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第四章
第八十三話:決断
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「では、薩摩藩の動きを見極めた後で、一橋治済と一橋家の家臣を召し捕り、厳しく取り調べる事にする。
伊予松山藩の隠岐守殿には大目付を差し向け、閉門謹慎処分とする。
陸奥白河藩の上総介殿は、養父の越中守殿に大目付を差し向けて閉門謹慎処分としていただく。
方々にはそのつもりで動いた頂きたい」
「「「「「はっ」」」」」
幕閣が集まった評議では多くの意見がでた。
中にはこれを機会に薩摩藩を潰せという過激な事を口にする者もいた。
だが徳川家治も田沼意次もそんな事は考えていなかった。
今薩摩藩を追い詰めたら一橋治済や松平定信を擁して戦いを始めるかもしれない。
血の繋がった後継者のいない徳川家治は、将軍家を護るという意味では弱いのだ。
だから今回は薩摩藩を追い詰めないようにした。
大目付の一人が噂を確かめに上屋敷を訪問して生死を確かめる。
その際、もし本当に島津重豪が殺されていたとしても、一橋治済との縁を切る事を前提に、内々に当主交代を認めるのだ。
薩摩藩が藩の存続を優先する事を確かめた後で、一橋治済を捕らえる事になった。
取り調べの結果次第では、一橋治済だけでなく子弟も処刑される可能性がある。
松平定国と松平定信も厳しく処分される。
だがそうなると徳川吉宗の血筋で徳川家治の跡を継ぐ者がいなくなる。
この点に関しては幕閣からも不安の声が上がった。
だがそれには将軍徳川家治が迷いなく堂々と答えた。
次期将軍は清水重好と定める。
だが清水重好には後継者がいないので、会津松平家の世継ぎ松平容詮を処分した一橋家の当主に迎え、清水重好の次の将軍候補とすると言うのだ。
幕閣は反応に困っていた。
血統から言えば、清水重好が次の将軍になる事には何の問題もない。
だが清水重好には子供がおらず、これから生まれる可能性も低かった。
直ぐにまた次期将軍問題に頭を悩ますことになる。
だから徳川家治が清水重好の次に将軍を指名しておいてくれるのはありがたい。
問題は会津松平家に将軍を出す資格があるかどうかだった。
「その方たちの言いたい事は分かっている。
だが、会津松平家が二代様の御血筋であることは間違いのない事だ。
筋目から言えば祖父の八代様より将軍を継ぐのに相応しい血筋だ。
我が愛する息子、次期将軍を弑逆した大逆の血筋よりは遥かに相応しい。
それに尾州も紀州も跡継ぎは分家に臣籍降下した者たちばかりだ。
そのような者よりは遥かに跡継ぎに相応しい」
徳川家治の言葉は詭弁であった。
松平容詮も会津松平本家を分家した松平容章の子供で、藩主松平容頌の養嗣子となっているのだが、幕閣にはその事を知る者がいなかった。
それに知っていたとしても、徳川家治の強い意思には逆らえなかっただろう。
「それに、絶対に会津松平家からの養子が将軍を継ぐとは限らない。
余も頑張って世継ぎをもうけるようにする。
清水宮内卿も頑張ると言っている。
もし余や宮内卿に子が生まれたとしても、忠誠心の厚い会津家の者ならこの度のような大逆を起こすことはあるまい」
徳川家治に今回の徳川家基暗殺の件を引き合いに出されたら、強いて尾州家や紀州家から養子をもらえとは誰も言えなくなった。
そんな事をすれば血で血を洗う暗闘が始まる事は誰にだってわかる事だった。
八代様が将軍に就任するまでと就任してから起こった事を知らない幕閣はいない。
会津松平家ならそんな事はしない。
そう思われるだけの忠義を初代が証明していたのだ。
伊予松山藩の隠岐守殿には大目付を差し向け、閉門謹慎処分とする。
陸奥白河藩の上総介殿は、養父の越中守殿に大目付を差し向けて閉門謹慎処分としていただく。
方々にはそのつもりで動いた頂きたい」
「「「「「はっ」」」」」
幕閣が集まった評議では多くの意見がでた。
中にはこれを機会に薩摩藩を潰せという過激な事を口にする者もいた。
だが徳川家治も田沼意次もそんな事は考えていなかった。
今薩摩藩を追い詰めたら一橋治済や松平定信を擁して戦いを始めるかもしれない。
血の繋がった後継者のいない徳川家治は、将軍家を護るという意味では弱いのだ。
だから今回は薩摩藩を追い詰めないようにした。
大目付の一人が噂を確かめに上屋敷を訪問して生死を確かめる。
その際、もし本当に島津重豪が殺されていたとしても、一橋治済との縁を切る事を前提に、内々に当主交代を認めるのだ。
薩摩藩が藩の存続を優先する事を確かめた後で、一橋治済を捕らえる事になった。
取り調べの結果次第では、一橋治済だけでなく子弟も処刑される可能性がある。
松平定国と松平定信も厳しく処分される。
だがそうなると徳川吉宗の血筋で徳川家治の跡を継ぐ者がいなくなる。
この点に関しては幕閣からも不安の声が上がった。
だがそれには将軍徳川家治が迷いなく堂々と答えた。
次期将軍は清水重好と定める。
だが清水重好には後継者がいないので、会津松平家の世継ぎ松平容詮を処分した一橋家の当主に迎え、清水重好の次の将軍候補とすると言うのだ。
幕閣は反応に困っていた。
血統から言えば、清水重好が次の将軍になる事には何の問題もない。
だが清水重好には子供がおらず、これから生まれる可能性も低かった。
直ぐにまた次期将軍問題に頭を悩ますことになる。
だから徳川家治が清水重好の次に将軍を指名しておいてくれるのはありがたい。
問題は会津松平家に将軍を出す資格があるかどうかだった。
「その方たちの言いたい事は分かっている。
だが、会津松平家が二代様の御血筋であることは間違いのない事だ。
筋目から言えば祖父の八代様より将軍を継ぐのに相応しい血筋だ。
我が愛する息子、次期将軍を弑逆した大逆の血筋よりは遥かに相応しい。
それに尾州も紀州も跡継ぎは分家に臣籍降下した者たちばかりだ。
そのような者よりは遥かに跡継ぎに相応しい」
徳川家治の言葉は詭弁であった。
松平容詮も会津松平本家を分家した松平容章の子供で、藩主松平容頌の養嗣子となっているのだが、幕閣にはその事を知る者がいなかった。
それに知っていたとしても、徳川家治の強い意思には逆らえなかっただろう。
「それに、絶対に会津松平家からの養子が将軍を継ぐとは限らない。
余も頑張って世継ぎをもうけるようにする。
清水宮内卿も頑張ると言っている。
もし余や宮内卿に子が生まれたとしても、忠誠心の厚い会津家の者ならこの度のような大逆を起こすことはあるまい」
徳川家治に今回の徳川家基暗殺の件を引き合いに出されたら、強いて尾州家や紀州家から養子をもらえとは誰も言えなくなった。
そんな事をすれば血で血を洗う暗闘が始まる事は誰にだってわかる事だった。
八代様が将軍に就任するまでと就任してから起こった事を知らない幕閣はいない。
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そう思われるだけの忠義を初代が証明していたのだ。
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