47 / 57
第1章
第44話:結核療養所
しおりを挟む
「ショウ様、下ごしらえが終わりました、料理お願いします」
「こちらの下ごしらえも終わりました、料理お願いします」
「ショウ様、北大城門外から治療をして欲しいという者が来ました」
「モツ煮込みができました、味見お願いします」
王都行政官閣下が奥方様の治療をして欲しいと言って来てから20日経った。
僕が死病を薬草料理で治せる事は、誰にも話さないように口止めした。
だけど、やっぱり、完全な口止めはできなかった。
王侯貴族にまでは広まっていないが、貧民街には広がってしまった。
東大城門外の貧民街だけでなく、西南北の大城門外にある3ケ所の貧民街住民には広まってしまっていて、毎日のように治療をして欲しいとやって来る。
「下ごしらえができた鍋から順番に料理していく。
治療希望者は先に長の許可をもらってくれ。
長が許可しない者の治療はできない、信用できない者を長に排除してもらう。
モツの味見は薬草料理を作り終わってからやる。
味見の終わったモツ煮込みから露店で売ってくれ」
僕の魔法で結核を治す成分を含む薬草料理が完成した。
手伝ってくれている貧民街の女性が薬草料理を持って患者さんの所に行く。
だが、手伝いの女性たちが持って行くのは薬草料理だけではない。
僕以外の料理人が作ったモツ煮込みも持って行く。
ただ、モツ煮込みは死病患者さんの所に持って行くわけじゃない。
モツ煮込みは商品として露天街の店に持って行く。
それと、僕が治療をしているのは貧民街の死病患者だけではない。
王都行政官閣下の奥方様の治療もしている。
奥方様は家臣に守られ使用人にお世話され、野営テントで暮らしている。
冷凍倉庫の改装が終わったら引っ越ししてもらう。
「ショウ、ご飯ができたわよ」
「マルチョウが焼けたわよ」
僕のご飯を作ってくれているエマとリナが呼んでくれる。
「ありがとう、薬草料理が全部完成したら行くよ」
「早く来ないとミノの香草焼きが硬くなっちゃうよ」
「ミノのモツ煮込みも作っておこうか?」
「マルチョウは焼きながら食べるから、先に焼いた分は誰かに食べてもらって。
ミノを薄切りにして茹でといてくれる?
シードルビネガーと葱で和えておいて、冷めた頃に美味しくなるから」
「「は~い」」
ホルモンは焼きながら熱々を食べるのが好きだ。
好き嫌いとは別に、エマとリナが作ってくれた料理は別格で美味しい。
愛情を感じられて、評判の調理人が作った料理よりも美味しい。
ただ、誰が作ったのとは別の次元で、冷めてしまうと魅力がなくなる料理がある。
ホルモンは焼きたてを食べるのが美味しい。
自分で焼きながら食べる美味しさは、愛情とは別の美味しさがある。
誰かに作ってもらう料理は、冷めても美味しい料理が良い。
もしくは、二度煮や二度焼きしても美味しい料理が良い。
「朝早くから作ってくれてありがとう、うれしいよ」
「あ、当たり前のことをしているだけよ」
「ショ、ショウだって、みんなの料理を作っているじゃない」
僕のご飯を作ってくれたエマとリナにお礼を言うと、真っ赤になって照れる。
「一緒に食べよう」
「「うん」」
「「「いただきます」」」
エマとリナが僕の習慣に合わせて『いただきます』と言ってくれる。
魔境に行かなくなって、毎日3度一緒にご飯を食べるようになった。
死病を治して欲しいと集まってくる人を診察して回っているけれど、本気で狩りをしていた時より忙しくない。
魔境で狩りをしていた頃は緊張していたけれど、今はそれほどでもない。
死病の人たちの命を預かっている責任は、とても重く感じている。
でも、狩りの時のように、一瞬の油断で誰かが殺される事はない。
初めて診る時は緊張するけれど、1度でも薬草料理を食べた後なら、目を離している間に死んでしまった、なんてことは起こらない。
だから安心してエマとリナと一緒に笑顔でご飯が食べられる。
「あ、そうだ、ホルモン焼きに合う赤ワインがあるの」
「そう、そう、露店で赤ワインを買ったの、一緒に飲もうよ」
「うん、飲もう、楽しみ」
最初は14歳でお酒を飲むのに抵抗があった。
でも、この世界ではもっと小さな子でもお酒を飲む。
僕は神様のお陰で美味しい水もスポーツドリンクも飲み放題だ。
でもこの世界の子供は、少なくともこの国の子は、水に困っている。
この国は水の質が悪くて、生水を飲むと死ぬ事があるのだ。
だから少しでも安全な飲み物を求めてお酒が造られるようになった。
ワインの原料になるブドウは貴重なので、平民でもめったに飲めない。
まして貧民がワインを飲むなんて夢のまた夢だ。
平民の間でよく飲まれているのは大麦から造ったエール。
少し余裕のある人がリンゴから造ったシードルを飲む。
食べるのが好きなエマとリナが、めったに手に入らない赤ワインを露店で見かけて、大金を払ってでも買う気持ちは分かる。
その赤ワインを僕と一緒に飲もうとする気持ちがうれしい。
「「「かんぱい」」」
エマとリナがもの凄く美味しそうに飲んでいる。
この世界に来て初めてお酒を飲んだ僕には、赤ワインが美味しいのか不味いのか分からないけれど、エマとリナが楽しそうにしているから幸せだ。
「エマもリナも赤ワインが好きなの?」
「私はお酒なら何でも好きよ」
「私もお酒は何でも好き」
「エールとシードルとワインなら何が好きなの?」
「どれとは決められないわ、甘みが強いお酒なら何でも好きよ」
「私も甘いお酒が好き、だからエールよりはシードルかワインね」
商業ギルドに使いを出して、甘いお酒を買い占めさせよう。
いや、神様にお願いして甘いお酒を造れるようにしてもらおう。
「ショウ様、治療を望む人を寝泊まりさせる新しい家が完成しました。
食べ終わられたら見て回って頂けますか?」
「こちらの下ごしらえも終わりました、料理お願いします」
「ショウ様、北大城門外から治療をして欲しいという者が来ました」
「モツ煮込みができました、味見お願いします」
王都行政官閣下が奥方様の治療をして欲しいと言って来てから20日経った。
僕が死病を薬草料理で治せる事は、誰にも話さないように口止めした。
だけど、やっぱり、完全な口止めはできなかった。
王侯貴族にまでは広まっていないが、貧民街には広がってしまった。
東大城門外の貧民街だけでなく、西南北の大城門外にある3ケ所の貧民街住民には広まってしまっていて、毎日のように治療をして欲しいとやって来る。
「下ごしらえができた鍋から順番に料理していく。
治療希望者は先に長の許可をもらってくれ。
長が許可しない者の治療はできない、信用できない者を長に排除してもらう。
モツの味見は薬草料理を作り終わってからやる。
味見の終わったモツ煮込みから露店で売ってくれ」
僕の魔法で結核を治す成分を含む薬草料理が完成した。
手伝ってくれている貧民街の女性が薬草料理を持って患者さんの所に行く。
だが、手伝いの女性たちが持って行くのは薬草料理だけではない。
僕以外の料理人が作ったモツ煮込みも持って行く。
ただ、モツ煮込みは死病患者さんの所に持って行くわけじゃない。
モツ煮込みは商品として露天街の店に持って行く。
それと、僕が治療をしているのは貧民街の死病患者だけではない。
王都行政官閣下の奥方様の治療もしている。
奥方様は家臣に守られ使用人にお世話され、野営テントで暮らしている。
冷凍倉庫の改装が終わったら引っ越ししてもらう。
「ショウ、ご飯ができたわよ」
「マルチョウが焼けたわよ」
僕のご飯を作ってくれているエマとリナが呼んでくれる。
「ありがとう、薬草料理が全部完成したら行くよ」
「早く来ないとミノの香草焼きが硬くなっちゃうよ」
「ミノのモツ煮込みも作っておこうか?」
「マルチョウは焼きながら食べるから、先に焼いた分は誰かに食べてもらって。
ミノを薄切りにして茹でといてくれる?
シードルビネガーと葱で和えておいて、冷めた頃に美味しくなるから」
「「は~い」」
ホルモンは焼きながら熱々を食べるのが好きだ。
好き嫌いとは別に、エマとリナが作ってくれた料理は別格で美味しい。
愛情を感じられて、評判の調理人が作った料理よりも美味しい。
ただ、誰が作ったのとは別の次元で、冷めてしまうと魅力がなくなる料理がある。
ホルモンは焼きたてを食べるのが美味しい。
自分で焼きながら食べる美味しさは、愛情とは別の美味しさがある。
誰かに作ってもらう料理は、冷めても美味しい料理が良い。
もしくは、二度煮や二度焼きしても美味しい料理が良い。
「朝早くから作ってくれてありがとう、うれしいよ」
「あ、当たり前のことをしているだけよ」
「ショ、ショウだって、みんなの料理を作っているじゃない」
僕のご飯を作ってくれたエマとリナにお礼を言うと、真っ赤になって照れる。
「一緒に食べよう」
「「うん」」
「「「いただきます」」」
エマとリナが僕の習慣に合わせて『いただきます』と言ってくれる。
魔境に行かなくなって、毎日3度一緒にご飯を食べるようになった。
死病を治して欲しいと集まってくる人を診察して回っているけれど、本気で狩りをしていた時より忙しくない。
魔境で狩りをしていた頃は緊張していたけれど、今はそれほどでもない。
死病の人たちの命を預かっている責任は、とても重く感じている。
でも、狩りの時のように、一瞬の油断で誰かが殺される事はない。
初めて診る時は緊張するけれど、1度でも薬草料理を食べた後なら、目を離している間に死んでしまった、なんてことは起こらない。
だから安心してエマとリナと一緒に笑顔でご飯が食べられる。
「あ、そうだ、ホルモン焼きに合う赤ワインがあるの」
「そう、そう、露店で赤ワインを買ったの、一緒に飲もうよ」
「うん、飲もう、楽しみ」
最初は14歳でお酒を飲むのに抵抗があった。
でも、この世界ではもっと小さな子でもお酒を飲む。
僕は神様のお陰で美味しい水もスポーツドリンクも飲み放題だ。
でもこの世界の子供は、少なくともこの国の子は、水に困っている。
この国は水の質が悪くて、生水を飲むと死ぬ事があるのだ。
だから少しでも安全な飲み物を求めてお酒が造られるようになった。
ワインの原料になるブドウは貴重なので、平民でもめったに飲めない。
まして貧民がワインを飲むなんて夢のまた夢だ。
平民の間でよく飲まれているのは大麦から造ったエール。
少し余裕のある人がリンゴから造ったシードルを飲む。
食べるのが好きなエマとリナが、めったに手に入らない赤ワインを露店で見かけて、大金を払ってでも買う気持ちは分かる。
その赤ワインを僕と一緒に飲もうとする気持ちがうれしい。
「「「かんぱい」」」
エマとリナがもの凄く美味しそうに飲んでいる。
この世界に来て初めてお酒を飲んだ僕には、赤ワインが美味しいのか不味いのか分からないけれど、エマとリナが楽しそうにしているから幸せだ。
「エマもリナも赤ワインが好きなの?」
「私はお酒なら何でも好きよ」
「私もお酒は何でも好き」
「エールとシードルとワインなら何が好きなの?」
「どれとは決められないわ、甘みが強いお酒なら何でも好きよ」
「私も甘いお酒が好き、だからエールよりはシードルかワインね」
商業ギルドに使いを出して、甘いお酒を買い占めさせよう。
いや、神様にお願いして甘いお酒を造れるようにしてもらおう。
「ショウ様、治療を望む人を寝泊まりさせる新しい家が完成しました。
食べ終わられたら見て回って頂けますか?」
217
お気に入りに追加
769
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます
井藤 美樹
児童書・童話
私の両親はお人好しなの。それも、超が付くほどのお人好し。
ここだけの話、生まれたての赤ちゃんよりもピュアな存在だと、私は内心思ってるほどなの。少なくとも、六歳の私よりもピュアなのは間違いないわ。
なので、すぐ人にだまされる。
でもね、そんな両親が大好きなの。とってもね。
だから、私が防波堤になるしかないよね、必然的に。生まれてくる妹弟のためにね。お姉ちゃん頑張ります。
でもまさか、こんなことになるなんて思いもしなかったよ。
こんな私が〈聖女〉なんて。絶対間違いだよね。教会の偉い人たちは間違いないって言ってるし、すっごく可愛いモフモフに懐かれるし、どうしよう。
えっ!? 聖女って給料が出るの!? なら、なります!! 頑張ります!!
両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です!!
冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。
稀代の悪女は死してなお
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結】玩具の青い鳥
かのん
児童書・童話
かつて偉大なる王が、聖なる塔での一騎打ちにより、呪われた黒竜を打倒した。それ以来、青は幸福を、翼は王を、空は神の領域を示す時代がここにある。
トイ・ブルーバードは玩具やとして国々を旅していたのだが、貿易の町にてこの国の王女に出会ったことでその運命を翻弄されていく。
王女と玩具屋の一幕をご覧あれ。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる