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第一章
第三話:大身旗本屋敷
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浪人者が止まったのは旗本屋敷の前だった。
屋敷の構えと大きさから、大名屋敷でも御家人屋敷でもない。
そもそも左右に扉が開く門は旗本以上でなければ造れない。
しかも長屋門に番所が付いているから三百石以上旗本屋敷だ。
いや、屋敷の大きさから言って千石以上の旗本だと思われた。
梅一は浪人者とこの屋敷の関係が気になった。
浪人者は門番に何事か話しかけて潜り戸から入っている。
浪人者は堂々としていたが、門番は周囲を警戒していた。
門番の態度が気になった梅一は、直ぐに得意の身のこなしで屋敷に入り込みたかったが、浪人者の余りの強さを見せつけられているので決断することができなかった。
そこでしばらく屋敷を見張ることにした。
梅一が屋敷を見張っていると、大身旗本屋敷とは思えない来客が幾人もあった。
供を連れた身なりのよい武士は分かるのだが、商家の御隠居や若旦那がくる。
商家の当主や番頭なら商用の可能性もあるのだが、真面目に働いていなさそうな若旦那が大身旗本屋敷に来る事はおかしい。
まして博徒と思われる連中が、笠で顔を隠して屋敷に入っていくのだ。
梅一は裏世界の噂を思い出した。
大身の旗本が、金持ち相手に秘密の賭場を開いているという。
それどころか、困窮する御家人の娘を客に斡旋しているとまで聞いていた。
もし浪人者がその一味だとしたら、梅一の基準からは外れる。
梅一は浪人者が一味でなければいいのにと思っていた。。
見かけたばかりだというのに、梅一はもう浪人者に魅せられていた。
梅一は頻繁に場所を変えて武家屋敷を見張り続けた。
梅一が浪人者を見かけてのが朝四つ(午前十時)頃だったが、今は夕七つ(午後四時)頃になっていた。
その間に頻繁に多種多様な人間が屋敷を出入りしていた。
だが幕臣には厳しい門限があり、暮六つ(午後六時)までには自分の屋敷に戻らなければいけないので、身なりのよい武士達が次々と見張っている屋敷を出て行く。
驚いたことに浪人者が屋敷から出てきた。
浪人者には幕臣と違って守らなければいけない門限などない。
だから浪人者が屋敷から出てくるとは思ってもいなかったのだ。
梅一は気合を入れ直して浪人者の跡をつけることにした。
浪人者は悠然と歩いているように見えるのだが、その動きはやはり素早い。
しかも常に周囲に殺気を放ち、尾行しようとする人間を牽制している。
尾行者を捕らえるために隙を見せるのではなく、尾行者を諦めさせる行為だった。
その殺気の強さは、並の岡っ引きなら恐怖のあまり尾行を断念するほどだ。
梅一でさえ何度尾行を諦めようとしたか分からない。
「おい、遊び人、某に何か用か」
屋敷の構えと大きさから、大名屋敷でも御家人屋敷でもない。
そもそも左右に扉が開く門は旗本以上でなければ造れない。
しかも長屋門に番所が付いているから三百石以上旗本屋敷だ。
いや、屋敷の大きさから言って千石以上の旗本だと思われた。
梅一は浪人者とこの屋敷の関係が気になった。
浪人者は門番に何事か話しかけて潜り戸から入っている。
浪人者は堂々としていたが、門番は周囲を警戒していた。
門番の態度が気になった梅一は、直ぐに得意の身のこなしで屋敷に入り込みたかったが、浪人者の余りの強さを見せつけられているので決断することができなかった。
そこでしばらく屋敷を見張ることにした。
梅一が屋敷を見張っていると、大身旗本屋敷とは思えない来客が幾人もあった。
供を連れた身なりのよい武士は分かるのだが、商家の御隠居や若旦那がくる。
商家の当主や番頭なら商用の可能性もあるのだが、真面目に働いていなさそうな若旦那が大身旗本屋敷に来る事はおかしい。
まして博徒と思われる連中が、笠で顔を隠して屋敷に入っていくのだ。
梅一は裏世界の噂を思い出した。
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それどころか、困窮する御家人の娘を客に斡旋しているとまで聞いていた。
もし浪人者がその一味だとしたら、梅一の基準からは外れる。
梅一は浪人者が一味でなければいいのにと思っていた。。
見かけたばかりだというのに、梅一はもう浪人者に魅せられていた。
梅一は頻繁に場所を変えて武家屋敷を見張り続けた。
梅一が浪人者を見かけてのが朝四つ(午前十時)頃だったが、今は夕七つ(午後四時)頃になっていた。
その間に頻繁に多種多様な人間が屋敷を出入りしていた。
だが幕臣には厳しい門限があり、暮六つ(午後六時)までには自分の屋敷に戻らなければいけないので、身なりのよい武士達が次々と見張っている屋敷を出て行く。
驚いたことに浪人者が屋敷から出てきた。
浪人者には幕臣と違って守らなければいけない門限などない。
だから浪人者が屋敷から出てくるとは思ってもいなかったのだ。
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しかも常に周囲に殺気を放ち、尾行しようとする人間を牽制している。
尾行者を捕らえるために隙を見せるのではなく、尾行者を諦めさせる行為だった。
その殺気の強さは、並の岡っ引きなら恐怖のあまり尾行を断念するほどだ。
梅一でさえ何度尾行を諦めようとしたか分からない。
「おい、遊び人、某に何か用か」
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