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第9話5日目の出来事2

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 法も論もなかった。
 龍神に大切なのは、自分が気に入っているかいないか、それだけだった。
 その点でいえば、龍神はシャロンの事を大いに気に入っていた。
 だからシャロンの願いは無条件でかなえてあげるつもりだった。
 だが同時に、それがもとでシャロンが傷つく事を気にしていた。
 シャロンが助けた人間が、他の人間を傷つけたら、シャロンがとても哀しみ傷つく事が目に見えていた。

(やれ、やれ、しかたないね。
 シャロンが望むのなら助けてあげるよ。
 だけどね、これだけは忘れてはいけないよ。
 人間の本性は、どうしようもない悪なんだ。
 シャロンが助けた人間が、他の人を傷つけ殺すことになっても、それは人間の本性で、シャロンの責任ではないよ。
 それを忘れず、そんな事になっても気にしないと約束するのなら、助けるよ)

(ありがとう!
 絶対に忘れないわ。
 だから助けてあげて、龍ちゃん)

 龍神はシャロンの言葉を全く信じていなかった。
 そのような状況になれば、シャロンが激しく後悔して哀しむのが目に見えていた。
 だから単純に助けたりはしなかった。
 助けた人間を囲い込んで、他の人間を傷つけないようにするつもりだった。
 だがその前にしなければいけない事があった。

(山賊共がこれからも人を傷つけ殺せないように、ここで処分するからね。
 シャロンはそんなところも見たくないだろうから、ここで静かにしていてね)

(分かったわ。
 卑怯だとは思うけど、私は弱いから、そうさせてもらうわね。
 ごめんね、龍ちゃん)

 龍神は情け容赦なく山賊共を切り刻んだ。
 龍神にとっては、息をするようなわずかな魔力だが、それを叩きつける事で、山賊共は首と四肢が宙を舞い、血しぶきが吹き荒れた。
 これは助ける民への警告でもあった。
 龍神との約束を破れば、同じ目にあわすという警告だった。

 だがその惨状は、シャロンには分からない状態だった。
 締め切られた馬車の中には、音も気配も伝わらなかった。
 同時に、近衛騎士の眼にも映らず耳にも伝わらなかった。
 近衛騎士達には、偽りの情景が映り伝わっていた。
 王太子の手先となった山賊達が、国王陛下を弑逆しようと自分達に襲い掛かり、返り討ちした記憶になっていて、抑えきれない王太子への怒りとなっていた。

(余は龍の神である。
 余と龍神の巫女の慈悲により、お前達を助けてやる。
 だが絶対に忘れるな。
 余と巫女の慈悲を踏み躙り、人を傷つけ害する者には、天罰をくだす。
 ここにる余の分身は、お前達を護る守護者であると同時に、お前達の悪事を調べ罰を罰をあたえる断罪者でもある。
 その事を絶対に忘れるな)

 龍神は龍神鱗兵を十体貸し与え、村を護り見張らせることにした。
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