異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。

克全

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第1章

第36話:【疾風鉄斬】

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「僕に加護を与えて下さっているウカノミタマ、アマテラス様、斬り落した魔樹小枝を運ぶ材木を斬り落とすのに、魔法を使わせてください。
 地中に含まれる金属、鉄を風に混ぜる魔法を使えるようにしてください、おねがいします【疾風鉄斬】」

 僕は魔境周辺部に生えている普通の木々を手当たりしだい斬り倒した。
 斬り倒した木々を間隔をあけて組んで、その何もない空間を樹皮で覆った。
 魔樹小枝とシカ系魔獣が生え変わりで落とした角を運ぶための、巨大な網だ。

 巨大な網、運搬具を作ってからエマとリナを追いかけた。
 おどろかさないように、大きな音が出ないくらいで追いかけた。

「なあ、自由騎士閣下、俺は夢でも見ているのか?
 こんな巨大な魔獣を1日に2度も見るなんて、白昼夢を見ているのか?」

「いやぁ、もう僕が強いのは知れ渡ってしまっただろう?
 隠すよりは見せつけた方が安全だろう、だから少しだけ実力を出す事にしたんだ。
 僕は強いと言っていたよね、弱いなんてひと言も言っていないよね?」

「……普通ショウぐらいの子供が強いと言っても、信用しないもんなんだよ。
 信用したとしても、ここまで強いとは誰も思わない。
 どんな神様に何の加護を授かったのかは知らないが、非常識過ぎる。
 もういい、もういい、頭が痛くなった、もう行ってくれ」

「はい、気が変わったら休みに一緒に狩りをしましょう」

 気安くなった当番兵と軽く冗談を言い合いながら東大城門を通った。
 
「ママ、ママ、ママ、すごいおっきいよ!」
「本当にすごいわ、いくらになるの?!」
「なあ、俺が聞いていたのはクマ系魔獣なんだけど、あれシカ系だよな……」
「いや、見間違いか聞き間違いだろう、あれはどう見たってシカ系だよ」

「……1日に2度もあんな巨大な魔獣を狩るなんてありえないだろう?」
「建国当時の騎士団伝説だって、1日に2頭も狩った話なんてないぞ!」
「……建国の騎士たちよりも強いというのか?」
「いや、聞き間違いだよ、自慢したくて王都中を担いで回っているんだよ」

「「「「「自由騎士さま~!」」」」」
「「「「「こっち向いて」」」」」」
「「「「「愛してる~」」」」」
「「「「「結婚してぇ~」」」」」

 エマとリナの表情が怖い、さっきまで照れて真っ赤だったのに。

「……もてていいわね」
「……結婚してあげたら」

「いや、背中を預けられるような仲間以外と生きていく気はないから」

「……」
「……」
「……」

 僕もエマもリナも、商業ギルドにつくまで真っ赤になって無言だった。

 ★★★★★★

「……ショウ殿、私は夢でも見ているのでしょうか?
 ほんの1時間ほど前に、ブルーアルクトドゥスを預かったばかりですよね?」

「ええ、そうですね、その通りです。
 ですが夢でも幻でもありません、現実です。
 ブルーコーナーエルクを狩って来ましたので、競売用に預かってください。
 こちらで預かれないのでしたら、他の国に持って行きます」

「とんでもありません、どうか家に預からせてください!
 家の総力を使って大陸中の好事家と大金持ちを集めてみせます!
 ブルーアルクトドゥスとブルーコーナーエルクがあれば集められます。
 大陸中から好事家と大金持ちを集められます!」

 僕が商業ギルドのマスターと話している間に、エマとリナが魔樹小枝を売り終わってくれていた。

 僕の方が時間がかるのはしかたがない。
 競売用に預けるブルーコーナーエルクの詳細な情報を互いに確認して、一部を盗んだりすり替えられたりされないように、完璧な預かり証を作らないといけない。

「私たちは先に街区に戻るわよ」
「街区にある魔樹小枝を運んで良いのよね?」

「ああ、そうしてくれ、僕がここにいなかったら、魔境に行ったと思ってくれ。
 その時は待ち合わせの場所に来てくれ」

「分かったわ、もうおどろかさないでよ」
「エマはこう言っているけれど、どうせならもう1頭狩ってよ」

 良かった、照れもヤキモチもなくなった。
 こういうエマとリナのさっぱりとした性格が大好きだ。
 ネチネチと責めるような性格の女の子は苦手だ。 

 今回エマとリナたちが運んでくれた魔樹小枝は、 全部で5万3120アルだ。
 2抱え分多くなったのは、誰かが朝1番よりもがんばってくれたのだろう。
 日当だからどれだけ運んでも同じ額なのに、よくがんばってくれている。

 僕とギルドマスタ―に加えてベテランの買い取り係の職員。
 その3人で競売用のブルーコーナーエルクの預かり証を完成させた。
 預かり証を持って魔境の奥深くに向かった。

 ★★★★★★

 ブィイイイイイ、ブィイイイイイ、ブィイイイイイ、ブィイイイイイ

 魔境の奥深くに向かいながらイノシシ笛でブタ系魔獣を集める。

 エヤァアアアアア、エヤァアアアアア、エヤァアアアアア、エヤァアアアアア

 魔境の奥深くに向かいながらシカ笛でシカ系魔獣を集める。
 集まってくるのがブタ系魔獣でもシカ系魔獣でもかまわない。
 経験値が稼げて高額で売れる魔獣なら何でもかまわない。

 1000kg級や2000kg級のブタ系やシカ系はけっこう集まる。
 ブルーアルクトドゥスやブルーコーナーエルクほどではないが、競売にできる強力な魔獣だとは聞いているが、狩らずに見逃す。

 もう莫大な貯金があるので、自分の事よりも貧民街の人たちの事を考える。
 最初は子ども食堂を作るつもりだったが、今は安定した仕事を与える方が良いと思っている。

 女子供でも働ける仕事があって、自分の力で生きて行ける方が、食事を与えられるよりも誇り高く生きて行ける。

 その仕事として魔樹小枝を集めておく方が、魔獣を狩るよりも大切だ。
 エマとリナと待ち合わせている時間まで余裕がある。
 作った超大型の運搬具一杯に、魔樹小枝と落ちている魔獣の角を乗せて運ぶ。

 貧民街に置いておけば、明日も朝1番に魔樹小枝を運んでもらえる。
 1日3度運んでもらえば、1抱えしか運べない子供でも日当分働いた事になる。
 残りの時間は武術や魔法などのスキル訓練にする。

 異神眼で見た過去の事例も、僕の実体験でも、スキル訓練で祝福される。
 魔獣を狩るような危険を冒さなくても、神々から祝福される。
 1度でも祝福されたら、実戦闘力がかなり上がる。

 女子供の実戦闘力が上がったら、エマとリナに狩りのスキルを教えてもらう。
 僕のような、神の加護で強くなった人間は、良い教師になれない。
 がんばってスキルを覚えたエマとリナなら、良い教師になれる。

「僕に加護を与えて下さっているウカノミタマ、アマテラス様、たくさんの食糧を腐らせる事なく冷凍保存するための倉庫を造らせてください。
 ここに置いてある魔獣の内臓、ホルモンを冷凍保存させてください【建築】」
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