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第二章
第三十二話:予定変更
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梅一は小頭から話を聞いて生臭坊主の暗殺を思いとどまった。
梅一は元々義侠心に富んだ漢だ。
だからこそ盗賊の掟を守るだけでなく、暗殺までやるようになったのだ。
そんな梅一が巨悪の存在を知ったのだから、黙っているはずがなかった。
しかし梅一はとても慎重な性格でもあるので、人の話しを鵜呑みにはしない。
例えそれが小僧の頃から可愛がってくれた小頭が相手でもだ。
「分かりました、自分でも一橋家に忍び込んで調べてみます」
梅一にそう言われた小頭は苦笑するしかなかった。
小頭は梅一の性格をよく知っているので、止めても無駄なのは分かっていた。
同時に配下の言う事を鵜呑みにしない性格が、大盗賊団の頭目には必要だと分かっていたので、頼もしくも思っていた。
当然の事だが、信じてもらえない事にわずかな寂しさと哀しみを感じてはいた。
梅一は正宝寺の賭場に通うと同時に一橋家の屋敷に忍び込んだ。
清水家や田安家のように北の丸内に屋敷があるわけではないが、大手御門下の最重要曲輪ともいえる場所に上屋敷があるので、忍び込むのはとても難しい。
御府内には他にも下屋敷や蔵屋敷があるのだが、そこにまで忍び込む気でいた。
そして実際に忍び込んで色々な情報を手に入れることになる。
だが大きな問題もあった。
このままでは熊の旦那に暗殺をさせることができなくなる。
一緒に暗殺をしなければ、熊の旦那との関係を深めることができない。
何よりもっと熊の旦那の本性が知りたかった。
梅一の目から見ても今の所は何の問題もない。
だが殺しを重ねるうちに性根が腐る事もあり得るのだ。
その時には梅一が熊の旦那を殺さなければいけない。
「そうか、やはり一橋は性根が腐っているのだな。
某としてはさっさと生臭坊主と博徒を殺してしまいたいが、それも面白い。
梅吉に一橋の事が調べられるのなら、徹底的に調べてみろ。
それで一橋も殺した方がいいと言うのなら、某が手伝ってやろう」
「いいですかい、熊の旦那。
博打の黒幕が一橋だったとしたら、曲がりなりにも主筋でしょ」
「某の主はただ独りしかおらん。
東照神君や八代様の血を受け継いでいようとも、一橋は断じて某の主ではない。
悪事を働いていると言うのなら、何の躊躇いもなくこの手で殺してやる」
熊の旦那が珍しく感情を露にしていた。
抑えきれない怒りが噴出していた。
特に梅一が一橋を主筋と口にしてからの様子がおかしかった。
敵討ちの為に千代田のお城に忍び込む技を覚えたいと言っていた事を思い出した梅吉は、一橋が熊の旦那の敵討ちに関係するのかと疑ったが、口にはしなかった。
「まあ、それは調べてからの事でございます。
まずは他の相手を殺していただきましょうか」
「ほう、他にも殺す相手がいたか」
「はい、世の中には悪人が溢れていますので」
梅一は元々義侠心に富んだ漢だ。
だからこそ盗賊の掟を守るだけでなく、暗殺までやるようになったのだ。
そんな梅一が巨悪の存在を知ったのだから、黙っているはずがなかった。
しかし梅一はとても慎重な性格でもあるので、人の話しを鵜呑みにはしない。
例えそれが小僧の頃から可愛がってくれた小頭が相手でもだ。
「分かりました、自分でも一橋家に忍び込んで調べてみます」
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小頭は梅一の性格をよく知っているので、止めても無駄なのは分かっていた。
同時に配下の言う事を鵜呑みにしない性格が、大盗賊団の頭目には必要だと分かっていたので、頼もしくも思っていた。
当然の事だが、信じてもらえない事にわずかな寂しさと哀しみを感じてはいた。
梅一は正宝寺の賭場に通うと同時に一橋家の屋敷に忍び込んだ。
清水家や田安家のように北の丸内に屋敷があるわけではないが、大手御門下の最重要曲輪ともいえる場所に上屋敷があるので、忍び込むのはとても難しい。
御府内には他にも下屋敷や蔵屋敷があるのだが、そこにまで忍び込む気でいた。
そして実際に忍び込んで色々な情報を手に入れることになる。
だが大きな問題もあった。
このままでは熊の旦那に暗殺をさせることができなくなる。
一緒に暗殺をしなければ、熊の旦那との関係を深めることができない。
何よりもっと熊の旦那の本性が知りたかった。
梅一の目から見ても今の所は何の問題もない。
だが殺しを重ねるうちに性根が腐る事もあり得るのだ。
その時には梅一が熊の旦那を殺さなければいけない。
「そうか、やはり一橋は性根が腐っているのだな。
某としてはさっさと生臭坊主と博徒を殺してしまいたいが、それも面白い。
梅吉に一橋の事が調べられるのなら、徹底的に調べてみろ。
それで一橋も殺した方がいいと言うのなら、某が手伝ってやろう」
「いいですかい、熊の旦那。
博打の黒幕が一橋だったとしたら、曲がりなりにも主筋でしょ」
「某の主はただ独りしかおらん。
東照神君や八代様の血を受け継いでいようとも、一橋は断じて某の主ではない。
悪事を働いていると言うのなら、何の躊躇いもなくこの手で殺してやる」
熊の旦那が珍しく感情を露にしていた。
抑えきれない怒りが噴出していた。
特に梅一が一橋を主筋と口にしてからの様子がおかしかった。
敵討ちの為に千代田のお城に忍び込む技を覚えたいと言っていた事を思い出した梅吉は、一橋が熊の旦那の敵討ちに関係するのかと疑ったが、口にはしなかった。
「まあ、それは調べてからの事でございます。
まずは他の相手を殺していただきましょうか」
「ほう、他にも殺す相手がいたか」
「はい、世の中には悪人が溢れていますので」
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