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6話

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「なんという事を申されるのです、父上!
 下劣なクラリスにエレノアを渡したりしたら、正しい裁きをせずに、私怨で処刑してしまいます。
 エレノアを渡してはいけません!」

 やれやれ、面倒を押し付けてくれますね。
 国王も馬鹿ではないのかもしれません。
 いえ、何も考えずに言った、偶然の産物かもしれません。
 それでも、私がエレノアを処刑したら、私の評判に傷がつくのは確実です。
 少なくとも馬鹿王太子は散々私を叩くでしょう。

「ご厚意感謝いたします、国王陛下。
 もう王太子殿下を誘惑することがないようにしますね」

「ヒィィィィイ!
 ゆるして、ゆるして、許してくださいお姉様!
 もうしません。
 もう二度とお姉様を裏切ったりしません。
 だから助けて!
 助けてください!
 王太子殿下!
 アキーレヌ殿下!
 助けて!
 たすけてください!」

「エレノア!
 ああ、エレノア!
 やめよ!
 やめるのだ!
 エレノアを助けろ!
 クラリスを殺せ!
 王太子の命令だぞ!
 余が王位を継いだら必ず一族皆殺しにしてやるぞ!
 それでもいいのか!」

 うるさいですね。
 これ以上この汚い声を聞いていたら、頭がおかしくなってしまいます。
 心が穢れてしまいます。
 それに、王太子がさらに馬鹿な脅しを近衛騎士たちに言い放った今こそ、私が威厳を示して近衛騎士たちに恩を売っておくべきですね。
 姑息なやり方だと分かっていますが、貴族ならやらなければいけない事です。

「黙りなさい腐れ王太子。
 近衛騎士の方々は、国王陛下の命令に従っておられるだけです。
 それを誅するなどというのは、王太子が王命に逆らい謀反を企てている証拠です。
 これ以上穢れた口を開くなら、私がこの場で首をはねて差し上げますよ。
 貴男にエレノアのために命を懸ける度胸があるのですか?
 私はこの場で貴男を殺す覚悟がありますよ!」

「ヒィィィィイ!
 たすけて、たすけて、助けてくえぇぇぇ!」

 情けないことです。
 私が王太子の首に剣を押し付けると、震えあがって失禁してしまいました。

「国王陛下。
 腐れ王太子の言葉を耳にされましたね。
 それでも王太子を助けるのですか?」

「……」

「ならば一つ提案があります。
 この場にいる近衛騎士の方々の領地を、我がファンケン公爵領の隣地に移封してください。
 そうしないと、彼らが王太子にどんな目にあわされるか心配です。
 私を庇ってくださったことで、騎士の方々だけでなく、一族一門の方々まで皆殺しにされるなど見過ごしにできません。
 もしこの願いをかなえてくださらないのなら、私は命の恩を返すために、王国領を攻め取って騎士の方々に報わなければなりません。
 私も王家との戦争を望んでいるわけではありません。
 どうか近衛騎士の方々と、一族一門の方々の領地を我がファンケン公爵家の近くに移封してください」

 さて、国王陛下は決断できますか?
 私としてはどちらでもいいのです。
 すでに近衛騎士の方々の心はつかみました。
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