仇討浪人と座頭梅一

克全

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第二章

第四十四話:運用

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 大道寺長十郎には御城勤めの紹介状を書く気は全くなかった。
 大金を得て妻子を守る気持ちが強くなった長十郎は、紹介状を書いて自分が江戸城忍び込みや、老中殺しに加担している事を表に出す気はなくなっていた。
 その為に本気で顔を焼く覚悟をしているのだから、当然のことだった。
 梅一に手を引かせないための嘘だった。
 だが梅一もその程度の嘘は最初から見抜いていた。

「引き込みに関しては、おいおい話し合いましょう」

「そうだな、そうしよう。
 それでさっきの話の続きだが、内蔵を建てるのはいいとして、建つまでには相当な時間がかかる。
 それまで金を預けるところを紹介してもらいたい。
 お前なら某の知らないような事を色々と知っているのではないか」

「まあ、確かに、多少は知っていやすが、いいんですかい。
 少々汚い方法ですよ」

「今さら何を言っている」

「分かりやした、だったら座頭に金を預けて運用させましょう。
 座頭貸しと言っても、その元手が全て座頭の金という訳ではありません。
 元手の大半は、権力者のかたや御大尽が出しております。
 旦那の分け前も、座頭に預けて運用させましょう」

 長十郎は開いた口がふさがらない思いだった。
 あくどい座頭貸しが許せないからと、長谷部検校熊一を殺させたのは、今座頭に金を預けて運用させようと言っている梅一なのだ。
 だが長十郎は知らなかったのだ。
 長十郎が知っているのは、遊び人の梅吉が桜小僧だという事だけで、梅吉が梅一という座頭名を持つ検校であることを知らなかったのだ。

「もしかしてお前は、人助けではなく座頭の内部抗争で某に熊一を殺させたのか」

「それは違いますよ、旦那。
 座頭にも色々いましてね。
 貧乏人に貸して厳しく取立てる座頭もいれば、大名家や商人だけに貸し付けて、上手く運用している座頭もいるのですよ。
 あっしの知る検校も、大名相手に金を貸して高利を得ています。
 そこになら、元手を預けてもあくどく貸し付けることはありませんよ」

「お前がそう言うのなら間違いないのだろう。
 だったらこの前分けてもらった金のうち千両を持ってくる」

「分かりやした、どれくらい利があるかは貸す相手によりますが、旦那の事だからあくどく儲けるような事は嫌でしょう。
 年に一割から二割の利がつくと思ってください」

「分かった、それでよい。
 某としては安全に預かってくれさえすればいいのだ。
 烏金のような高利をとって、貧乏人を泣かせないようにしてくれればいい」

「その辺は信用してくださいよ、旦那。
 貸し逃げされるような相手は選ばず、貧乏人も避けて、安全に運用させてもらいますから」
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