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第1章
第48話:エルフ系ドレイ
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「いや、違うんだ、誤解なんだ、エルフをどうこうしたい訳じゃないんだ!
僕が今生きていられるのは、魔境で助けてくれたスリークオーターエルフのお陰だから、ずっと恩返しがしたいと思っていたんだ。
本人に恩を返せないから、不幸な状況のハーフエルフやクオーターエルフを助けたいと思っただけなんだ!」
「なによ、それ、そう言う事情があるなら話しておいてよ!」
「私たちが性格悪いみたいじゃない、事情があるなら話しておいてよ!」
エマとリナがヤキモチを焼いてくれたのはうれしいが、本気で怖かった。
きちんと説明してからは普通に話せたけれど、普段の2人とは違っていた。
2度と2人を怒らせてはいけないと思ってしまうくらい、怖かった。
もう2度と他の女の子とは話さないと思うくらい、本気で怖かった。
2人と今後の事を話し合っている時に王都行政官がやってきた。
使者を送ってくるのではなく、直接話に来てくれた。
「大切な話があると言う事ですが、何ですか?」
王都行政官が同席しているエマとリナの視線を気にしながら言う。
この国の貴族の常識では、重大な話に女は同席しない。
だけど、エルフ系ドレイの話をするのに、エマとリナを外す訳にはいかない。
また誤解されて、あんな殺気を受ける気にはなれない。
「僕は以前死にかけたことがあるのです。
その時助けてくれたのがスリークオーターエルフなのです。
人間の乱暴されたエルフから生まれた、ハーフエルフを母に持つ方でした。
人間を恨んでいましたが、それでも魔境で死にかけていた僕を助けてくれました。
人間を心底恨み憎んでおられましたが、それでも僕を助けてくれました。
その方は人間を忌み嫌われているので、僕が直接恩を返す事ができません。
その代わりに、今人間に苦しめられているエルフ系ドレイを助けたいのです」
王都行政官だけでなく、エマとリナにも分かってもらいたかった。
また誤解されないように、エマとリナを同席させて同じ話をした。
「エルフの血が混じったドレイは、王家や有力貴族、大商人以外はとても買えないくらい高額なのですが、本気なのですか?」
「本気です、そもそもあの方に助けていただけなかったら、死んでいたのです。
その後で手に入れた物は全てあの方のお陰です。
少なくても半分は、お礼に使って当然だと思っています」
「ブルーアルクトドゥス級魔獣3頭を競売にかけた代金の半分ですか?
いくらエルフ系ドレイが高いと言っても、100人は買える金額になりますよ?」
「ブルーアルクトドゥス級魔獣3頭ではあません。
現時点でブルーアルクトドゥス級魔獣10頭を確保しています。
それでも足りないのなら、もっと狩りますよ」
「国中にいるエルフ系ドレイを買い占めるとしても、ブルーアルクトドゥス級魔獣5頭分も必要ありません。
それほど多くのエルフ系ドレイが売り出される事はありません。
エルフ系ドレイを持っている方々は、お金に左右されない方が多いです」
なるほど、エルフ系ドレイを全員解放しようと思ったら、この国の権力者を支配下に置かないといけないのか。
僕が王になるか、陰の支配者にならないと不可能なのだな。
「ではまず、お金で手に入るエルフ系ドレイを全員解放します。
その手伝いをして欲しいのですが、よろしいですか?」
「手伝いですか、私がエルフ系ドレイの購入を手伝うのですか?」
「この地域の人間に言われたのですが、僕は王家や有力貴族に憎まれているので、競売に参加しても邪魔されると言うのです。
不当に値段を吊り上げられる程度なら良いのですが、出品が取り消されるかもしれないと言うのです。
最悪の場合は、僕に意趣返しするために、大損を覚悟でエルフ系ドレイを殺してしまうかもしれないと言うのです」
荷役の代表から僕の使用人になってくれたジョーンズが言った事にして、僕が不安に思っている事を聞いてみた。
被害妄想で言っている訳ではない。
王や王族、有力貴族の過去の言動を異神眼で見て心配になったから聞いたのだ。
「……同じ貴族として恥ずかしいですが、絶対にないとは言えないです。
敵に嫌な思いをさせるためなら、1000万アルくらいは平気で捨てる方がいますが、その方がショウ殿を憎んでいる可能性があります」
「やはりそうですか、この地域の者が心配していた通りですね。
だからです、だから王都行政官殿に手伝って欲しいのです」
「それは……私にも立場があるのです……」
「奥方様の誤解が心配なのでしょう、先に内々で事情を話しておいてください」
「内々という事は、家臣や使用人に話すなという事ですね?」
「はい、あれほど秘密にしようとしたのに、死病の治療ができると言う話が、王都中に広まってしまいました。
今回の件は、死病の治療とは違って、限られた人間しか知りません。
もし噂が広まったら、誰が秘密をバラしたか分かってしまいます。
王都行政官殿は口が堅いと思いますが、奥方様のことを僕は知りません」
「それは大丈夫だ、妻は人の秘密を広めるような人間ではない。
ましてショウ殿は命の恩人だ、絶対に広めたりはしない」
「そう言われるという事は、手伝ってくださるのですね?」
「ああ、ショウ殿が命の恩を返すために1億アル使うと言っているのだ。
同じように命の恩を受けている私が手伝わない訳にはいかない。
愛する妻を助けてくれるショウ殿の頼みを断るほど愚かではない」
僕が今生きていられるのは、魔境で助けてくれたスリークオーターエルフのお陰だから、ずっと恩返しがしたいと思っていたんだ。
本人に恩を返せないから、不幸な状況のハーフエルフやクオーターエルフを助けたいと思っただけなんだ!」
「なによ、それ、そう言う事情があるなら話しておいてよ!」
「私たちが性格悪いみたいじゃない、事情があるなら話しておいてよ!」
エマとリナがヤキモチを焼いてくれたのはうれしいが、本気で怖かった。
きちんと説明してからは普通に話せたけれど、普段の2人とは違っていた。
2度と2人を怒らせてはいけないと思ってしまうくらい、怖かった。
もう2度と他の女の子とは話さないと思うくらい、本気で怖かった。
2人と今後の事を話し合っている時に王都行政官がやってきた。
使者を送ってくるのではなく、直接話に来てくれた。
「大切な話があると言う事ですが、何ですか?」
王都行政官が同席しているエマとリナの視線を気にしながら言う。
この国の貴族の常識では、重大な話に女は同席しない。
だけど、エルフ系ドレイの話をするのに、エマとリナを外す訳にはいかない。
また誤解されて、あんな殺気を受ける気にはなれない。
「僕は以前死にかけたことがあるのです。
その時助けてくれたのがスリークオーターエルフなのです。
人間の乱暴されたエルフから生まれた、ハーフエルフを母に持つ方でした。
人間を恨んでいましたが、それでも魔境で死にかけていた僕を助けてくれました。
人間を心底恨み憎んでおられましたが、それでも僕を助けてくれました。
その方は人間を忌み嫌われているので、僕が直接恩を返す事ができません。
その代わりに、今人間に苦しめられているエルフ系ドレイを助けたいのです」
王都行政官だけでなく、エマとリナにも分かってもらいたかった。
また誤解されないように、エマとリナを同席させて同じ話をした。
「エルフの血が混じったドレイは、王家や有力貴族、大商人以外はとても買えないくらい高額なのですが、本気なのですか?」
「本気です、そもそもあの方に助けていただけなかったら、死んでいたのです。
その後で手に入れた物は全てあの方のお陰です。
少なくても半分は、お礼に使って当然だと思っています」
「ブルーアルクトドゥス級魔獣3頭を競売にかけた代金の半分ですか?
いくらエルフ系ドレイが高いと言っても、100人は買える金額になりますよ?」
「ブルーアルクトドゥス級魔獣3頭ではあません。
現時点でブルーアルクトドゥス級魔獣10頭を確保しています。
それでも足りないのなら、もっと狩りますよ」
「国中にいるエルフ系ドレイを買い占めるとしても、ブルーアルクトドゥス級魔獣5頭分も必要ありません。
それほど多くのエルフ系ドレイが売り出される事はありません。
エルフ系ドレイを持っている方々は、お金に左右されない方が多いです」
なるほど、エルフ系ドレイを全員解放しようと思ったら、この国の権力者を支配下に置かないといけないのか。
僕が王になるか、陰の支配者にならないと不可能なのだな。
「ではまず、お金で手に入るエルフ系ドレイを全員解放します。
その手伝いをして欲しいのですが、よろしいですか?」
「手伝いですか、私がエルフ系ドレイの購入を手伝うのですか?」
「この地域の人間に言われたのですが、僕は王家や有力貴族に憎まれているので、競売に参加しても邪魔されると言うのです。
不当に値段を吊り上げられる程度なら良いのですが、出品が取り消されるかもしれないと言うのです。
最悪の場合は、僕に意趣返しするために、大損を覚悟でエルフ系ドレイを殺してしまうかもしれないと言うのです」
荷役の代表から僕の使用人になってくれたジョーンズが言った事にして、僕が不安に思っている事を聞いてみた。
被害妄想で言っている訳ではない。
王や王族、有力貴族の過去の言動を異神眼で見て心配になったから聞いたのだ。
「……同じ貴族として恥ずかしいですが、絶対にないとは言えないです。
敵に嫌な思いをさせるためなら、1000万アルくらいは平気で捨てる方がいますが、その方がショウ殿を憎んでいる可能性があります」
「やはりそうですか、この地域の者が心配していた通りですね。
だからです、だから王都行政官殿に手伝って欲しいのです」
「それは……私にも立場があるのです……」
「奥方様の誤解が心配なのでしょう、先に内々で事情を話しておいてください」
「内々という事は、家臣や使用人に話すなという事ですね?」
「はい、あれほど秘密にしようとしたのに、死病の治療ができると言う話が、王都中に広まってしまいました。
今回の件は、死病の治療とは違って、限られた人間しか知りません。
もし噂が広まったら、誰が秘密をバラしたか分かってしまいます。
王都行政官殿は口が堅いと思いますが、奥方様のことを僕は知りません」
「それは大丈夫だ、妻は人の秘密を広めるような人間ではない。
ましてショウ殿は命の恩人だ、絶対に広めたりはしない」
「そう言われるという事は、手伝ってくださるのですね?」
「ああ、ショウ殿が命の恩を返すために1億アル使うと言っているのだ。
同じように命の恩を受けている私が手伝わない訳にはいかない。
愛する妻を助けてくれるショウ殿の頼みを断るほど愚かではない」
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