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第一章
第十話:助働き
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梅一は外蔵と内蔵の鍵を試しに開けていた。
最高の錠前破りでもある梅一は、道具一つあればどんな錠前でも開けることができるのだが、慎重な梅一は必ず盗みの当日の前に試し開けをするのだ。
今回は貸付証文を盗みだせればいいだけなのだが、同時に金も盗んでおかないと、金を借りた人達が疑われてしまうのだ。
最初はどれだけ日にちが掛るか分からなかった見張りだが、幸い十日ほどで屋敷の当主に借金を申し込んできた御家人がいて、その時に貸付証文の保管先が分かった。
ありがたい事に、貸付証文の保管先は金銀財宝と同じ保管先だった。
これなら盗人が金のついでに貸付証文も盗み出した事にできる。
盗みの目途が付いた梅一は、仲間の手配をすることにした。
「親父さん、助っ人を手配してもらいたいんだが、いいかな」
「ほう、梅一が助っ人を頼むなんて珍しいな。
一人働きから宗旨替えして俺の跡を継いでくれる気になったのかい」
「冗談を言わないでください、親父さん。
親父さんの所には小頭や立派な兄貴達が幾人もいるじゃないですか」
「はっはははは、確かにその通りだが、梅一が一家を構えると言うのなら、一緒に出て行きたいという連中もいる。
一家を構える気になったら、ちゃんと報告しないといけないよ。
それで、助っ人は何人ほど必要なんだい」
「試しに内蔵を開けて確かめましたところ、千両箱が二十一個。
その他にも金目のものが幾つかありましたが、今回は千両箱と貸付証文だけを盗もうと思っていますので、身の軽い者を二十五人ほど貸していただきたいんです」
「梅一が身の軽い者と限定するのなら、なかなか厄介な屋敷のようだな。
武家屋敷だと以外と警備が手薄なんだが、今節それほどのお宝が眠っている武家屋敷だと、裏があるという事か」
「はい、大身旗本の屋敷なんですが、博徒に離れを貸して上客を集めた賭場を開き、御家人の娘に客を取らせています」
「くっくくくく、御家人の娘を助けてやろうというのか。
梅一らしいことだが、気に入った。
儂自らが助っ人を選んでやるから、大身旗本の鼻を明かしてやるがいい」
梅一は養父の大盗賊に助っ人を頼んだのが、養父は全て御見通しだった。
もしかしたら、偽の身分を頼んだ時から見張られていたのかもしれない。
一時は養父の跡継ぎだと思われていたほどの梅一だ。
養父が抱える子分衆の中には、未だに梅一を慕う者もいる。
特に古参の兄貴分達は梅一に一目置いていた。
「それで礼金なのですが、助っ人衆にはひとり当たり百両。
親父さんには残った金の半分を御渡しする気なのですが、いかがでしょうか」
「くっくくくく、義賊桜小僧の上前を撥ねるほど俺は落ちぶれちゃいない。
単に千両箱を運ぶだけの助っ人に百両をくれると言うのだ。
それでもう十分だよ。
他の金は桜小僧らしく可哀想な娘さん達に配ってやるがいい」
梅一の養父は大盗賊らしい漢気を見せて礼金を断った。
最高の錠前破りでもある梅一は、道具一つあればどんな錠前でも開けることができるのだが、慎重な梅一は必ず盗みの当日の前に試し開けをするのだ。
今回は貸付証文を盗みだせればいいだけなのだが、同時に金も盗んでおかないと、金を借りた人達が疑われてしまうのだ。
最初はどれだけ日にちが掛るか分からなかった見張りだが、幸い十日ほどで屋敷の当主に借金を申し込んできた御家人がいて、その時に貸付証文の保管先が分かった。
ありがたい事に、貸付証文の保管先は金銀財宝と同じ保管先だった。
これなら盗人が金のついでに貸付証文も盗み出した事にできる。
盗みの目途が付いた梅一は、仲間の手配をすることにした。
「親父さん、助っ人を手配してもらいたいんだが、いいかな」
「ほう、梅一が助っ人を頼むなんて珍しいな。
一人働きから宗旨替えして俺の跡を継いでくれる気になったのかい」
「冗談を言わないでください、親父さん。
親父さんの所には小頭や立派な兄貴達が幾人もいるじゃないですか」
「はっはははは、確かにその通りだが、梅一が一家を構えると言うのなら、一緒に出て行きたいという連中もいる。
一家を構える気になったら、ちゃんと報告しないといけないよ。
それで、助っ人は何人ほど必要なんだい」
「試しに内蔵を開けて確かめましたところ、千両箱が二十一個。
その他にも金目のものが幾つかありましたが、今回は千両箱と貸付証文だけを盗もうと思っていますので、身の軽い者を二十五人ほど貸していただきたいんです」
「梅一が身の軽い者と限定するのなら、なかなか厄介な屋敷のようだな。
武家屋敷だと以外と警備が手薄なんだが、今節それほどのお宝が眠っている武家屋敷だと、裏があるという事か」
「はい、大身旗本の屋敷なんですが、博徒に離れを貸して上客を集めた賭場を開き、御家人の娘に客を取らせています」
「くっくくくく、御家人の娘を助けてやろうというのか。
梅一らしいことだが、気に入った。
儂自らが助っ人を選んでやるから、大身旗本の鼻を明かしてやるがいい」
梅一は養父の大盗賊に助っ人を頼んだのが、養父は全て御見通しだった。
もしかしたら、偽の身分を頼んだ時から見張られていたのかもしれない。
一時は養父の跡継ぎだと思われていたほどの梅一だ。
養父が抱える子分衆の中には、未だに梅一を慕う者もいる。
特に古参の兄貴分達は梅一に一目置いていた。
「それで礼金なのですが、助っ人衆にはひとり当たり百両。
親父さんには残った金の半分を御渡しする気なのですが、いかがでしょうか」
「くっくくくく、義賊桜小僧の上前を撥ねるほど俺は落ちぶれちゃいない。
単に千両箱を運ぶだけの助っ人に百両をくれると言うのだ。
それでもう十分だよ。
他の金は桜小僧らしく可哀想な娘さん達に配ってやるがいい」
梅一の養父は大盗賊らしい漢気を見せて礼金を断った。
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