四代目 豊臣秀勝

克全

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外伝

後継者一

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「皆よく聞いておいて欲しい」
「「「「「はい」」」」」
 俺の前には、岩と楓の正室二人と、主だった家臣が序列に従って控えている。
 殿下の考えはともかく、家中の意志は統一しておかなければならない。
 家督の継承順位だけは、殿下の介入を許す訳にはいかない。
 色々な本を読んだり、古老の話を聞いたりしたが、家を滅ぼす最大の原因は家督争いだ。
 豊臣家と羽柴家が滅ぶ事はあっても、木下家だけは絶対に引き継がなければならない。
「木下家の後継者を亀千代とする」
「そんな、それでは約束が違います」
「いいのです。楓様」
「いいえ、よくありません、岩様。私は側室という約束で側に置いて頂いたのです。それなのに、岩様を差し置いて、私の子供を木下家の後継者にするなど、絶対に許される事ではありません」
「まあ待て、私の話を最後まで聞くのだ」
「はい」
 私の真剣な話を聞いて、楓は勿論、後ろで不服そうにしていた家臣達もある程度納得しているようだ。
「だからと言って、これから岩に生まれる子供達を蔑ろにする心算もない」
「ではどうなされるのですか」
 勝気な楓は、自分が口にした言葉に責任を持ちたいのだろう。
岩は勿論、これから岩に生まれるであろう、子供達の事が心配なようだ。
「木下家は、長幼之序に従って継承させる。これは先ほども言ったように、家を滅ぼさないための家訓とするから、絶対に従うように。よいか」
「「「「「は」」」」」
「だが、楓には儂と岩にした約束がある。だがそれは、儂が部屋住みで僅かな兵しか持たない時だ」
「しかしその時には、大納言様は既に但馬の国主であられました」
「確かに但馬の旗頭ではあったが、但馬国内には多くの与力衆がいた」
「しかし」
「まあ聞け、楓」
「はい」
「だから、父上の羽柴家は岩の子供に継がせる」
「「殿」」
「羽柴家は木下家とは別だ。父上に儂以外の男子がいない以上、いずれは儂の子供の誰かが引き継ぐことになる」
「・・・・・」
「先程言った長幼之序に従うのなら、鶴千代が継承するべきなのだろう。だが羽柴家は別の家として、岩の子供が継承する事とする」
「殿、一つ宜しいですか」
「何だ、与右衛門」
「大殿に男子が御生まれになり、その方に羽柴家を継がすと申された時はどうなされますか」
「木下家を二つに割り、羽柴家の所領と同じ四十一万石を岩の子供のモノとする」
「しかしながら殿、豊臣家の事はどうなされるのですか」
「豊臣家は殿下の家じゃ、殿下の御子が継がれるべきもので、儂が口出す事ではない」
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