24 / 48
第一章
第23話:決闘
しおりを挟む
神暦3103年王国暦255年5月25日23時:ジャクスティン視点
前代未聞、アルファ王女とオメガによる決闘が行われる。
俺様以外の貴族や士族が治める領地だったら絶体に認められない、身分差を無視しただけでなく、これまでの常識を無視した決闘だ。
「これよりウェルズリー王国ウェリントン王家ミア王女殿下と、サザーランド大公国エジャートン家のジェネシスによる決闘を始める」
アルファのミアには王女殿下と敬称をつけて、ジェネシスは呼び捨てだ。
エジャートン家の一員と認められただけまだマシなどとは絶対に思わん!
この決闘でアルファ共の認識を根底から覆してやる!
「ジェネシス、俺の性奴隷に成れ!」
ミアがアルファらしく身体能力を前面に出して襲いかかってくる。
爪に魔力を流して鋼鉄の刃よりも固く鋭くしている。
ジェネシスの手足を切り落として飼う心算か!?
「甘いぞ!」
ジェネシスにはミアよりも五十年長い経験値がある。
亜空間の中という限られた経験だが、アルファ化して半年にも満たないミア比べれば、圧倒的な差になる。
「ギャッ!」
ミアの奴、アルファにしては甘過ぎる。
手足を切り落としてでもオメガを屈服させるのがアルファなのだ。
実際にやるかどうかは別にして、それかくらいの覚悟が必要なのだ。
「ギャアアアアア」
本当ならアルファに逆らえないはずのジェネシスだが、今は躊躇なく攻撃できる。
女であろうと結婚相手であろうと一切の容赦がない。
魔剣から魔術を発動させてミアの全身に大火傷を負わしている。
「これくらい!」
経験値は圧倒的に不足しているが、ミアの先天的な魔力はとても多い。
その魔力を使ってアルファらしい回復力を発揮している。
全身の大火傷を一瞬で治すなど、将来が期待できる才能はあるのだが……
「火炎魔術で斃せないのなら、氷漬けにしてやる!」
などとジェネシスは口にしない。
こちらから使う魔術を敵に教えるほど愚かではない。
その程度の事は俺様が成人式前に叩き込んでいる。
「ぐっ、ギャ!」
ミアの気性の荒さ、負けん気の強さ自体は嫌いではないのだ。
氷漬けされて動かなくなった左脚を自分の爪で切り落とし、アルファ独特の回復力で再生させて戦い続ける根性は褒めてやりたくなる。
「この程度の事で俺に勝てると思うな!」
だが、アルファの中でも最上位に近い回復力を持っていても、何度も手足を切ってしまったら魔力切れを起こしてしまう。
戦い方が雑過ぎで実戦では生き残れない。
「あの戦い方は外国人の様だ」
「ふん、恥知らずなオメガらしい戦い方だな」
「ガキが、外国人の戦法であろうとオメガであろうと勝つ奴が正義だ」
「そうだな、死んだ奴は負け犬だ、生き残った奴が正しいのだ!」
外国との激しい戦争を知らない若い連中は、表面だけのプライドに拘っている。
だが外国との戦争を経験して生き残った連中は、どのような手段を使ってでも生き残る事が大切だと知っている。
「口で何を言おうとオメガに負けたら全てを失うのだ。
そこ覚悟を持ってオメガと戦う覚悟があるのか?」
歴戦の上級貴族アルファにそう言われると、若く実戦経験のない下級貴族アルファは何も言い返せなくなる。
上級貴族アルファもオメガを認めたわけではない。
連中が決闘を見つめる眼には侮蔑しか浮かんでいない。
愚かな条件を飲んで決闘を受けたミアと、魔道具を使うジェネシスへの侮蔑だ。
「どれほど魔術を使えようと当たらなければ意味がない!」
魔力の残りが少ないのだろう。
ミアが強靭なアルファの身体すら限界を超える速さで動く。
単に動くだけでなく、極端に負荷のかかるフェイントまで入れて来る。
「さようなら、ミア」
ジェネシスにはミアに対する情があったのだな。
婚約者だったミアを殺すには少なくない決断が必要だったのだ。
だから心臓麻痺を起こすほど神経を損傷させる雷魔術を使わなかったのだ。
火炎魔術は表面から身体を焼くし、氷結魔術は神経を破壊しない。
アルファの超人的な回復力を考えれば、負けても死なない可能性が高い。
だが強烈な雷魔術をまともに受けたら……
前代未聞、アルファ王女とオメガによる決闘が行われる。
俺様以外の貴族や士族が治める領地だったら絶体に認められない、身分差を無視しただけでなく、これまでの常識を無視した決闘だ。
「これよりウェルズリー王国ウェリントン王家ミア王女殿下と、サザーランド大公国エジャートン家のジェネシスによる決闘を始める」
アルファのミアには王女殿下と敬称をつけて、ジェネシスは呼び捨てだ。
エジャートン家の一員と認められただけまだマシなどとは絶対に思わん!
この決闘でアルファ共の認識を根底から覆してやる!
「ジェネシス、俺の性奴隷に成れ!」
ミアがアルファらしく身体能力を前面に出して襲いかかってくる。
爪に魔力を流して鋼鉄の刃よりも固く鋭くしている。
ジェネシスの手足を切り落として飼う心算か!?
「甘いぞ!」
ジェネシスにはミアよりも五十年長い経験値がある。
亜空間の中という限られた経験だが、アルファ化して半年にも満たないミア比べれば、圧倒的な差になる。
「ギャッ!」
ミアの奴、アルファにしては甘過ぎる。
手足を切り落としてでもオメガを屈服させるのがアルファなのだ。
実際にやるかどうかは別にして、それかくらいの覚悟が必要なのだ。
「ギャアアアアア」
本当ならアルファに逆らえないはずのジェネシスだが、今は躊躇なく攻撃できる。
女であろうと結婚相手であろうと一切の容赦がない。
魔剣から魔術を発動させてミアの全身に大火傷を負わしている。
「これくらい!」
経験値は圧倒的に不足しているが、ミアの先天的な魔力はとても多い。
その魔力を使ってアルファらしい回復力を発揮している。
全身の大火傷を一瞬で治すなど、将来が期待できる才能はあるのだが……
「火炎魔術で斃せないのなら、氷漬けにしてやる!」
などとジェネシスは口にしない。
こちらから使う魔術を敵に教えるほど愚かではない。
その程度の事は俺様が成人式前に叩き込んでいる。
「ぐっ、ギャ!」
ミアの気性の荒さ、負けん気の強さ自体は嫌いではないのだ。
氷漬けされて動かなくなった左脚を自分の爪で切り落とし、アルファ独特の回復力で再生させて戦い続ける根性は褒めてやりたくなる。
「この程度の事で俺に勝てると思うな!」
だが、アルファの中でも最上位に近い回復力を持っていても、何度も手足を切ってしまったら魔力切れを起こしてしまう。
戦い方が雑過ぎで実戦では生き残れない。
「あの戦い方は外国人の様だ」
「ふん、恥知らずなオメガらしい戦い方だな」
「ガキが、外国人の戦法であろうとオメガであろうと勝つ奴が正義だ」
「そうだな、死んだ奴は負け犬だ、生き残った奴が正しいのだ!」
外国との激しい戦争を知らない若い連中は、表面だけのプライドに拘っている。
だが外国との戦争を経験して生き残った連中は、どのような手段を使ってでも生き残る事が大切だと知っている。
「口で何を言おうとオメガに負けたら全てを失うのだ。
そこ覚悟を持ってオメガと戦う覚悟があるのか?」
歴戦の上級貴族アルファにそう言われると、若く実戦経験のない下級貴族アルファは何も言い返せなくなる。
上級貴族アルファもオメガを認めたわけではない。
連中が決闘を見つめる眼には侮蔑しか浮かんでいない。
愚かな条件を飲んで決闘を受けたミアと、魔道具を使うジェネシスへの侮蔑だ。
「どれほど魔術を使えようと当たらなければ意味がない!」
魔力の残りが少ないのだろう。
ミアが強靭なアルファの身体すら限界を超える速さで動く。
単に動くだけでなく、極端に負荷のかかるフェイントまで入れて来る。
「さようなら、ミア」
ジェネシスにはミアに対する情があったのだな。
婚約者だったミアを殺すには少なくない決断が必要だったのだ。
だから心臓麻痺を起こすほど神経を損傷させる雷魔術を使わなかったのだ。
火炎魔術は表面から身体を焼くし、氷結魔術は神経を破壊しない。
アルファの超人的な回復力を考えれば、負けても死なない可能性が高い。
だが強烈な雷魔術をまともに受けたら……
2
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
エンシェントリリー
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる