上 下
5 / 10
第一章

第4話:狂竜

しおりを挟む
 まだ誰一人最後までたどり着けていない、底の知れない大ダンジョン。
 途中にいると言われる狂竜が現れたのは百年ぶり。
 狂竜に生贄を捧げなければ一階層に降りる事もかなわない。
 真ん中にある巨大な大穴に飛び込んだのはいいですが、どのようなモンスターに喰い殺されることになるのでしょうか。

「クックックック、奈落に飛び込むとはなかなか威勢がいいではないか。
 それとも醜い人間の争いで放り込まれたのかな。
 まあ、よい、余にはどうでもいいことだ。
 これから百年、余の無聊を慰めてもらおうか」

 モンスターに食べられることなく、いきなり狂竜に出会えたようです。
 それとも、狂竜ではなくその手先なのでしょうか。

「貴男は狂竜なのですか」

「ふん、醜い人間共が余を何と読んでいるかなど興味はない」

「それは申し訳ありません。
 では質問のを変えさせていただきます。
 貴男はこのドラゴンダンジョンの主なのですか」

「ふん、人間がここを何と呼んでいるかなど余が知るものか。
 だが、聞きたいことは分かったぞ。
 確かに余がこの奈落の主である。
 余こそ奈落に住む全ても生き物を統べる大王である」

「お初にお目にかかります、大王陛下。
 わたくしはクレイヴン公爵家の令嬢、ベアトリクス・パジェット・ハーヴェイ・クレイヴンと申します。
 以後お見知りおき願います。
 陛下の御慧眼の通り、人間界の争いにより、陛下の生贄に捧げられました。
 できましたら陛下の温情をお願いしたいのですが、宜しいでしょうか」

「温情だと、命を助けてくれ、元の世界に戻してくれなどという願いは聞けんぞ。
 遥か古からの盟約で、百年に一度余に花嫁を送るという条件で、人間などという醜い生き物が奈落に入る事を許しておるのだ。
 人間が古からの盟約を反故にするというのなら、余も人間との盟約を守らず、人間を喰らい人間の世を餌場とする。
 それでもよいのだなな」

 それはさすがに困りますね。
 自分が生き延びたい気持ちは強いですが、その為に全ての人間を犠牲にはできませんし、そもそも元の世界に戻ったら私も食べられてしまいます。

「いえ、そのような事は望んでいません。
 私がお願いしたいのは、私を陥れた者達に対する復讐でございます。
 陛下の花嫁がどのような立場に成るのかは存じませんが、陛下の花嫁を陥れた者に対して、罰を与えてもらえないでしょうか。
 それとも花嫁とは、単に陛下に食べられるだけの者を指しているのでしょうか」

「バカめ、先程の話をもう忘れたのか。
 それとも簡単な言葉も理解できぬバカか。
 お前を食べてしまっては百年間暇すぎるではないか」

 ほんと、腹の立つ言い方をする奴ですね。

「では、百年間生きることになるのですね。
 それは理解できました。
 それで、花嫁を陥れた人間を復讐してくれるのですか、してくれないのですか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【完結】二度目の人生に貴方は要らない

miniko
恋愛
成金子爵家の令嬢だった私は、問題のある侯爵家の嫡男と、無理矢理婚約させられた。 その後、結婚するも、夫は本邸に愛人を連れ込み、私は別邸でひっそりと暮らす事に。 結婚から約4年後。 数える程しか会ったことの無い夫に、婚姻無効の手続きをしたと手紙で伝えた。 すると、別邸に押しかけて来た夫と口論になり、階段から突き落とされてしまう。 ああ、死んだ・・・と思ったのも束の間。 目を覚ますと、子爵家の自室のベッドの上。 鏡を覗けば、少し幼い自分の姿。 なんと、夫と婚約をさせられる一ヵ月前まで時間が巻き戻ったのだ。 私は今度こそ、自分を殺したダメ男との結婚を回避しようと決意する。 ※架空の国のお話なので、実在する国の文化とは異なります。 ※感想欄は、ネタバレあり/なし の区分けをしておりません。ご了承下さい。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

私の名前を呼ぶ貴方

豆狸
恋愛
婚約解消を申し出たら、セパラシオン様は最後に私の名前を呼んで別れを告げてくださるでしょうか。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

処理中です...