異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。

克全

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第1章

第7話:別離

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「コンスタンティナさん、どうしても出て行かないといけませんか?」

「私は祖母や母を不幸にした汎人族が大嫌いだ。
 汎人族と同じ下劣な人間になりたくないのでショウを助けたが、ずっと一緒にいる気にはなれない、力がついたのなら出て行ってくれ」

「コンスタンティナさんがそう思うのは当然です、出て行きます。
 ただ、同じ様な立場のハーフエルフやクオーターエルフはどうでしょう?
 一緒に暮らす気にはなれませんか?
 汎人族ともエルフ族とも一緒に暮らせない、ハーフエルフやクオーターエルフの村を作れたら、一緒に暮らせるのではありませんか?」

「私は祖母と両親以外と暮らした事がない。
 ショウと暮らしたが、心も身体も休まらない。
 それはショウが汎人族だからではなく、誰かと一緒に暮らすのが嫌なのだろう。
 母と同じハーフエルフだからといって、一緒に暮らせるとは思えない」

「試してみる気にもなれませんか?」

「なれない、少なくとも今は誰であろうと一緒に暮らす気になれない」

「サクラはどうですか、人間ではなく、アーマードバッファローのサクラとなら一緒に暮らせるのではありませんか?」

「サクラはショウの家畜だ、しかももの凄く懐いているではないか!」

「だったら他の動物を飼ってみませんか?
 ずっと独りというのは寂し過ぎると思います」

「私は独りが好きなのだ、寂し過ぎるというのはショウの勝手な思い込みだ」

「勝手な思い込みと言われると反論できませんが、心から心配しています。
 病気で寝込んだ時のために、助けてくれる者が必要とは思われませんか?」

「自分で治せないようなケガを負ったり病気になったりしたら、それが私の寿命だ。
 ショウが心配する事じゃないし、それが理由なら動物では意味がない」

「だったら食用や毛織物用の家畜を飼われませんか?」

「肉は得意の弓で狩れる、狩った肉を燻製した保存食が有る。
 衣服は狩った獣や魔獣の毛から作った物がたくさんある。
 ショウが心から心配してくれるのは分かるが、私には無用だ」

「そこまで言われるのでしたら、もう誰かと暮らして欲しいとか、家畜を飼ってくれとは言いませんが、1つだけお願いがあります」

「……まだお節介をする気か、よほどのことでなければ聞けないぞ」

「私が汎人族の国で安全な居場所を作るまで、サクラを預かってもらえませんか?」

「そういう言い方をすれば、私がサクラと一緒に暮らすと思っているのか?」

「コンスタンティナさんを心配する気持ちはありますが、それと同じくらいサクラの事も心配しているのです。
 僕に何かあれば、サクラが殺されてしまうかもしれません。
 サクラは僕をドレイとして買った奴の持ち物です。
 持ち主を特定する印が有れば、持ち主に持って行かれるかもしれません」

「上手い言い方を思いついたな」

「言い訳に聞こえるかもしれませんが、嘘偽りのない本心です。
 コンスタンティナさんの事もサクラの事も、心から大切に想っています」

「そこまで言うのなら、ショウが汎人族の国で安全な居場所を確保するまで、サクラを預かっておいてやる。
 だが、できるだけ早く迎えに来い。
 あれはスポーツドリンクだったか、サクラが大好きな水を私は出せない。
 ハチミツやメイプルシロップは飲ませてやれるが、スポーツドリンクは飲ませてやれない。
 スポーツドリンクが飲みたくて、サクラがショウを追いかけていく前に、安全な居場所を確保しなさい、いいな?」

「はい、約束します、できるだけ早く安全な居場所を作ります。
 時間がかかりそうでしたら、途中で戻ってきます」

「ショウは本当に14歳か、口が上手すぎるぞ」

「本当に14歳ですが、大人たちに色々鍛えられました」

「これ以上粘られると苛立ちを抑えきれなくなって、ケンカになってしまいそうなので受け入れる、私は他人と話しているだけで腹が立ってくるのだ。
 ショウが心から私を心配してくれているのは分かっている。
 ショウは汎人族と言うよりは落ち人だから、ケンカをするのも大人げない。
 とはいえ、直ぐに戻ってきたら本気で怒るぞ」

「分かっています、サクラが独りで追いかけてくるくらい長く安全な居場所を見つけられなかった時にだけ、顔を見せに戻ってきます。
 後は、安全な居場所が見つかった時に戻ってきます」

「そうしろ、明日の朝早く出て行け、好いな?」

「はい、そうします、色々お世話になりました」

「何も世話していない、魔法の使い方を少し教えただけだ。
 ほとんど全てショウが自力で覚えた、私はここに居る事を許しただけだ」

「それが何より大きいのです。
 安全な場所がある、強い保護者がいてくれる、それ以上の手助けはありません」

「もういい、もう良いから出て行く準備をしろ!」

 ついにコンスタンティナさんが怒って自分のツリーハウスに行ってしまった。
 俺も自分用にツリーハウスを造ったが、しばらくサクラと離れて暮らす事になるから、今晩は地上でサクラと寝よう。
 
 コンスタンティナさんは、サクラの為に取って置きのハチミツとメイプルシロップを分けてくれる気だが、それでは申し訳ない。

 明日出て行く時に、サクラ用のメイプルを育てよう。
 糖分をたっぷり含んだサトウキビとサトウダイコンが育つように、アマテラス様とウカノミタマ様にお願いしてから出て行こう。
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