上 下
55 / 57
第1章

第52話:競売参加

しおりを挟む
「ショウ様、教会に落ち人があったそうです」

 異世界の神ガタノトーアと手先の教会を叩き潰すと決めた。
 その為の準備をしていると、東貧民街の長が重要な情報を持って来てくれた。
 事もあろうに、教会に落ち人があったと言うのだ!

 異神眼で調べた事も、東貧民街の長ハーヴィーの集めてくれた情報でも、この世界に落ちてくるのは地球人だけだった。

 日本人には限らないが、地球人には限られていた。
 今回の落ち人が日本人とは決められないが、外国人でも同じだ、助ける。
 見捨てると言う事だけはありえない。

★★★★★★

「本日のスペシャルゲストの1人、王都行政官のディルホーン子爵閣下です。
 入札にも参加されますので、そのつもりでおられてください」

 ドレイ競売の司会者が王都行政官ディルホーン子爵を紹介する。

「権力で安く買い叩く気はない、本気で競って来てくれ」

 王都行政官ディルホーン子爵が権力による不正を疑われないように言う。

「本日のスペシャルゲストはもう1人おられます。
 ディルホーン子爵閣下の御友人で自由騎士のショウ閣下です。
 ショウ閣下は遠く東の果てにある国の王族でもあられます。
 我が国では王族を証明する方法がありませんので、自由騎士を名乗られています。
 ですがその桁外れの強さは皆様よくご存じですね?
 敬意を払っていただき、競売が成功するよう協力願います」

 司会者が僕にこびを売るような事を言う。
 僕を騙して刺客のエルフ系ドレイを落札させたいのだろう。
 特に襲われるような事もなく、次々と入札が進む。

「次は本日の目玉ドレイでございます。
 やんごとなき方が家庭の事情でしかたなく手放す事になったドレイです。
 10年に1度競売に出るか出ないかのエルフ系ドレイです。
 なんと、クオーターエルフが競売にかけられました!
 初値300万アルです、どうぞ!」

「300万アル」
「330万アル」
「360万アル」
「390万アル」
「420万アル」

 敵の手先が入札価格をつり上げようとしている。
 僕を暗殺するための餌を買わせたいのに、同時に金もうけも狙っている。
 あまりの身勝手さに怒りが爆発しそうになる。

「1380万アル、入札ありませんか、本当にありませんか?」

 僕も王都行政官ディルホーン子爵も入札しない。
 これまでは敵の手先が値段をつり上げるだけで、僕らは1度も参加していない。
 さすがにマズイと思ったのか、競うのを止めたが遅すぎる。

「1380万アル、入札ありませんか、本当にありませんか……落札」

 僕と王都行政官の方を見るので、少し殺気を込めてにらんでやった。
 あわてて入札を確定させたのが憶病で笑える。

 ★★★★★★

「本日のセミファイナルになる特別なドレイです。
 やんごとなき方が家庭の事情でしかたなく手放す事になったドレイです。
 シークレットドレイと同じクオーターエルフです。
 先ほど1380万アルの高値となったクオーターエルフです。
 初値300万アルです、どうぞ!」

 司会者が、これまで1度も入札に参加しない僕と王都行政官を見ながら言う。
 司会者は僕たちが最後のエルフ系ドレイの入札にも参加しないのか心配している。  
 八百長を見抜かれたのか心配で、報復を恐れて、引きつった表情をしている。

「「「「「……」」」」」
 
 誰も入札に参加しない、全員が僕と王都行政官に注目している。
 よほどのバカでない限り、僕の敵が落札額をつり上げているのに気が付いている。
 よく競売に参加するような連中は、落札金額のつり上げに敏感だ。

「300万ですよ、たった300万ですよ、クオーターエルフですよ!」

「「「「「……」」」」」

 誰1人参加しない、格安の初値にすら誰も参加しない。
 これまで落札価格をつり上げて来た敵の手先も下を向いている。

 有力な奴隷購入者たちに顔を覚えられるのを恐れているのだろう。
 こんな悪事に加わるような連中は、ドレイ業者でも3流だけだ。
 1流どころの怒りを買ったら良くて破産、最悪殺されるのを異神眼で見た。

「このままでは競売が不成立になってしまいますよ?!
 300万アルですよ、たった300万アルですよ、買わないのですか?!」

 司会者が僕と王都行政官の方を見て言う。
 だけど僕も王都行政官も無視する。
 王都行政官が有力な奴隷購入者達に厳しい視線を向けた。

「やかましい、落札価格のつり上げをするような競売に参加するか、ボケ!」
「不公平な競売に参加するわけがないだろう、クソ野郎!」
「もうガタノトーア教会の競売には参加しない、クソボケ!」

 毎回ドレイ競売に参加している有力な購入者が司会者を責める。
 司会者だけでなく、背後にいる教会と神官も責めている。
 僕と王都行政官を敵に回す愚かな行為を責めている。

「……改めて初値を言わせていただきます、300万アルです。
 不正の疑いのある入札はやり直させていただきます。
 万が一本当に不正行為があれば、厳しい対応をさせていただきます。
 競売の公平性を疑わせるような行為には、厳罰を与えさせていただきます。
 ですので、入札をお願いいたします、300万アルです、入札再開」

 司会者が形だけ違反を取り締まると言う。
 自分も違反に加担しているくせに笑わせる。

「「「「「……」」」」」

 だが、僕と王都行政官を恐れてか、誰も入札しない。
 僕はともかく王都行政官を敵に回したら、どのような処分をされるか分からない。
 法を守らず税をごまかしている連中なら、絶対に目をつけられなくない。

「300万アル」

 王都行政官が家臣に任せる事無く自分で入札した。

「……330万アル」

 敵の手先の1人が落札価格をつり上げようとする。
 手先の中でも特にバカなのだろう、競売場の流れ、雰囲気が全く分かっていない。
 競売場のほぼ全員から殺意のこもった視線を向けられている。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

処理中です...