四代目 豊臣秀勝

克全

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第二章

後始末

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 与一郎が急ぎ甲冑を身に付け、本丸城門に駆け付けた時には、既に蜂須賀正勝が各城門を押さえていた。
「与一郎殿、これが殿下と将監殿の首だ」
「義親父殿。親父殿は知っておられたのか」
「話は後だ。先ずは火の手を消さねばならぬ」
「確かに」
 聚楽第の本丸は、紅蓮の炎に包まれていた。
 木下将監が、秀吉の愚行を隠すために、多くの遺体が残る持仏堂に油を撒いて火を放っていたのだ。
「殿。小六様。ここは我らに任されて、大阪城に本陣を移されてください」
「うむ。後は頼んだぞ」
 事前に打ち合わせしていた蜂須賀正勝と藤堂高虎は、出来るだけ早く与一郎に天下を掌握させようとしていた。
 そこで羽柴秀長・三好秀次・三好秀勝・宇喜多秀家といった、有力な親族衆と共に豊臣家の本拠地を押さえることにしたのだ。
 死んだ木下将監が、その時の状況に応じて改良を加えつつ、長年に渡って事前に準備していた謀叛なので、他の者が付け入る隙はなかった。
 秀吉と茶々の間に子供が生まれる前であったから、与一郎が豊臣家の後継者である事は、誰の眼にも明らかだった。
 少々問題があるとしたら、秀吉を殺したのが、与一郎の傅役・木下将監だと言う事だが、秀吉が木下将監に酷い扱いをしていたのは、全ての大名が知っていたので、与一郎を表だって批判する者はいなかった。
 三好秀次が優秀で野心家だったら、豊臣家を割っていたかもしれないが、秀次は平凡でお人好しな人間だったので、与一郎から天下を奪おうなどとは夢にも思ってなかった。
 三好秀勝は欲深い人間だったが、羽柴家の血縁でなければ一生足軽で終わるような凡庸な人間だったので、誰も秀勝を担いで与一郎に逆らおうとはしなかった。
 秀吉の敵を取った与一郎が、次の天下人となった。
 惚けた秀吉が後陽成天皇と約束していた、智仁王に豊臣家を譲り、関白職に就いてもらうと言う大問題に取り組んだ。
 結局、もう一つの摂家・松殿家を一万石の領地を与えて復活させ、智仁王に関白職を譲ることになった。
 智仁王は、松殿友輔豊臣朝臣秀勝を名乗った。
 四代目の秀勝が誕生した。
 与一郎自身は豊臣本家を継ぎ、太政大臣として朝廷と武家を支配した。
 後北条家が秀吉の死んだ混乱に乗じて、総無事令を破って佐竹や結城家に攻め込んだ。
 伊達政宗も東国で暴れ回った。
 与一郎は無駄な戦を嫌い、長年の戦乱で荒れ果てた田畑の再生に力を入れたかったが、仕方なく大軍を率いて関東東国に攻め込み、後北条と伊達を含む多くの大名国衆を滅ぼした。
 秀吉の直轄領と自身の領地をあわせ、強大な豊臣家を創り出した。
 父親の領地と、滅ぼした後北条や伊達の領地から、四つの清華分家(羽柴家・木下家・関家・杉原家)を創り出し、四天王家とした。
摂家 :近衛・九条・二条・一条・鷹司・豊臣・松殿
清華家:三条・西園寺・徳大寺・久我・花山院・大炊御門・今出川・羽柴家・木下家・関家・杉原家
大臣家:正親町三条・三条西・中院
 ただ、武家が朝廷の官職を独占すると、公家が官職を得られないと言う弊害があったので、公卿官職と武家官職を分ける措置が取られた。
 日本の戦国を終わらせた与一郎は、武装商人となった大名国衆を差配して、世界に討って出たのだった。
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