2 / 37
1話初日の出来事1
しおりを挟む
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪により婚約を破棄し追放刑とする」
エドワド王太子は、婚約者だったシャロンに冷たく言い放った。
モドイド公爵家長女のシャロンは、異母妹ジェスナに陥れられた。
いや、家族全員に裏切られたのだ。
シャロンは先妻ロージーの子供で、妹のジェスナとは母親が違った。
シャロンの母親ロージーは、父モドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていたが、それは父モドイド公爵の黙認の上でやられた凶行だった。
本当ならシャロンも、後妻に入ったイザベルに殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。
王太子だった第一王子ウイケルの婚約者には、イザベルの娘ジェスナが選ばれ、シャロンは第二王子エドワドの婚約者にされていた。
普通の貴族の常識では、長女が王太子ウイケルの婚約者に選ばれるところが、極悪夫人イザベルの裏工作で逆転していた。
モドイド公爵は王太子と第二王子を押さえて、王家の実権を奪おうとしていた。
ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。
だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。
国王になりたかったエドワド第二王子が、実の兄を謀殺したのだ。
なんとも酷い話だった。
だがこんな時のために、モドイド公爵はエドワド王子の婚約者にシャロンを押し込んでいた。
何事もなければ、シャロンは愚かで残虐なエドワド王子と結婚させられていたが、ロナンデル王国はあれほどの混乱と不幸に覆われなかっただろう。
だが何事もなく終わらなかった。
どうしても王妃に成りたかったジェスナが、身体を張ってエドワド王子を籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせたのだ。
「はい、謹んで罰をお受けさせていただきます」
シャロンは無実の罪を受け入れた。
抵抗しても無駄だと知っていた。
何を訴えても、黙殺されるか更なる罪を捏造されるだけだと知っていた。
イザベルによる長年の虐待で、生き残るための術を身につけていた。
それは逃げる事だった。
無理に抵抗するのではなく、戦略的撤退をする事で、生き残る事を最優先した。
実の母を毒殺された現実が、名誉や誇りよりも、命を優先する性格にシャロンを育てていた。
(龍ちゃんごめんね。
もう会いに行けなくなっちゃった)
シャロンは心の中で謝った。
この国を守る守護龍に心から謝った。
王家の人々の魂が穢れ、もう誰も入れなくなってしまった守護龍の間。
国を災厄から護る、神に匹敵する龍が住むと伝えられる、王城の地下深くにある部屋だったが、シャロンはそこに入って守護龍と魂を通わせていたのだ。
(謝る必要なんてないよ。
僕はシャロンと一緒に行くんだから)
エドワド王太子は、婚約者だったシャロンに冷たく言い放った。
モドイド公爵家長女のシャロンは、異母妹ジェスナに陥れられた。
いや、家族全員に裏切られたのだ。
シャロンは先妻ロージーの子供で、妹のジェスナとは母親が違った。
シャロンの母親ロージーは、父モドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていたが、それは父モドイド公爵の黙認の上でやられた凶行だった。
本当ならシャロンも、後妻に入ったイザベルに殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。
王太子だった第一王子ウイケルの婚約者には、イザベルの娘ジェスナが選ばれ、シャロンは第二王子エドワドの婚約者にされていた。
普通の貴族の常識では、長女が王太子ウイケルの婚約者に選ばれるところが、極悪夫人イザベルの裏工作で逆転していた。
モドイド公爵は王太子と第二王子を押さえて、王家の実権を奪おうとしていた。
ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。
だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。
国王になりたかったエドワド第二王子が、実の兄を謀殺したのだ。
なんとも酷い話だった。
だがこんな時のために、モドイド公爵はエドワド王子の婚約者にシャロンを押し込んでいた。
何事もなければ、シャロンは愚かで残虐なエドワド王子と結婚させられていたが、ロナンデル王国はあれほどの混乱と不幸に覆われなかっただろう。
だが何事もなく終わらなかった。
どうしても王妃に成りたかったジェスナが、身体を張ってエドワド王子を籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせたのだ。
「はい、謹んで罰をお受けさせていただきます」
シャロンは無実の罪を受け入れた。
抵抗しても無駄だと知っていた。
何を訴えても、黙殺されるか更なる罪を捏造されるだけだと知っていた。
イザベルによる長年の虐待で、生き残るための術を身につけていた。
それは逃げる事だった。
無理に抵抗するのではなく、戦略的撤退をする事で、生き残る事を最優先した。
実の母を毒殺された現実が、名誉や誇りよりも、命を優先する性格にシャロンを育てていた。
(龍ちゃんごめんね。
もう会いに行けなくなっちゃった)
シャロンは心の中で謝った。
この国を守る守護龍に心から謝った。
王家の人々の魂が穢れ、もう誰も入れなくなってしまった守護龍の間。
国を災厄から護る、神に匹敵する龍が住むと伝えられる、王城の地下深くにある部屋だったが、シャロンはそこに入って守護龍と魂を通わせていたのだ。
(謝る必要なんてないよ。
僕はシャロンと一緒に行くんだから)
10
お気に入りに追加
1,338
あなたにおすすめの小説

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?
ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで
桃田みかん
恋愛
オリエンス王国では十五歳になったら、教会で魔力の有無と属性を調べることが義務付けられている。
リーリエが検査石板に手を当てた瞬間、虹色に輝き出した。それを見た瞬間、気を失ったリーリエは不思議な夢を見ていた。
前世と思われる数々の記憶。
ん?わたしのピンクブロンドの髪、ざまぁされるヒロインの定番では?
いやいやいや…断固拒否で!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる