四代目 豊臣秀勝

克全

文字の大きさ
上 下
99 / 103
第二章

後始末

しおりを挟む
 与一郎が急ぎ甲冑を身に付け、本丸城門に駆け付けた時には、既に蜂須賀正勝が各城門を押さえていた。
「与一郎殿、これが殿下と将監殿の首だ」
「義親父殿。親父殿は知っておられたのか」
「話は後だ。先ずは火の手を消さねばならぬ」
「確かに」
 聚楽第の本丸は、紅蓮の炎に包まれていた。
 木下将監が、秀吉の愚行を隠すために、多くの遺体が残る持仏堂に油を撒いて火を放っていたのだ。
「殿。小六様。ここは我らに任されて、大阪城に本陣を移されてください」
「うむ。後は頼んだぞ」
 事前に打ち合わせしていた蜂須賀正勝と藤堂高虎は、出来るだけ早く与一郎に天下を掌握させようとしていた。
 そこで羽柴秀長・三好秀次・三好秀勝・宇喜多秀家といった、有力な親族衆と共に豊臣家の本拠地を押さえることにしたのだ。
 死んだ木下将監が、その時の状況に応じて改良を加えつつ、長年に渡って事前に準備していた謀叛なので、他の者が付け入る隙はなかった。
 秀吉と茶々の間に子供が生まれる前であったから、与一郎が豊臣家の後継者である事は、誰の眼にも明らかだった。
 少々問題があるとしたら、秀吉を殺したのが、与一郎の傅役・木下将監だと言う事だが、秀吉が木下将監に酷い扱いをしていたのは、全ての大名が知っていたので、与一郎を表だって批判する者はいなかった。
 三好秀次が優秀で野心家だったら、豊臣家を割っていたかもしれないが、秀次は平凡でお人好しな人間だったので、与一郎から天下を奪おうなどとは夢にも思ってなかった。
 三好秀勝は欲深い人間だったが、羽柴家の血縁でなければ一生足軽で終わるような凡庸な人間だったので、誰も秀勝を担いで与一郎に逆らおうとはしなかった。
 秀吉の敵を取った与一郎が、次の天下人となった。
 惚けた秀吉が後陽成天皇と約束していた、智仁王に豊臣家を譲り、関白職に就いてもらうと言う大問題に取り組んだ。
 結局、もう一つの摂家・松殿家を一万石の領地を与えて復活させ、智仁王に関白職を譲ることになった。
 智仁王は、松殿友輔豊臣朝臣秀勝を名乗った。
 四代目の秀勝が誕生した。
 与一郎自身は豊臣本家を継ぎ、太政大臣として朝廷と武家を支配した。
 後北条家が秀吉の死んだ混乱に乗じて、総無事令を破って佐竹や結城家に攻め込んだ。
 伊達政宗も東国で暴れ回った。
 与一郎は無駄な戦を嫌い、長年の戦乱で荒れ果てた田畑の再生に力を入れたかったが、仕方なく大軍を率いて関東東国に攻め込み、後北条と伊達を含む多くの大名国衆を滅ぼした。
 秀吉の直轄領と自身の領地をあわせ、強大な豊臣家を創り出した。
 父親の領地と、滅ぼした後北条や伊達の領地から、四つの清華分家(羽柴家・木下家・関家・杉原家)を創り出し、四天王家とした。
摂家 :近衛・九条・二条・一条・鷹司・豊臣・松殿
清華家:三条・西園寺・徳大寺・久我・花山院・大炊御門・今出川・羽柴家・木下家・関家・杉原家
大臣家:正親町三条・三条西・中院
 ただ、武家が朝廷の官職を独占すると、公家が官職を得られないと言う弊害があったので、公卿官職と武家官職を分ける措置が取られた。
 日本の戦国を終わらせた与一郎は、武装商人となった大名国衆を差配して、世界に討って出たのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

和ませ屋仇討ち始末

志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。 門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。 久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。 父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。 「目に焼き付けてください」 久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。 新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。 「江戸に向かいます」 同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。 父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。 他サイトでも掲載しています 表紙は写真ACより引用しています R15は保険です

武田義信は謀略で天下取りを始めるようです ~信玄「今川攻めを命じたはずの義信が、勝手に徳川を攻めてるんだが???」~

田島はる
歴史・時代
桶狭間の戦いで今川義元が戦死すると、武田家は外交方針の転換を余儀なくされた。 今川との婚姻を破棄して駿河侵攻を主張する信玄に、義信は待ったをかけた。 義信「此度の侵攻、それがしにお任せください!」 領地を貰うとすぐさま侵攻を始める義信。しかし、信玄の思惑とは別に義信が攻めたのは徳川領、三河だった。 信玄「ちょっ、なにやってるの!?!?!?」 信玄の意に反して、突如始まった対徳川戦。義信は持ち前の奇策と野蛮さで織田・徳川の討伐に乗り出すのだった。 かくして、武田義信の敵討ちが幕を開けるのだった。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

天竜川で逢いましょう 起きたら関ヶ原の戦い直前の石田三成になっていた 。そもそも現代人が生首とか無理なので平和な世の中を作ろうと思います。

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!?

正しい歴史への直し方 =吾まだ死せず・改= ※現在、10万文字目指し増補改訂作業中!

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
二度の世界大戦を無事戦勝国として過ごすことに成功した大日本帝国。同盟国であるはずのドイツ第三帝国が敗北していることを考えたらそのさじ加減は奇跡的といえた。後に行われた国際裁判において白人種が今でも「復讐裁判」となじるそれは、その実白人種のみが断罪されたわけではないのだが、白人種に下った有罪判決が大多数に上ったことからそうなじる者が多いのだろう。だが、それはクリストバル・コロンからの歴史的経緯を考えれば自業自得といえた。 昭和十九年四月二日。ある人物が連合艦隊司令長官に着任した。その人物は、時の皇帝の弟であり、階級だけを見れば抜擢人事であったのだが誰も異を唱えることはなく、むしろその采配に感嘆の声をもらした。 その人物の名は宣仁、高松宮という雅号で知られる彼は皇室が最終兵器としてとっておいたといっても過言ではない秘蔵の人物であった。着任前の階級こそ大佐であったが、事実上の日本のトップ2である。誰が反対できようものか。 そして、まもなく史実は回天する。悪のはびこり今なお不正が当たり前のようにまかり通る一人種や少数の金持ちによる腐敗の世ではなく、神聖不可侵である善君達が差配しながらも、なお公平公正である、善が悪と罵られない、誰もに報いがある清く正しく美しい理想郷へと。 そう、すなわちアメリカ合衆国という傲慢不遜にして善を僭称する古今未曾有の悪徳企業ではなく、神聖不可侵な皇室を主軸に回る、正義そのものを体現しつつも奥ゆかしくそれを主張しない大日本帝国という国家が勝った世界へと。 ……少々前説が過ぎたが、本作品ではそこに至るまでの、すなわち大日本帝国がいかにして勝利したかを記したいと思う。 それでは。 とざいとーざい、語り手はそれがし、神前成潔、底本は大東亜戦記。 どなた様も何卒、ご堪能あれー…… ああ、草々。累計ポイントがそろそろ10万を突破するので、それを記念して一度大規模な増補改訂を予定しております。やっぱり、今のままでは文字数が余り多くはありませんし、第一書籍化する際には華の十万文字は越える必要があるようですからね。その際、此方にかぶせる形で公開するか別個枠を作って「改二」として公開するか、それとも同人誌などの自費出版という形で発表するかは、まだ未定では御座いますが。 なお、その際に「完結」を外すかどうかも、まだ未定で御座います。未定だらけながら、「このままでは突破は難しいか」と思っていた数字が見えてきたので、一度きちんと構えを作り直す必要があると思い、記載致しました。 →ひとまず、「改二」としてカクヨムに公開。向こうで試し刷りをしつつ、此方も近いうちに改訂を考えておきます。

マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと
歴史・時代
1600年9月 後に天下人となる予定だった徳川家康は焦っていた。 ーーこんなはずちゃうやろ? それもそのはず、ある人物が生きていたことで時代は大きく変わるのであった。 果たして、この世界でも家康の天下となるのか!?  そして、豊臣家は生き残ることができるのか!?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

処理中です...