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第1章

第47話:身代金代わりとお願い2

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「騎士たちが狩って来たモノの査定を願します」

 僕の独断と偏見でスノードン伯爵家人質団の騎士長にした者がいる。
 人質宣言した連中を思い通りに使うために選んだ騎士長がいる。
 その騎士長以下全人質と、商業ギルドが臨時買取所とした場所に来た。

 僕が商業ギルドに魔獣を売らなくなり、極上の素材が出回らなくなった。
 1度極上品を使えるようになったのに、直ぐに出回らなくなったのだ。
 どうしても欲しい人間は僕との直接取引を望むようになった。

 その状況を、商業ギルドのマスターにまでなった者が見過ごす訳がない。
 1度大失敗をして首の皮1枚で生き残っているマスターだ。
 利益になる取引を捨てるような余裕はない。

 僕が王都内の商業ギルドに行かないので、王都外に買取所を作ったのだ。
 その商業ギルド王都外取引所に貧民街の人間が獲物を持ち込むようになった。
 僕やエマとリナの従業員という立場で取引するようになった。

「はい、商業ギルドで買い取れる物を査定させていただきます」

 そこにスノードン伯爵家の騎士と兵士が狩って来たモノを持ち込んで売る。
 僕が安い値段で買ったら、決闘の勝者が不当な値段で買い叩いたと言われる。
 僕を憎んでいる王族や有力貴族に非難される。

 王族や有力貴族に非難されるのは良いが、平民に非難されるのは嫌だ。
 だから、1番公平と思われる商業ギルドに買い取ってもらうようにしたのだ。

「狩られた獣は、毛皮が傷だらけな上に肉がまずい奴ばかりです。
 どうしても買い取れと言われたら買いますが、普通は狩人が自分たちで食べます。
 ショウ殿の顔を立てて1頭5アルで買いますが、それでもよろしいですか?」

 生き残るのが最優先の戦い方しか知らない騎士や兵士では当然の結果だ。

「ええ、かまいません、それでお願いします」

 騎士長があきらめの表情で言う。
 初日は文句を言っていたが、安い理由を分かりやすく言われて黙った。
 それ以来、少しでも高く売れるように狩り方を工夫しているが、直ぐには無理だ。

「私たちはもう1度魔境に行って参ります」

 騎士長はそう言って他の騎士や兵士を率いて魔境に向かった。
 狩りと採集にがんばっているが、毎日増えていく身代金に全く足りていない。

 朝は実力を上げるために狩りをがんばるが、昼からは単価の安い普通の薪を数集めて、少しでも身代金が増えないようにしている。

 だが、毎日の食事や宿泊費が身代金のとして加算されるのがこの世界にルールだ。
 薬草や薪の代金くらいでは全然足りないので、毎日借金が増えている。

「ショウ様、よろしいですか?」

 僕に使われるようになった荷役の代表が話しかけてきた。
 荷役をしてくれていた男たちの大半は、自分たちだけで採集を始めた。

 僕に雇われていた経験を生かして、薬草と野草、薪を集めるようになった。
 同じ薬草でも、採取の方法を工夫すれば高く売れると知ったのだ。

 しかも、今は露店があるから王都内のギルドに買い叩かれない。
 自分たちで露店を出して売れるので、今までよりも有利な値段で売れる。

 そんな状態なのに、日当が安くても良いから僕に雇われたいと言う者がいた。
 荷役の代表だった男と数十人が、僕に恩義を感じて手伝いたいと言って来た。

 そんな人たちを何人か雇って露店などで働いてもらっている。
 無条件に雇った訳ではなく、異神眼で過去の言動を調べてから雇っている。

「なんだい?」

「以前聞かれていたハーフエルフやクオーターエルフですが、貴族が奴隷として抱えているようです」

「だれだ、誰がハーフエルフやクオーターエルフをドレイにしている?」

「病死した事にされたストックトン宮中伯です。
 ただ、暗殺してきた貴族の遺族たちに賠償金を払わないといけません。
 後継者が手持ちのエルフ系ドレイを売りに出すと言う噂が流れています。
 他には、ショウ様に兵を向けたスノードン伯爵も、王都屋敷にクオーターエルフを置いていると言う噂があります」

「スノードン伯爵のドレイは、実際にスノードン伯爵家を取り仕切っている譜代の家臣や使用人と交渉してみる。
 僕のせいで自殺させられたストックトン宮中伯家は、交渉は無理だろう?
 宮中伯家の跡取りも家臣も、意地でも僕とは交渉しないと思う。
 お金で買い取れるなら出せるだけ出すけど、買い集めるのは難しいかな?」

「私のような者には、貴族が売買するハーフエルフやクオーターエルフの正確な値段は分かりませんが、噂では最低でも500万アルはするそうです。
 正確な情報は、王都を預かっている王都行政官閣下に聞かれるべきです。
 買うにしても、ショウ様が直接買われるよりも、王都行政官閣下に買ってもらわれる方が、王家や有力貴族たちの妨害が入らないと思います。
 ストックトン宮中伯家やスノードン伯爵家も、王都行政官閣下にならエルフ系ドレイを売るかもしれません」

「分かった、王都行政官殿に話を聞いてみる。
 ジョーンズはこれまで通りハーフエルフとクオーターエルフの噂を集めてくれ。
 混血具合に関係なく、僕がエルフを雇いたいと思っていると噂を流してくれ。
 それで王都や王都外に隠れているエルフが来てくれたら助かる」

「エルフ系の受けている迫害を考えますと、そう簡単に集まるとは思えませんが、ショウ様が言わるなら引き続き噂を流します」

 荷役の代表だったジョーンズがそう言って出て行った。
 エルフを集めるための噂を広めに行ってくれた。
 王都外の貧民街に隠れているエルフ系の情報を集めるために出て行った。

 僕も王都行政官に会うために移動した。
 王都行政官の奥方が闘病生活をする事になった、冷凍倉庫に移動した。
 王都行政官は、仕事時間以外は常に奥方の側にいる。

「王都行政官殿が戻られたら僕に知らせてください。
 将来の事で大切な相談がありますので、連絡をお待ちしております」

 冷凍倉庫に行った僕は、奥方の世話をしている、侍女たちの長に伝言を頼んだ。

「承りました、間違いなく伝えさせていただきます」

 侍女頭が請け負ってくれたのだ、安心して他の患者を診て廻る事にした。
 貧民街出身の死病患者は、冷凍倉庫ではなく新築の木造病棟に住んでいる。
 冷凍倉庫の荷運び口の反対側に、新築したばかりの木造病棟が建ってる。

 僕が魔術を使って圧縮強化岩盤製の病棟を造る事もできた。
 だがそれでは、僕の能力を調べようと集まった連中に全部見られてしまう。
 色々あって王家や有力貴族たちがスパイを送り込んでいるのだ。

 冷凍倉庫を創ったので、ある程度は僕の能力を予測しているだろう。
 だがあの時はまだスパイが入り込んでいなかったので、正確には知られていない。
 はずだと思う、たぶん、知らんけど。

 知られる方が利があるのか、秘密にした方が利があるのか、真剣に考えた。
 真剣に考えた結果、秘密にしておく事にしたのだ。

 そこで貧民街の人に、僕が斬った魔境の木で平屋長屋を建ててもらった。
 食事は死病を治すための薬草料理なので、食事付きの寮のようだ。
 江戸時代の裏長屋が何列も並んでいるような状態だ。

「ショウがエルフを探していると聞いたけど、本当なの?」
「エルフならハーフエルフでもクオーターエルフでも良いと聞いたけど本当なの?」

 家に戻った僕にエマとリナが詰め寄って来た!
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