19 / 57
第1章
第16話:荷役
しおりを挟む
「ほう、まだ幼く見えるのに、以外と祝福されているようだな」
500kgを越えるレッドディアを背負い、あちらこちらに鳥を吊るしている僕を見て、王都東大城門の当番兵が感心したように言ってくれる。
「獲物を降ろして申告した方が良いですか?」
「いや、首から吊るした商業ギルドの会員証は見えている、通って良いぞ」
「ありがとうございます」
「嬢ちゃんたちも結構やるな。
2人がかりとはいえ、その大きさの獲物を担げる同年代は少ない」
「私たちもこのまま通って良いですか?」
「胸の冒険者ギルド会員証で大丈夫ですか?」
「ああ、構わないぞ、魔獣を持ち込んでくれたら、それだけ王都が豊かになる」
今日の当番兵が良い人だったのか、城門当番に派遣される兵が選び抜かれた良兵なのかは分からないが、ワイロを要求される事無く王都に入れた。
そのままどこにもよらずに商業ギルドに向かった。
★★★★★★
「買い取りをお願いしたいのですが、こちらで良いのですか?」
商業ギルドに戻って、狩ったレッドディアの買い取りをお願いした。
商業ギルドをでてから4時間も経っていないからだろう。
入会手続きをしてくれた上品な受付嬢がまだいたので聞いてみた。
「はい、こちらでもいいのですが、右に行ってもらった方が2度手間になりません。
商業ギルドも基本的には冒険者ギルドと同じ造りになっております。
分かり難いですが、右側に解体場を兼ねた買い取り受付がございます。
ご案内しますので、ついて来て下さい」
上品な上に親切な受付嬢が買い取り専門の受付まで案内してくれた。
僕たちの事も説明してくれたのか、僕の胸に見える商業ギルドの会員証を見たからなのか、買取受付の男性がテキパキと査定してくれた。
「大きい方のレッドディアが508kgです。
小さい方のレッドディアが203kgです。
どちらもほとんど傷がなく、鹿茸の状態も良く、血抜きも完璧です。
508kgの方が鹿茸と魔石込みで5080アルです。
203kgの方が鹿茸と魔石込みで2030アルです。
薬草は1032アルで、鳥が292アルになります。
それでよろしければ買い取らせていただきます」
「はい、それでいいです」
買取受付の男性は小銀貨8枚と大銅貨4枚、中銅貨3枚と小銅貨4枚で代金を払ってくれた。
「今日狩りをしてみて、もっと多くの獲物を狩れると思いました。
狩った獲物を運ぶ荷役を雇いたいのですが、仲介してもらえますか?」
「こちらは買い取り専門の受付なので、先ほどの受付で相談してください。
条件によっては紹介できるかもしれません」
そう言われたので、僕たちは上品で親切な受付嬢の所に戻って聞いた。
「商業ギルドでも商会や商店で働く人を紹介させていただいておりますが、大半が商業に係わる技能を持っている人になります。
運送係を雇いたいと言う会員さんもおられますので、力の強い者や戦闘力のある方を紹介させていただく事はありますが、数は少ないです。
ショウ様の場合は荷運びだけですので、力があって安く雇える方になると思いますが、そういう方々の場合は信用が低くなりますが、よろしいでしょうか?」
「信用の低い人と言うのは、貧民街の人と言う事でしょうか?」
「はい、貧民街の方ではあるのですが、貧民街にも2つあります。
王都内の貧民街の方は、盗まれる恐れのない大きくて重い商品を近くに移動させる場合や、戦闘力のある見張りがおられる場合に日雇いされます。
王都外の貧民街の方々は、王都に入らずに働かれる方々で、特に安く雇えます」
「信用度が低いとは言っても商業ギルドが紹介する荷役ですよね?
最低限のマナーは身についているのでしょう?」
「はい、長く雇ってもらえる方が、目先の利益に目がくらんで盗みや殺人を行うよりは良いと、理解できる方々を選んでいます。
特に優先しているのは、妻や子供がいる方々です。
家族がいれば犯罪に走る可能性が低くなりますので」
「それなら安心して雇えます。
明日の夜明けちょうどに東南魔境に入ろうと思っているのですが、その時間から城門が閉められる時間まででいくらになりますか?」
「王都外の方々ですと日当50アル、商業ギルドに10アル払っていただきます」
「2割の手数料ですか、安いですね。
冒険者ギルドだと10割とっていそうですね」
「会員様へのサービスと考えて安くしています。
それと、王都周辺の治安を良くして会員様を守る意味でも、大城壁の外側に住む貧民たちに仕事を与えようというのが、ギルドマスターの方針です」
「ということは、荷役からは紹介料をとっていないのですか?」
「はい、大城壁の外側に住む貧民たちの多くが税を払っていません。
城門の出入りに100アルを払う事などできませんから、商業ギルドに出入りする事もできません。
そんな事をしたら、日当に100アル加えなければいけません。
それでは王都内に住む者を雇った方が安くつきます。
かと言って日当の支払いや手数料の回収のために、危険な大城門の外側に、ギルド職員を定期的に行き来させる訳にもいきません」
「だから日当の支払いは雇う人間が荷役に直接行い、手数料も雇う人間が商業ギルドに払う形にしているのですね?」
「はい、それが1番安く王都の外で荷役を雇う方法になります。
ただし、雇う会員様や雇われる荷役に偽物が混じらないように、ギルド職員が大城門の前で本人かどうか確認させていただく事になっております」
「おっと、ですがそれでは大城門から商業ギルドまで獲物が運べません!」
「その点はご安心ください。
今の王都行政官様は治安維持の大切さを理解されています。
商業ギルドの会員が貧民街の者を雇って魔境の獲物を持ち運ぶ時だけは、特別に入都税を徴収しない事になりました」
「今の王都行政官になる前は徴収していたのですか?」
「はい」
「王都行政官が交代する事になると、また徴収する事になるかもしれない?」
「……はい……」
500kgを越えるレッドディアを背負い、あちらこちらに鳥を吊るしている僕を見て、王都東大城門の当番兵が感心したように言ってくれる。
「獲物を降ろして申告した方が良いですか?」
「いや、首から吊るした商業ギルドの会員証は見えている、通って良いぞ」
「ありがとうございます」
「嬢ちゃんたちも結構やるな。
2人がかりとはいえ、その大きさの獲物を担げる同年代は少ない」
「私たちもこのまま通って良いですか?」
「胸の冒険者ギルド会員証で大丈夫ですか?」
「ああ、構わないぞ、魔獣を持ち込んでくれたら、それだけ王都が豊かになる」
今日の当番兵が良い人だったのか、城門当番に派遣される兵が選び抜かれた良兵なのかは分からないが、ワイロを要求される事無く王都に入れた。
そのままどこにもよらずに商業ギルドに向かった。
★★★★★★
「買い取りをお願いしたいのですが、こちらで良いのですか?」
商業ギルドに戻って、狩ったレッドディアの買い取りをお願いした。
商業ギルドをでてから4時間も経っていないからだろう。
入会手続きをしてくれた上品な受付嬢がまだいたので聞いてみた。
「はい、こちらでもいいのですが、右に行ってもらった方が2度手間になりません。
商業ギルドも基本的には冒険者ギルドと同じ造りになっております。
分かり難いですが、右側に解体場を兼ねた買い取り受付がございます。
ご案内しますので、ついて来て下さい」
上品な上に親切な受付嬢が買い取り専門の受付まで案内してくれた。
僕たちの事も説明してくれたのか、僕の胸に見える商業ギルドの会員証を見たからなのか、買取受付の男性がテキパキと査定してくれた。
「大きい方のレッドディアが508kgです。
小さい方のレッドディアが203kgです。
どちらもほとんど傷がなく、鹿茸の状態も良く、血抜きも完璧です。
508kgの方が鹿茸と魔石込みで5080アルです。
203kgの方が鹿茸と魔石込みで2030アルです。
薬草は1032アルで、鳥が292アルになります。
それでよろしければ買い取らせていただきます」
「はい、それでいいです」
買取受付の男性は小銀貨8枚と大銅貨4枚、中銅貨3枚と小銅貨4枚で代金を払ってくれた。
「今日狩りをしてみて、もっと多くの獲物を狩れると思いました。
狩った獲物を運ぶ荷役を雇いたいのですが、仲介してもらえますか?」
「こちらは買い取り専門の受付なので、先ほどの受付で相談してください。
条件によっては紹介できるかもしれません」
そう言われたので、僕たちは上品で親切な受付嬢の所に戻って聞いた。
「商業ギルドでも商会や商店で働く人を紹介させていただいておりますが、大半が商業に係わる技能を持っている人になります。
運送係を雇いたいと言う会員さんもおられますので、力の強い者や戦闘力のある方を紹介させていただく事はありますが、数は少ないです。
ショウ様の場合は荷運びだけですので、力があって安く雇える方になると思いますが、そういう方々の場合は信用が低くなりますが、よろしいでしょうか?」
「信用の低い人と言うのは、貧民街の人と言う事でしょうか?」
「はい、貧民街の方ではあるのですが、貧民街にも2つあります。
王都内の貧民街の方は、盗まれる恐れのない大きくて重い商品を近くに移動させる場合や、戦闘力のある見張りがおられる場合に日雇いされます。
王都外の貧民街の方々は、王都に入らずに働かれる方々で、特に安く雇えます」
「信用度が低いとは言っても商業ギルドが紹介する荷役ですよね?
最低限のマナーは身についているのでしょう?」
「はい、長く雇ってもらえる方が、目先の利益に目がくらんで盗みや殺人を行うよりは良いと、理解できる方々を選んでいます。
特に優先しているのは、妻や子供がいる方々です。
家族がいれば犯罪に走る可能性が低くなりますので」
「それなら安心して雇えます。
明日の夜明けちょうどに東南魔境に入ろうと思っているのですが、その時間から城門が閉められる時間まででいくらになりますか?」
「王都外の方々ですと日当50アル、商業ギルドに10アル払っていただきます」
「2割の手数料ですか、安いですね。
冒険者ギルドだと10割とっていそうですね」
「会員様へのサービスと考えて安くしています。
それと、王都周辺の治安を良くして会員様を守る意味でも、大城壁の外側に住む貧民たちに仕事を与えようというのが、ギルドマスターの方針です」
「ということは、荷役からは紹介料をとっていないのですか?」
「はい、大城壁の外側に住む貧民たちの多くが税を払っていません。
城門の出入りに100アルを払う事などできませんから、商業ギルドに出入りする事もできません。
そんな事をしたら、日当に100アル加えなければいけません。
それでは王都内に住む者を雇った方が安くつきます。
かと言って日当の支払いや手数料の回収のために、危険な大城門の外側に、ギルド職員を定期的に行き来させる訳にもいきません」
「だから日当の支払いは雇う人間が荷役に直接行い、手数料も雇う人間が商業ギルドに払う形にしているのですね?」
「はい、それが1番安く王都の外で荷役を雇う方法になります。
ただし、雇う会員様や雇われる荷役に偽物が混じらないように、ギルド職員が大城門の前で本人かどうか確認させていただく事になっております」
「おっと、ですがそれでは大城門から商業ギルドまで獲物が運べません!」
「その点はご安心ください。
今の王都行政官様は治安維持の大切さを理解されています。
商業ギルドの会員が貧民街の者を雇って魔境の獲物を持ち運ぶ時だけは、特別に入都税を徴収しない事になりました」
「今の王都行政官になる前は徴収していたのですか?」
「はい」
「王都行政官が交代する事になると、また徴収する事になるかもしれない?」
「……はい……」
325
お気に入りに追加
770
あなたにおすすめの小説
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる