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第一章
第5話:断交・王太子視点
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「ダナーン公爵閣下が眼を潰されました、聖女神殿に無礼を働いたようです」
「使者が聖女神殿に入れません、結界が張られています」
「南の国境から魔獣の群れが侵入しました、至急援軍をお願いしたします」
「バサク伯爵領が魔獣に蹂躙されております、至急援軍を願います」
「東部の王家領で蝗害が発生したしました、至急聖女神殿に浄化を願います」
頻々と危急を知らせる伝令が各地から送られてくる。
もうこの国はお終いだ、魔獣の跳梁跋扈に対抗する術などない。
少なくとも王家が滅ぶまで、聖女神殿が助けてくれることはないだろう。
だから私は何度も陛下に諫言したのだ「聖女神殿を無碍に扱うな」と!
言わんこっちゃない、既に陛下の愚行は国中に広まっている。
本来なら王家の悪口など耳に入らないはずの、王太子の私にまで悪口雑言の数々が耳に入ってくるのだ。
「余は与り知らぬことだ、全てはダナーン公爵が勝手にやった事だ。
公爵の首を刎ね、公爵一族を皆殺しにして、公爵家を取り潰せ。
取り潰した公爵領を神殿領とする事で話をつけてこい」
本当に愚かだ、これが自分の実の父親だと思うと、情けなくて泣けてくる。
あまりにも馬鹿過ぎて、もう諫言する気にもならない。
王家が利を得るために、全部承知の上で、ダナーン公爵の暴走を見て見ぬフリしていたのを、神が選ばれた聖女が見抜いていないと思える愚かさが羨ましい。
俺もそれくらい愚かで身勝手だったら、こんなにも胸が痛む事はないだろうに。
「本気で聖女神殿に詫びを入れると言われるのなら、陛下が土下座されよ。
全てが陛下の策謀であった事、三歳の子供でも知っている。
このような恥知らずな使者になどにたっては、騎士の名誉を損なう。
いや、これ以上この国に仕えるのは男の尊厳を損なう。
騎士位は返上させてもらう!」
これで何人目だろう、もう数も覚えられないくらいの騎士が王家を見捨てた。
貴族達も独自の同盟を作って、陛下の命令に全く従わない。
それも当然だろう、陛下は貴族領に魔獣が出ても全く援軍を送らず、逆に魔獣に困っている貴族に援軍を出せと命じる身勝手を繰り返したのだから。
もう魔獣と蝗害と冷害が襲った王家直轄領からの年貢は期待できない。
もし無理矢理税をとろうとしたら、一揆が起きるだろう。
「ビリーブ、お前は王太子であろう、こんな時こそ国のために働け。
聖女神殿は不遜にも王家に詫びろと言っているが、国王である余が謝るわけにはいかんから、今回の件の当事者であるお前が詫びてこい。
全てはお前の婚約者問題から始まっているのだからな」
私は、いや、俺は、もう、耐えられん!
「使者が聖女神殿に入れません、結界が張られています」
「南の国境から魔獣の群れが侵入しました、至急援軍をお願いしたします」
「バサク伯爵領が魔獣に蹂躙されております、至急援軍を願います」
「東部の王家領で蝗害が発生したしました、至急聖女神殿に浄化を願います」
頻々と危急を知らせる伝令が各地から送られてくる。
もうこの国はお終いだ、魔獣の跳梁跋扈に対抗する術などない。
少なくとも王家が滅ぶまで、聖女神殿が助けてくれることはないだろう。
だから私は何度も陛下に諫言したのだ「聖女神殿を無碍に扱うな」と!
言わんこっちゃない、既に陛下の愚行は国中に広まっている。
本来なら王家の悪口など耳に入らないはずの、王太子の私にまで悪口雑言の数々が耳に入ってくるのだ。
「余は与り知らぬことだ、全てはダナーン公爵が勝手にやった事だ。
公爵の首を刎ね、公爵一族を皆殺しにして、公爵家を取り潰せ。
取り潰した公爵領を神殿領とする事で話をつけてこい」
本当に愚かだ、これが自分の実の父親だと思うと、情けなくて泣けてくる。
あまりにも馬鹿過ぎて、もう諫言する気にもならない。
王家が利を得るために、全部承知の上で、ダナーン公爵の暴走を見て見ぬフリしていたのを、神が選ばれた聖女が見抜いていないと思える愚かさが羨ましい。
俺もそれくらい愚かで身勝手だったら、こんなにも胸が痛む事はないだろうに。
「本気で聖女神殿に詫びを入れると言われるのなら、陛下が土下座されよ。
全てが陛下の策謀であった事、三歳の子供でも知っている。
このような恥知らずな使者になどにたっては、騎士の名誉を損なう。
いや、これ以上この国に仕えるのは男の尊厳を損なう。
騎士位は返上させてもらう!」
これで何人目だろう、もう数も覚えられないくらいの騎士が王家を見捨てた。
貴族達も独自の同盟を作って、陛下の命令に全く従わない。
それも当然だろう、陛下は貴族領に魔獣が出ても全く援軍を送らず、逆に魔獣に困っている貴族に援軍を出せと命じる身勝手を繰り返したのだから。
もう魔獣と蝗害と冷害が襲った王家直轄領からの年貢は期待できない。
もし無理矢理税をとろうとしたら、一揆が起きるだろう。
「ビリーブ、お前は王太子であろう、こんな時こそ国のために働け。
聖女神殿は不遜にも王家に詫びろと言っているが、国王である余が謝るわけにはいかんから、今回の件の当事者であるお前が詫びてこい。
全てはお前の婚約者問題から始まっているのだからな」
私は、いや、俺は、もう、耐えられん!
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