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第8話5日目の出来事1

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「どけ、どけ、どきやがれ!
 俺たちゃ王太子殿下の代官様だぞ。
 邪魔する奴は王侯貴族だって容赦しないぞ!」

 街道を封鎖するように、横になった男達がのし歩いてくる。
 近衛騎士団の隊列も、王家の馬車も無視だ。
 いや、山賊同然の汚い身なりから、あまりにも無学で、近衛騎士団の装備も、王家の紋章も理解できないのかもしれない。

「控えおろう!
 我らを誰だと心得る!
 近衛騎士団であるぞ!
 この馬車に乗っておられるのは、恐れ多くも国王陛下であられる。
 王太子殿下の代官であろう、これ以上の無礼は死罪になると心得よ!」

「うっへえへえええ!
 申し訳ございません!
 ひらに、ひらにご容赦願います」

 この近衛騎士団を束ねる近衛騎士長が、厳しく山賊どもを尋問する。
 一切の容赦をせず、僅かでも不審の行動をすれば、一斉に襲い掛かる体制だ。
 それもそうだろう、近衛騎士達は国王を護っているつもりなのだ。
 山賊共が最初に王太子の代官を名乗っていなければ、既に皆殺しにしていた。

 どう見ても偽者に見える王太子の代官を名乗る山賊だったが、本物だった。
 厳密に言えば、王太子の代官が税の徴収に送った下役に賄賂を贈り、役目を代行できるようになった山賊だった。
 それでなくても正規の税金に代官が役得分の税を上乗せするのだが、それに下役の役得に山賊の役得が加わる。
 実際に領民が奪われる税額は、正規の税の倍以上、収穫量を超えるという、ありえない税額だった。

 収穫量以上の税金を農民が払えるわけがない。
 そんなことは山賊達も最初から分かっていて賄賂を払っている。
 目的は奴隷の確保だった。
 金になりそうな村人を、全員奴隷として売るのだ。
 若い女だけではなく、少しでも金になりそうな男も子供も引き連れていた。
 全ての女が、一部の男までが、性的乱暴を受けているのが一目瞭然だった。

(龍ちゃん、私こいつらが許せない。
 でもここで助けてあげても、また王太子の手先に攫われてしまうわ。
 私は無力なのね)

(やれ、やれ。
 仕方のない子だね。
 人間なんて救う価値のない生き物なんだよ。
 今は可愛そうに見えても、少しでも力を持ったら、虐げられる立場から、虐げる立場に豹変するのが人間だよ。
 その事は長年生きてきた僕が一番よく知っているよ)

(でも、それでも、龍ちゃんは人間を護ってくれていたよね?
 少しは人間の事が好きなんじゃないの?)

(それは建国王と約束したからさ。
 あいつは少しマシな人間だったからね。
 そうじゃなければとっくに人間を見捨てていたよ。
 それにやりたい事もなかったしね。
 居眠りのついでに魔を喰っていただけさ)

(だったら私の事はどう思っているの?
 私のためならこの人達を助けてくれるの?)
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