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第二章
第三十八話:戸惑い
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熊の旦那こと大道寺長十郎直賢は戸惑っていた。
無役ではあるが旗本五百石大道寺家の当主なのだ。
そんな大道寺長十郎が風呂敷包みを担いて自分の屋敷に急いでいる。
絶対に知り合いに見られたくない姿なのだが、梅一から言われた事を考えれば、子供達の為に分け前の金を持ち帰らなければいけなかった。
熊の旦那こと大道寺長十郎は主君の仇を討つためなら命を賭ける気だった。
だができれば妻子にまでは類が及ばないようにしたかった。
仇が見つかった時点で隠居願いをだして、まだ幼い嫡男に家督を譲る気だった。
だが幼い嫡男ではお役に着く事もできず、家の差配も満足にできない。
下手をすれば後見人となるであろう長十郎の弟に家を乗っ取られる恐れすらある。
だが、それでも、まだ家督を継げる嫡男の竜太郎はましだ。
次男の弥次郎は部屋住みとして一生竜太郎の世話にならなければいけない。
長女みちと次女まさの持参金を残してやっておけば、竜太郎の負担を減らすことができると考えれば、梅一の提案を拒否する事はできなかった。
みちとまさが絶世の美女ならば、大奥に入ることも夢ではない
ある程度の美人ならば、持参金なしで嫁入りすることができる。
だが、不美人だと、多くの持参金が必要になる。
同格の旗本に嫁ぐとなれば、百両くらいの持参金が必要になる。
だから、肩にのしかかる小判の重みと情けない姿に耐えなければいけなかった。
「今戻ったぞ」
番町の屋敷に戻った大道寺長十郎は門番小屋にいる中間に声をかけた。
まだ新たに家を興して二年少ししか経たない大道寺家には、譜代の家臣がいない。
だが、長十郎に対する忠誠心はとても強い。
父が当主を務める本家や親類筋には、行き場のない部屋住みがたくさんいた。
そんな部屋住みの中には中間でもいいから召し抱えて欲しいという者がいたのだ。
五百石の旗本家である大道寺家の軍役は、士分の侍二人、武家奉公人として立弓一人、甲冑持一人、槍持一人、馬の口取り二人、草履取一人、挟箱持一人、小荷駄二人の合計十二人の家臣は召し抱えておかなければいけない。
譜代の旗本だと勝手向きが苦しいので、武家奉公人は口入屋から渡り中間を雇うのだが、将来は側衆や御傍御用取次に出世すると思われていた長十郎は、その全てを親類の部屋住みから優秀な者を選んで召し抱えていた。
「お帰りなさいませ、荷物をお持ちいたしましょうか」
そんな優秀な武家奉公人、中間格の門番が声をかける。
「いや、これは私が持って入らねばならない物だから、よい。
それよりも誰か屋敷を伺う者がいないか注意しておいてくれ。
他の者達にもそのように伝えてくれ」
「承りました」
いつになく厳しい表情の長十郎を見て門番も真剣になった。
長十郎は梅一の実力に一目置いていた。
同時に盗賊だから、長十郎が裏切らないように弱味をつかもうとしているだろうと予測して、後をつけられる事に細心の注意を払っていた。
自分の実力を冷静に判断していたが、同時に梅一の実力も認めていたのだ。
長十郎は肩の重みを下ろすために急いで屋敷の中に入って行った。
無役ではあるが旗本五百石大道寺家の当主なのだ。
そんな大道寺長十郎が風呂敷包みを担いて自分の屋敷に急いでいる。
絶対に知り合いに見られたくない姿なのだが、梅一から言われた事を考えれば、子供達の為に分け前の金を持ち帰らなければいけなかった。
熊の旦那こと大道寺長十郎は主君の仇を討つためなら命を賭ける気だった。
だができれば妻子にまでは類が及ばないようにしたかった。
仇が見つかった時点で隠居願いをだして、まだ幼い嫡男に家督を譲る気だった。
だが幼い嫡男ではお役に着く事もできず、家の差配も満足にできない。
下手をすれば後見人となるであろう長十郎の弟に家を乗っ取られる恐れすらある。
だが、それでも、まだ家督を継げる嫡男の竜太郎はましだ。
次男の弥次郎は部屋住みとして一生竜太郎の世話にならなければいけない。
長女みちと次女まさの持参金を残してやっておけば、竜太郎の負担を減らすことができると考えれば、梅一の提案を拒否する事はできなかった。
みちとまさが絶世の美女ならば、大奥に入ることも夢ではない
ある程度の美人ならば、持参金なしで嫁入りすることができる。
だが、不美人だと、多くの持参金が必要になる。
同格の旗本に嫁ぐとなれば、百両くらいの持参金が必要になる。
だから、肩にのしかかる小判の重みと情けない姿に耐えなければいけなかった。
「今戻ったぞ」
番町の屋敷に戻った大道寺長十郎は門番小屋にいる中間に声をかけた。
まだ新たに家を興して二年少ししか経たない大道寺家には、譜代の家臣がいない。
だが、長十郎に対する忠誠心はとても強い。
父が当主を務める本家や親類筋には、行き場のない部屋住みがたくさんいた。
そんな部屋住みの中には中間でもいいから召し抱えて欲しいという者がいたのだ。
五百石の旗本家である大道寺家の軍役は、士分の侍二人、武家奉公人として立弓一人、甲冑持一人、槍持一人、馬の口取り二人、草履取一人、挟箱持一人、小荷駄二人の合計十二人の家臣は召し抱えておかなければいけない。
譜代の旗本だと勝手向きが苦しいので、武家奉公人は口入屋から渡り中間を雇うのだが、将来は側衆や御傍御用取次に出世すると思われていた長十郎は、その全てを親類の部屋住みから優秀な者を選んで召し抱えていた。
「お帰りなさいませ、荷物をお持ちいたしましょうか」
そんな優秀な武家奉公人、中間格の門番が声をかける。
「いや、これは私が持って入らねばならない物だから、よい。
それよりも誰か屋敷を伺う者がいないか注意しておいてくれ。
他の者達にもそのように伝えてくれ」
「承りました」
いつになく厳しい表情の長十郎を見て門番も真剣になった。
長十郎は梅一の実力に一目置いていた。
同時に盗賊だから、長十郎が裏切らないように弱味をつかもうとしているだろうと予測して、後をつけられる事に細心の注意を払っていた。
自分の実力を冷静に判断していたが、同時に梅一の実力も認めていたのだ。
長十郎は肩の重みを下ろすために急いで屋敷の中に入って行った。
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