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第一章

第40話:盟友

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神暦3103年王国暦255年7月20日10時:ジャクスティン視点

 俺様がジェネシスとミアを媚薬の焚き込んだ部屋に放り込んだ翌日、戦争の大勢が決して一息ついたエマ女王がやってきた。
 少しやつれた感じはするが、目力は若い頃のままだから大丈夫だろう。

「今回も色々と助けてくれてありがとう。
 ジャクスティンがいなかったら、今回も二十年前も我が国が負けていた」

「なに弱気な事を言っている?
 今回も二十年前も、どれほど追い詰められても最後には人間が勝つ。
 進化もできない落ちこぼれのベータ外国人にアルファが負ける事などない」

「ジャクスティンはそう言うが、前回は国土の奥深くまで攻め込まれた。
 今回と同じようにアルファの中から裏切者がでた。
 アルファが一致団結すれば外国人になど負けないが、本能的にどうしてもはぐれ狼となって国に咬みつく奴が出てくる」

「そんなはぐれ狼など、返り討ちにしてやればいい。
 誇り高いアルファはよほど追い込まれないと外国人の魔術を使わない。
 だが全く使えない訳ではない。
 追い込まれれば嫌でも使うから、最後には必ず勝てる」

「……そう単純に行くとは思えないが、ジャクスティンが言う事だから信じよう。
 それで、ミアはどこにいるのだ?
 もう謝罪した頃だと思ったから迎えに来たのだが?」

「ミアならジェネシスと子作りしている」

「はっ、本当か?」

「こんな事で嘘をついてどうする」

「いや、だが、あれほど孫と娘が近親相姦するのは許さんと言っていただろう?」

「孫に迫られるくらいなら、娘と一緒にさせる」

「……お前、ミアを生贄にしたのか?!」

「ミアがどうしてもジェネシスと一緒になりたいと言ってきたのだ」

「……ジェネシスの気持ちはどうでも良いのか。
 成人式の一件以来、ミアの事を毛嫌いしていただろう?」

「孫の気持ちよりも俺様の気持ちが大切だ。
 ミアの気持ちなどどうでも良い。
 俺様の気持ちの方がジェネシスとミアの気持ちよりも上だ」

「相変わらず、民を護る事以外は身勝手な奴だ」

「ふん、人の性格などそう簡単に変わるものか。
 俺様は幼い頃からずっとこの性格で生きてきた」

「そうだな、ジャクスティンのその性格のお陰で、私も王家王国もずっと助けられてきた、本当にありがとう」

「ふん、何度も同じ事を言わせるな。
 俺様に礼など不要だ。
 俺様は自分の好きなようにやっているだけだ」

「分かった、もう礼を言うのは止める。
 だが、今後の事については話し合っておきたい。
 王国と公国、このままではまた何時か外国に攻め込まれる。
 同盟を結んで以前と変わりない事を外国に見せつけないか?」

「別に同盟などしなくても、ジェネシスとミアの間に子供が生まれたら、外国も我らの仲を誤解する事はないだろう。
 まあ、子供に関係なく同盟する事に文句はない」

「二人が愛し合うように取り計らってくれたのは聞いたが、だからと言って必ず妊娠するとは限らないだろう?」

「ミアの事を嫌っているジェネシスが発情するように媚薬を使った。
 新作の媚薬で、アルファとオメガなら必ず妊娠する優良品だ」

「なに、そのような媚薬があるのか?!
 私にも譲ってくれ、この通りだ」

「全ての外国が負けを認め、賠償金の支払いに応じたら渡そう。
 今女王に妊娠されると戦力が落ちてしまう」

「そこまでする必要があるのか?
 連中にはもう戦う力など残されていないだろう?
 今もジャクスティンが放ったアルファ刺客に嬲り殺しにされているだろう?」

「今正面で戦っている連中には何の力も残っていないだろう。
 だが、遠方から支援していた国々の動向が気になる。
 このまま何食わぬ顔で和平の仲介をしてくると思うが、万分の一の確率で軍を動かす可能性もある」

「私にはそんな可能性は全くないように思えるが、ジャクスティンがそう言うのなら、万分の一の確率にも気をつけよう。
 だが、私は妊娠していても普通に戦えるぞ?」

「ほんの僅かでも力が落ちた状態で戦うのは危険だ。
 それに、妊娠しても普通に戦えることを外国人は知らない。
 好機とみて強気の交渉をしてくるか、新たな侵攻を呼ぶ。
 それを防ぐには、見せしめに一国二国滅ぼさなければならなくなる。
 これ以上戦いを続けて民を苦しめるのはアルファの誇りに反する。
 ……どうだな、エマの言う通り、同盟を結んでおく方が良いだろう。
 分かった、明日大々的に同盟を発表しよう」
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