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第三章
第五十六話:救出
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梅一と養父は決断を迫られていた。
巳之介救出に全力を投入しようとしている時に、池原雲伯が活発に動いているという情報が伝えられたのだ。
本来の目的は、徳川家基殺しの犯人につながる証拠と証人を手に入れる事だ。
だが、仲間を見捨てる事は盗賊団の結束を壊してしまうかもしれない。
梅一と養父は悩みに悩んだ。
「養親父殿、ここは忍び込みに優れた者たちを全て救出に向かわせましょう。
池原雲伯の尾行は、それ以外の仲間に任せましょう」
「それでいいのか、梅一。
それでは尾行に感づかれてしまうかもしれないぞ」
「今更ですよ、養親父殿。
巳之介が手傷を負った時点で、敵に知られてしまっています。
それでも池原雲伯が動くという事は、よほど焦っているのです。
尾行されても構わないと思っているのでしょう」
「ふむ、梅一の言う通りかもしれないな。
小頭、今の考えで配下の配置をやり直してくれ」
「承りました、お頭」
小頭は急いで配下の者たちに新たな指示をだしに出て行った。
その配置変更は直ぐに効果を表した。
「カァ、カァ、カァ」
「ピュウゥウウ、ヒョロッロロッロ」
「カァ、カァ、カァ」
「ピュウゥウウ、ヒョロッロロッロ」
助けに向かった盗賊が鳥の鳴きまねをする。
大手御門下の大名屋敷街だけでなく、坂下御門下の大名屋敷街や、それに続く馬場先御門下の大名屋敷街でも鳥の鳴きまねが続く。
その全てに「助けに来たぞ」という意味が込められていた。
「カァカァ、カァ」
ついに返事の鶏の鳴きまねが聞こえてきた。
梅一たちが最も可能性が高いと思っていた、松平越前守家の上屋敷からだった。
「カァ、カァカァ」
「カァ、カァカァ」
「カァ、カァカァ」
直ぐに仲間発見の鳥の鳴きまねが響き渡った。
全ての仲間に伝わるように、何度も同じ鳴きまねが繰り返された。
だが不審に思われないように、直ぐに鳥の鳴きまねが止められた。
巳之介と同等の忍び込みができる男が松平越前守家上屋敷に侵入する。
巳之介が侵入した時よりは警備が厳しくなっているが、それでもまだまだ百戦錬磨の盗賊にとっては甘い警備だった。
救出に来た盗賊は、細心の注意を払って御殿の屋根裏に忍び込んだ。
しばらく屋根裏を探しただけで巳之介を見つけることができた。
二人は言葉を交わすことなく、目の合図だけで話していた。
救出に来た盗賊は、傷薬はもちろん、針と糸も持っていた。
場合によっては医師に傷を見てもらうことができない盗賊は、最低限の医術の心得があるのだった。
巳之介の傷を見た仲間は安堵していた。
手の施しようのない五臓六腑の傷ではなく、上腕部の傷だったからだ。
巳之介の槍傷に傷薬が塗り込まれた。
巳之介はうめき声を出さないように手拭いを食いしばった。
麻酔などない状態で、傷口が素人の手で縫い合わされた。
巳之介救出に全力を投入しようとしている時に、池原雲伯が活発に動いているという情報が伝えられたのだ。
本来の目的は、徳川家基殺しの犯人につながる証拠と証人を手に入れる事だ。
だが、仲間を見捨てる事は盗賊団の結束を壊してしまうかもしれない。
梅一と養父は悩みに悩んだ。
「養親父殿、ここは忍び込みに優れた者たちを全て救出に向かわせましょう。
池原雲伯の尾行は、それ以外の仲間に任せましょう」
「それでいいのか、梅一。
それでは尾行に感づかれてしまうかもしれないぞ」
「今更ですよ、養親父殿。
巳之介が手傷を負った時点で、敵に知られてしまっています。
それでも池原雲伯が動くという事は、よほど焦っているのです。
尾行されても構わないと思っているのでしょう」
「ふむ、梅一の言う通りかもしれないな。
小頭、今の考えで配下の配置をやり直してくれ」
「承りました、お頭」
小頭は急いで配下の者たちに新たな指示をだしに出て行った。
その配置変更は直ぐに効果を表した。
「カァ、カァ、カァ」
「ピュウゥウウ、ヒョロッロロッロ」
「カァ、カァ、カァ」
「ピュウゥウウ、ヒョロッロロッロ」
助けに向かった盗賊が鳥の鳴きまねをする。
大手御門下の大名屋敷街だけでなく、坂下御門下の大名屋敷街や、それに続く馬場先御門下の大名屋敷街でも鳥の鳴きまねが続く。
その全てに「助けに来たぞ」という意味が込められていた。
「カァカァ、カァ」
ついに返事の鶏の鳴きまねが聞こえてきた。
梅一たちが最も可能性が高いと思っていた、松平越前守家の上屋敷からだった。
「カァ、カァカァ」
「カァ、カァカァ」
「カァ、カァカァ」
直ぐに仲間発見の鳥の鳴きまねが響き渡った。
全ての仲間に伝わるように、何度も同じ鳴きまねが繰り返された。
だが不審に思われないように、直ぐに鳥の鳴きまねが止められた。
巳之介と同等の忍び込みができる男が松平越前守家上屋敷に侵入する。
巳之介が侵入した時よりは警備が厳しくなっているが、それでもまだまだ百戦錬磨の盗賊にとっては甘い警備だった。
救出に来た盗賊は、細心の注意を払って御殿の屋根裏に忍び込んだ。
しばらく屋根裏を探しただけで巳之介を見つけることができた。
二人は言葉を交わすことなく、目の合図だけで話していた。
救出に来た盗賊は、傷薬はもちろん、針と糸も持っていた。
場合によっては医師に傷を見てもらうことができない盗賊は、最低限の医術の心得があるのだった。
巳之介の傷を見た仲間は安堵していた。
手の施しようのない五臓六腑の傷ではなく、上腕部の傷だったからだ。
巳之介の槍傷に傷薬が塗り込まれた。
巳之介はうめき声を出さないように手拭いを食いしばった。
麻酔などない状態で、傷口が素人の手で縫い合わされた。
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