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第1章

第40話:助けて!

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「エマ、リナ、良く無事に帰ってきてくれた!
 心配で心配で、胸が張り裂けそうだった!
 もうどこにも行かないでくれ、ずっと僕の側にいてくれ!」

「な、何を言っているの、そんな事を言っても好きにならないんだからね!」
「へ、変な事言わないで、そんな事を言っても口説かれたりしないんだからね!」

 商業ギルドから帰って来たエマとリナを見つけて、急いで迎えに行った。
 心の中にある本心を口にしてしまった。
 愚王が何をしでかすか分からない王都になんか、もう行かせない。

「王都行政官が、冷凍用倉庫が謀叛用の城に見えると言うんだ。
 愚王とバカ貴族たちが言い掛かりをつけて、騎士団を派遣すると言うんだ。
 そんな連中がいる王都は危険だから、もう行かないようにしよう」

「……だから言ったでしょう、田舎領主の城よりも立派だって」
「そうなると昨日言っていたでしょう、でも、王都に行けないと困るでしょう?」

「別に困らないよ、パンがなくても肉があるよ」

「それは、そうだけど、肉ばかりは……」
「……1度美味しい料理を食べてしまうと……」

「僕の作った内臓料理は美味しくなかった?」

「美味しかったわ、美味しかったけれど……」
「ヒューズホテルで食べたベーコンやチーズが……」

「チーズやベーコンくらいなら、僕が【調理】スキルで作ってあげられるよ。
 材料になる魔獣がヒューズホテルのより良いから、もっと美味しいよ」

「……甘い物、お菓子を食べたいの……」
「ショウの【調理】スキルはお菓子も作れるの?」

「作れるよ、材料さえあれば、どんなお菓子だって作れるよ」

「王都に行かないとお菓子の材料が手に入らないんじゃないの?」
「もう美味しい菓子が食べられなくなるんじゃないの?」

「王都に行かなくても、行商人から買えばいいよ。
 僕らが王都に行かなくなったら、魔獣や魔樹小枝が急に減るよ。
 欲しい人が王都からやってくるから、その人から買えばいいよ」

「そっか、私たちの住んでいたような田舎でも、行商人が来たよね」
「ショウの狩る魔獣や魔樹小枝が欲しい人が、列をなしてやってくるね」

 エマとリナが安心してくれたので、2人が帰って来るまでに考えていた事を、荷役の人たちにやってもらった。

 1つは子ども食堂で使う食材集めだ。
 ある程度戦闘力のある人に、野草と香草、果物と根菜を集めてもらう。
 その時に勝てる獣や魔獣が現れたら、無理のない範囲で狩ってもらう。

 1つは子ども食堂で料理を作ってもらう。
 シカ系魔獣の内臓13部位を香草塩で焼くホルモン焼き。
 同じくシカ系魔獣の13部位を根菜と香草塩で煮るモツ煮込み。

 1つは僕が住む事にした街区、冷凍保存用倉庫を造った街区の強化。
 僕が土属性の魔法を使ったら、王城より頑丈な城壁や壕を造れる。
 だけどそんな事をしたら、愚王とバカ貴族が襲ってくるかもしれない。

 少なくとも王都行政官が交渉してくれている間は、表立って造れない。
 わずかでも襲って来る気配を感じたら別だけど、今の所は問題ない。
 だから、みんなを鍛える意味もあって、人力で街壁と濠を造ってもらう。

 思いっきり身体を使う事で、荷役の人たちに【身体強化】スキルが発現するかもしれない。

 【身体強化】とまではいかなくても【瞬足】【剛脚】【健脚】【剛力】【剛腕】【大剛】などのスキルが発現するかもしれないので、力仕事をしてもらった。

「お腹空いた、ハラミ焼けている?」
「私はミノと根菜の煮込みが食べたい、できている?」

 僕と一緒に魔境の根菜を掘りに行っていたエマとリナが、家に帰るなり言う。
 がんばってヤマイモやスズシロと呼ばれている野生のダイコンやカブ、ニンジンやサトイモ、レンコンやゴボウを集めたからお腹が減ったのだろう。

 エマがハラミの塩胡椒焼きを口一杯に頬張っている。
 リナがミノとダイコンの煮込みを美味しそうにかみしめている。
 僕は、今日も大好きなマルチョウのワサビ塩焼きから食べる。

 今日の収入は1回だけ売った魔樹小枝の5万6400アル。
 支出は女子供が増えた450人に80アルずつで3万6000アル。
 利益は2万400アルあった。

 エマとリナはこの状態でも半分しか受け取らないと言い張る。
 一生懸命説得したけれど、どうしても3等分に同意してくれなかった。
 なので僕の手取りは1万200アル。

 これまでの利益が2億1363万6101アル。
 合計して2億1364万6501アルになった。

 ただ明日以降は収入が無くなる。
 全く収入のない状態で毎日3万6000アル払い続けて良いのか?
 莫大な貯金があるから、10年くらい払い続けても平気だ。

 だけど、そんなやりかたは、偽善なんじゃないか?
 僕がお世話になった子ども食堂と同じように、利益の範囲でやるべきではないか?
 そんなふうに悩んでいたのだが……

「にいちゃん、おかあさんが、おかあさんが!」

「お母さんがどうした?」

 5歳くらいの女の子が泣きながら走ってきた。
 昨日初めて働きたいとやってきた、8歳だと言う男の子の妹のようだ。

「おかあさんがちをはいてたおれたの、なにもいわないの、わ~ん」

「助けるから案内して!」

 僕は男の子に言って家に急いだ!
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