婚約者を奪い追放刑にした天罰で、極悪夫人イザベルの娘ジェスナが、二目と見られない醜い顔になったと。
 今迄虐められてきた貴族や庶民が、率先して噂を流していた。

 いつもならそのような噂を流す者は、イザベルが先頭にたって弾圧した。
 だが今はそんな余裕が全くなかった。
 根も葉もない噂なら、弾圧する時間も力もあっただろうが、今のイザベルには真実を隠蔽する時間も力もなかった。
 金と権力で集めた医師も治癒術師も、ジェスナを治すことができなかった。

 怒り狂ったイザベルが、治療のできなかった女性医師を殺したのだが、それがシリタナ王女お気に入りの侍医だったことで、王家では大問題となっていた。
 それでなくても国王が権力を再掌握に動いていたのだ。
 守護龍が去ったことに、国王は危機感を抱いていたのだ。
 この凶行を王太子とモドイド公爵から力を奪う好機と考え、斥候団を使ってモドイド公爵派の切り崩しに動いた。

「貴男!
 もっと腕のいい医者と治癒術師を集めてください。
 貴男はジェスナが可愛くないのですか!」

「無理だ。
 お前がシリタナ王女王女の侍医を殺したことで、全ての医師を敵に回した。
 治癒術師も同じだ。
 全員国王陛下の保護を求めて、王宮に逃げ込んでいる。
 俺でもどうにもならん」

「なにを言っているのですか!
 貴男はこの国の宰相で、国王を超える権力者ではありませんか!
 国王など捻じ伏せて、医師と治癒術師を連れてきてください!」

「愚か者が!
 私も王太子も、国王陛下の代行として権力をふるっているだけだ!
 お前がこれほど愚かな事をしなければ、まだどうにかなったが。
 今ではもうどうにもならん。
 今国王陛下を暗殺すれば、多くの貴族士族が私と王太子を弑逆罪で処罰する」

「なにを言っているのですか。
 貴男はこの国最大派閥の領袖で、誰も逆らえないではありませんか」

「黙ってろ!
 この馬鹿者が!」

 モドイド公爵はイザベルが吹き飛ぶほど強烈な鉄拳を加えた。

「お前が理不尽に医者を殺したことで、全ての医者と治癒術師が、私の派閥にいる貴族とその一門の治療を拒否した。
 それでなくとも王宮で原因不明の疫病が流行しているのだ。
 医師や治癒術師に見て貰えないとなれば、命にかかわるのだ。
 お前の愚行のせいで、我が派閥は壊滅状態だ。
 私の呼び出しに応じたとなれば、治療どころか診察もしてもらえん。
 全てはお前のせいだ!」

 モドイド公爵家は殺伐としていた、
 気絶するほどの痛みで、四六時中屋敷中に広がる悲鳴を上げ続けるジェスナ。
 ジェスナ可愛さに家臣に八つ当たりするイザベル。
 崩壊する派閥を維持して権力を守ろうとするモドイド公爵。 
 屋敷内で殺し合いが始まりそうなほどだった。
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