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33話

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 フェルドナンドは恐ろしいです。
 近隣諸国同士を疑心暗鬼にさせて、互いを牽制させる事に成功しました。
 どの国も他国がモンザ王国の領地を得る事を警戒しています。
 できれば賠償金ですませて、モンザ王国が残る事を望んでいます。
 そして将来自分たちが領地を奪う事を考えているのです。

「女王陛下。
 命令をお願いします」

 フェルドナンドが出陣命令を出すようにもよおします。
 表情を変えないようにしていますが、正直怖いです。
 私も彼の計画の駒でしかないのでしょう。
 汚名を着せられて殺されてしまうかもしれません。

 ですが、防げない訳ではありません。
 フェルドナンドは誘導はしますが、強制はしません。
 本人の欲と本能を刺激して操りますが、本人が欲に負けず、王侯貴族の責任を果たしていれば、陥れられないのです。
 その事は確信できます。

 フェルドナンドは狡猾ですが、善人を陥れた事はありません。
 本当に短い期間しか付き合いはありませんが、とても濃密な付き合いです。
 国を奪い支配するような、国家規模の大謀略の共犯を二度もしています。
 その中で、一度も直接善人を陥れていないのです。
 だから、私が女王としての責任を果たしていれば、フェルドナンドに操られる事はないのです。

「出陣を命じます」

 その後エヴァの檄を受けた攻撃軍が出陣しました。
 元々飛行魔術が使えた飛行騎士千騎は国の護りに残し、四千騎による強襲です。
 鎧袖一触でした。
 モンザ王国にも国境を護る飛行騎士はいましたが、敵ではありません。
 我が国を警戒して、飛行騎士を百騎ほどに増強していたようですが、簡単に捕虜にできました。

 モンザ城にも千騎弱の飛行騎士がいたそうですが、中には魔力の大半を飛行魔術に費やしている者もいます。
 飛行魔術しか適正のない魔術士もいるのです。
 ですが我が国の攻撃軍は、突出した攻撃魔術を使える者に、飛行魔術の魔道具を貸与しているのです。
 彼らは一撃でモンザ城を粉砕してくれました。

「女王陛下。
 貴族に対する恩赦を提案いたします」

「どれほどの悪行を重ねていてもですか?」

「はい、悔い改める機会を与えるべきだと思います。
 今までは仕えるべき王家が悪かったのです。
 女王陛下の慈愛と威光ならば、全ての貴族を正しく導けます。
 どうか一度だけ更生の機会を与えてやってください。
 もし女王陛下にお仕えして悪事を働くようなら、その時罰を与えればいいのです」

「分かりました。
 ならば許しましょう。
 過去どれほどの悪行を重ねていようと、これから悪事を働かないと約束するのなら、本領を安堵しましょう。
 ですが今回だけです。
 以後何か悪事をすれば、黒幕も探し出して皆殺しにします。
 いいですね」

「はい、女王陛下」

 三文芝居です。
 フェルドナンドと打ち合わせてやった芝居です。
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