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第1章
第1話:プロローグ・通り魔
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「きゃあああああ!」
「わぁあああああん!」
「雄太君、愛子ちゃん!」
目の前で幼稚園児たちが襲われている!
保母さんであろうきれいな女の人が必死で園児たちをかばっている。
春先で薄着だったのか、刃物を防いだ両腕が血まみれだ!
知らぬ間に通り魔の目の前にいた。
何も考えずに駆けつけていた。
右の拳に痛みと重みを感じたとたん、通り魔が吹き飛んでいた。
何も考えなくても戦えるのは、幼い頃から武道を学んだお陰だ。
両親やお世話になった人たちに叩き込まれた良識のお陰だ。
ここで死ぬことになっても、天国の両親に胸を張って会える。
右脚に衝撃を感じた。
通り魔が倒れたまま左手に持った剣鉈を叩きつけたのか?
守れない、脚をケガした状態では子供たちを守れない!
「死ね!」
無意識で助けたから後が続かない、立ち上がった通り魔が襲ってくる。
避けないと、どこを斬られて子供たちを守れなくなる。
だけど、逃げ続けても出血多量で子供たちを守れなくなる。
通り魔の目は、人殺しが楽しくてしかたがないと言っている。
俺がここで殺されてしまったら、子供たちを守る者がいなくなる。
警察や勇気ある人が駆け付けて来るまでに、何人の子供が殺される?!
「ぎゃあああああ!」
気が付くと右手中指に違和感がある。
クロスカウンターを入れる形で、通り魔に目つぶしをしていた。
反復練習のお陰だろう、無意識に反撃していた。
が、通り魔が全くひるまない、むしろ楽しそうな表情をしている。
左目はつぶしたが、残った右目に増悪を宿してにらみつけてくる。
通り魔が両手に持った剣鉈、左手は防いだが右手が残っている
剣鉈を生身の左腕で受ける訳にはいかない。
右足を踏ん張って左足を出し、近づいて通り魔の右腕に俺の左手を当てる。
それで剣鉈の攻撃を防ぎたかったが、斬られた右足が踏ん張れない。
できるだけ左手を伸ばして防ぐ。
少しは勢いを殺せたが、完全には殺しきれなかった。
左肩から背中にかけて衝撃がはしる。
極度に興奮しているのか痛みを感じないが、確実に傷を受けた。
両手に剣鉈を持つ狂人と徒手空拳で戦うなんて、不利過ぎる。
まだ子供たちが逃げられずにいる、ここで殺される訳ないはいかない!
「きゃははははは、しね、しね、しね、死ね!」
通り魔の残った右目に殺人の快楽が見える。
何としてもここで通り魔を殺さないといけない。
14歳の短い人生になったとしても、ここで殺さないといけない。
生きたまま取り押さえても、必ずまた誰かを殺そうとする。
つい先日も、保護観察処分で自由になった奴が再び子供を殺していた。
殺人犯の烙印を押されても、俺がここで通り魔を殺さないといけない。
俺がためらったら、何の罪もない子供が殺される!
今からは自分の意志で戦う、子供たちのために戦う!
通り魔が左手で振り回す剣鉈を右腕で止める。
同時に左手で通り魔の右目をつぶす!
殺すと決意したはずなのに、無意識に殺さない方法を探してしまった。
両眼をつぶしたら、もう誰も殺せなくなると思ってしまった。
そのためらいが、ほんの少しの遅れになってしまったのか?
殺す事が楽しい通り魔の、ためらいのない攻撃の方が早かったからか?
素手の俺と、剣鉈を持つ通り魔のリーチの差だったのか?
ドン、という衝撃が腹にきた。
通り魔の右目が、楽しくてしょうがないという想いを浮かべている。
見なくても分かる、剣鉈が腹に突き刺さっているのだろう。
即死しなかったが、剣鉈を抜かれたら大量出血で5分と生きていられない。
それどころか急性貧血で子供たちを守れなくなる。
一瞬のためらいが、人を殺す事を恐れたせいで、子供たちが殺される?
「うへへへへへ」
通り魔が舌なめずりをした。
俺から外した視線が、逃げ遅れた子供たちに向けられている!
何としても通り魔を殺さないといけない!
どうする、どうやったら最短で殺せる?
何をしても腹に刺さった剣鉈が抜けるから、1分で殺さないといけない。
この状態で確実に通り魔の首の骨が折れるか?
喉をつぶして窒息死させられるか?
通り魔の剣鉈を奪って斬り殺す事ができるか?
通り魔の意識が俺でなく子供たちに向かっている。
俺をよりも子供たちを殺す方が楽しいのだろう。
もう時間がない、通り魔が俺の腹に刺した剣鉈を抜いたらもう助けられなくなる。
通り魔が残った右目を子供たちに向けたまま一歩ふみ出そうとする。
体重が浮いて投げ技をかけやすい状態になった。
斬られた右足を軸足にしたら俺がつぶれてしまう。
左足を軸足にして、右足で柔術の外掛けを放つ。
幸い斬られたのは左肩から背中、右手は全力をだせる。
柔道のように対戦相手をかばうのではなく、殺すつもりで外掛けを放つ。
右手を通り魔の顔にかけて、頭をアスファルトの道に叩きつける!
夏休みの海水浴でスイカを叩きつぶしたのと同じ音がした。
腹に刺さっていた剣鉈がズルズルと抜ける感覚がある。
顔から血の気が引いて行く感覚がある、もう時間がない。
確実に殺さないと、どこかで子供が殺される。
剣鉈を奪っている時間はない。
踏む、想いっきり通り魔の喉を右足で踏む!
めまいがする、もうダメだ、もう1度脚を上げたら倒れる。
このまま全体重をかけて通り魔の喉を踏みつぶす!
もう誰も傷つけられないように、子供たちが殺されないように……
「わぁあああああん!」
「雄太君、愛子ちゃん!」
目の前で幼稚園児たちが襲われている!
保母さんであろうきれいな女の人が必死で園児たちをかばっている。
春先で薄着だったのか、刃物を防いだ両腕が血まみれだ!
知らぬ間に通り魔の目の前にいた。
何も考えずに駆けつけていた。
右の拳に痛みと重みを感じたとたん、通り魔が吹き飛んでいた。
何も考えなくても戦えるのは、幼い頃から武道を学んだお陰だ。
両親やお世話になった人たちに叩き込まれた良識のお陰だ。
ここで死ぬことになっても、天国の両親に胸を張って会える。
右脚に衝撃を感じた。
通り魔が倒れたまま左手に持った剣鉈を叩きつけたのか?
守れない、脚をケガした状態では子供たちを守れない!
「死ね!」
無意識で助けたから後が続かない、立ち上がった通り魔が襲ってくる。
避けないと、どこを斬られて子供たちを守れなくなる。
だけど、逃げ続けても出血多量で子供たちを守れなくなる。
通り魔の目は、人殺しが楽しくてしかたがないと言っている。
俺がここで殺されてしまったら、子供たちを守る者がいなくなる。
警察や勇気ある人が駆け付けて来るまでに、何人の子供が殺される?!
「ぎゃあああああ!」
気が付くと右手中指に違和感がある。
クロスカウンターを入れる形で、通り魔に目つぶしをしていた。
反復練習のお陰だろう、無意識に反撃していた。
が、通り魔が全くひるまない、むしろ楽しそうな表情をしている。
左目はつぶしたが、残った右目に増悪を宿してにらみつけてくる。
通り魔が両手に持った剣鉈、左手は防いだが右手が残っている
剣鉈を生身の左腕で受ける訳にはいかない。
右足を踏ん張って左足を出し、近づいて通り魔の右腕に俺の左手を当てる。
それで剣鉈の攻撃を防ぎたかったが、斬られた右足が踏ん張れない。
できるだけ左手を伸ばして防ぐ。
少しは勢いを殺せたが、完全には殺しきれなかった。
左肩から背中にかけて衝撃がはしる。
極度に興奮しているのか痛みを感じないが、確実に傷を受けた。
両手に剣鉈を持つ狂人と徒手空拳で戦うなんて、不利過ぎる。
まだ子供たちが逃げられずにいる、ここで殺される訳ないはいかない!
「きゃははははは、しね、しね、しね、死ね!」
通り魔の残った右目に殺人の快楽が見える。
何としてもここで通り魔を殺さないといけない。
14歳の短い人生になったとしても、ここで殺さないといけない。
生きたまま取り押さえても、必ずまた誰かを殺そうとする。
つい先日も、保護観察処分で自由になった奴が再び子供を殺していた。
殺人犯の烙印を押されても、俺がここで通り魔を殺さないといけない。
俺がためらったら、何の罪もない子供が殺される!
今からは自分の意志で戦う、子供たちのために戦う!
通り魔が左手で振り回す剣鉈を右腕で止める。
同時に左手で通り魔の右目をつぶす!
殺すと決意したはずなのに、無意識に殺さない方法を探してしまった。
両眼をつぶしたら、もう誰も殺せなくなると思ってしまった。
そのためらいが、ほんの少しの遅れになってしまったのか?
殺す事が楽しい通り魔の、ためらいのない攻撃の方が早かったからか?
素手の俺と、剣鉈を持つ通り魔のリーチの差だったのか?
ドン、という衝撃が腹にきた。
通り魔の右目が、楽しくてしょうがないという想いを浮かべている。
見なくても分かる、剣鉈が腹に突き刺さっているのだろう。
即死しなかったが、剣鉈を抜かれたら大量出血で5分と生きていられない。
それどころか急性貧血で子供たちを守れなくなる。
一瞬のためらいが、人を殺す事を恐れたせいで、子供たちが殺される?
「うへへへへへ」
通り魔が舌なめずりをした。
俺から外した視線が、逃げ遅れた子供たちに向けられている!
何としても通り魔を殺さないといけない!
どうする、どうやったら最短で殺せる?
何をしても腹に刺さった剣鉈が抜けるから、1分で殺さないといけない。
この状態で確実に通り魔の首の骨が折れるか?
喉をつぶして窒息死させられるか?
通り魔の剣鉈を奪って斬り殺す事ができるか?
通り魔の意識が俺でなく子供たちに向かっている。
俺をよりも子供たちを殺す方が楽しいのだろう。
もう時間がない、通り魔が俺の腹に刺した剣鉈を抜いたらもう助けられなくなる。
通り魔が残った右目を子供たちに向けたまま一歩ふみ出そうとする。
体重が浮いて投げ技をかけやすい状態になった。
斬られた右足を軸足にしたら俺がつぶれてしまう。
左足を軸足にして、右足で柔術の外掛けを放つ。
幸い斬られたのは左肩から背中、右手は全力をだせる。
柔道のように対戦相手をかばうのではなく、殺すつもりで外掛けを放つ。
右手を通り魔の顔にかけて、頭をアスファルトの道に叩きつける!
夏休みの海水浴でスイカを叩きつぶしたのと同じ音がした。
腹に刺さっていた剣鉈がズルズルと抜ける感覚がある。
顔から血の気が引いて行く感覚がある、もう時間がない。
確実に殺さないと、どこかで子供が殺される。
剣鉈を奪っている時間はない。
踏む、想いっきり通り魔の喉を右足で踏む!
めまいがする、もうダメだ、もう1度脚を上げたら倒れる。
このまま全体重をかけて通り魔の喉を踏みつぶす!
もう誰も傷つけられないように、子供たちが殺されないように……
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