上 下
7 / 57
第1章

第4話:逃亡戦

しおりを挟む
「モォオオオオオ!」

 慕われてしまったのか、助けたウシサイが追いかけて来た。
 ウシサイだけならうれしいが、フロストウルフまで追いかけて来た。
 足の速い狼から逃げられるはずがない。

「死にたいならかかって来い!」

 ドレイ用の貫頭衣には剣を差す所も財布を入れて置くポケットもない。
 粗い布に穴を開けただけで、穴に頭を入れて服代わりにしている。
 財布を地面に捨て、1本の剣を地面に刺し、2本を両手に持つ。

 神様がくれた神運は伊達ではないはずだ、必ず勝てる。
 さっきも、生まれて初めて剣を使ったのに上手く使えた。
 100倍補正もある、必ず勝てると信じて戦う。

「モォオオオオオ!」

 ウシサイも一緒に戦ってくれるようだ。
 これで一斉の襲われないかな?

「「グルルルルル」」

 前に2頭のフロストウルフがいる。

「グルルルルル」

 右側から現れたフロストウルフにはウシサイが向き合ってくれた。

「グルルルルル」

 左側から4頭目のフロストウルフが現れた!

「ギャン!」

 一気に左側に踏み込んで左手の剣を振る!
 5頭目が後ろから現れたら勝ち目がない、先手必勝だ。
 フロストウルフが態勢を整える前に1頭でも多く殺す!

【神々の祝福を与えます】
【神々の祝福を与えます】
【神々の祝福を与えます】

 正面の2頭は右手に持った剣でけん制する。
 さっきは5度、今度は3度、頭に言葉が鳴り響く。
 確認のために5度響いたのではなく、レベルアップの回数分響くのか?

 祝福があったという事は、左側のフロストウルフは死んでいる。
 安心して正面に2頭に集中できる。

 一気に距離を詰めて正面左側のフロストウルフの前脚を狙う!
 俺の早さについて来られなかったのか、右前脚を斬り落とせた。

「キャン!」

 逃げられないうちに右手の剣で喉を斬り裂く!
 
【神々の祝福を与えます】

 ゲームと同じで、祝福の回数が増えると、次の祝福までに必要な経験値が多くなるのだろう、同じフロストウルフを殺しても祝福の回数が減ってきた。

「ギャン!」

 身体の動きが、初めてフロストウルフを殺した時よりも早くなっている。
 正面左のフロストウルフを殺して直ぐに正面右のフロストウルフを殺したが、手にかかる皮と肉を斬り裂く感触が軽くなっている。

「俺に任せろ」

 ウシサイがけん制してくれていたフロストウルフに突っ込んで剣を振るう。
 ウシサイに集中していたフロストウルフは俺の事に気が付いていなかった。

「キャン!」

【神々の祝福を与えます】

 祝福のお陰で敵を殺した事が分かるのは便利だった。
 でもこれからは殺しても祝福されなくなるのだろう。

 さて、どうしたらいいのだろう?
 アニメで観た異世界転生や異世界召喚の内容だと、殺した動物や魔物は素材として売れるという事だったが、フロストウルフを持って行って良いのだろうか?

「モォオオオオオ!」

 ウシサイが脚を折って座り込んだ、ケガでもしたのか?!

「どうした、どこか痛いのか?」

 心配になって聞いたが、何やら訴えるような目つきになっている。
 俺に何をさせたいんだ、話ができれば良いんだが、さすがに無理だよな。
 そうだ、神に与えられた異神眼というスキルが有るんだ。

「ウシサイの言う事、思っている事を理解させてくれ【異神眼】」

『私の背中に乗ってください、敵が追いかけて来るかもしれません』

 やった、ウシサイの言う事、思っている事が分かった!
 確かにウシサイの言う通りだ、逃げたドレイを捕らえる追手がいるだろう。
 道に近いこんな所にいる訳にはいかない。

「追手から逃げきれるようにしてくれ。
 ただ、乗馬なんてした事がないからゆっくり歩いてくれ」

「モォオオオオオ!」

 ウシサイは俺の言う事が分かるようで、ゆっくりと歩いてくれた。
 この世界には別の名前があるはずだから、ウシサイという愛称で呼んでも良いのだろうが、もっと良い名前を付けてあげたい。

「サクラだ、今日から君はサクラだから」

「モォオオオオオ!」

 サクラは、ゆっくりだが休む事無く歩いてくれた。
 方向音痴の俺には分からないが、道から離れてくれているのだと思う。
 サクラを信じて乗っているだけで良いのは助かる。

 ただ、だんだん喉が渇いて来た。
 知らぬ間に落ちた異世界で、初めて来た森の中で、飲み水を見つけられるとは思えないので、魔術で水を手に入れられたら良いのだが、方法が分からない。

 水属性があるから、アニメと同じなら水を呼び出すか作れるはずだ。
 何か方法があるのだろうが、呪文もやり方も分からない。

 このまま祝福を重ねたら異神眼のようにパラメーターに呪文が現れるのだろうか?
 そうだとしても、パラメーターを見る方法が分からない。
 教会の地下室にあった魔法陣が必要なのだろうか?

「待ちなさい、この辺りは私の縄張りよ!
 誰であろうと私の縄張りは入る事は許さない!」

 不意に厳しい声をかけられた。
 声のする方向、前上方を見ると大木の枝に乗った人間がいる。
 人間だと思うが、アニメで観たエルフのように耳が尖っている。

「待ってくれ、俺は敵じゃない、神官の話では落ち人のようだ。
 神官にドレイにされ、どこかに連れて行かれる途中で狼に襲われた。
 その機会を利用して逃げて来た、助けて欲しい」

「汎人族らしい下劣な行いだが、私の知った事ではない。
 落ち人であろうと私の大嫌いな汎人族に違いはない。
 殺されたくなければここから立ち去れ!」

 この世界では、人型の生き物を種族分けしているのだな。
 確かに俺もパラメーターにも汎人族と書かれていた。

「誇り高く善良な貴方にお願いする、助けてくれ。
 この世界の事が分からず、どうやって生きて行けば良いか分からない。
 僕は別の世界で生まれ育っているので、この世界の人間と違って誇りがある。
 助けてもらった分のお礼はするので、生きて行けるだけの知識と技を教えてくれ。
 ドレイの見張っていた奴から奪った全財産を渡す」

「この魔境では金など何の意味も無い。
 命の恩は命で返してもらう事になる、その覚悟はあるか?!」

「ある、貴方の命が危うくなった時には、僕の命を捨てて助ける」

「田中翔平の能力」

「パラメーター1:基本設定」

種族:汎人族
性別:男
年齢:14歳
体格:並
容姿:並
祝福:10回

「パラメーター2:能力」

筋力 :20:筋力に関する適性で物理な攻撃や防御、力仕事などに影響
体力 :20:持続力に関する適性でスタミナや耐久力などに大きな影響
知力 :20:知性に関する適性で魔法の習得速度や成功率に大きな影響
精神力:20:精神に関する適性で魔力、精霊力、魔法力などに影響。
器用 :20:器用さに関する適性で命中率、素早さ、特殊能力取得などに影響
魅力 :20:好悪に影響して精霊魔術の習得や成功率、交渉の成功率に影響
信仰心:20:信心に関する適性で神聖魔術の習得や成功率などに影響

「パラメーター3:魔術属性」

陰属性:11:
陽属性:11:
木属性:11:
火属性:11:
土属性:11:
金属性:11:
水属性:11:

「パラメーター4:スキル」

調理 : 30:生物素材加工の能力と適性、調理の能力と適性
審美眼: 15:価値を見定める目と適性。
鑑識眼: 15:能力を見定める目と適性。
剣術 :  5:剣を使う能力

「パラメーター5:感覚力」

視覚: 20:目に映るものを判別する能力と適性。
音覚:110:音を判別する能力と適性。
触覚: 20:触れたものを判別する能力と適性。
味覚:110:味を判別する能力と適性。
嗅覚:110:匂いを判別する能力と適性。
六感: 83:魔力などエネルギーを判別する能力と適性

「パラメーター6:神与スキル」

鍛冶: 15:金属素材加工の能力と適性
裁縫: 15:繊維素材加工の能力と適性
革細: 15:動物素材加工の能力と適性、皮革加工の能力と適性
木工: 15:植物素材加工の能力と適性、木材加工の能力と適性
彫刻: 15:鉱物素材加工の能力と適性、石材加工の能力と適性。
錬金: 15:金属素材加工の能力と適性、金属素材錬成の能力と適性
調理:110:生物素材加工の能力と適性、調理の能力と適性。
魔法:110:魔法の能力と適正

異神眼:110:全てを見定める目の能力とその適性。

「パラメーター7:特記事項」
神運:神々からの寵愛を受けているとしか思えない幸運
地球での善行によって異世界神のお気に入りとなっている。
異世界での能力値が100倍になる補正が働いている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...