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第二章
出浦上総守盛清
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「すまないな。上総守」
「金を貰った以上、約束した仕事はやり遂げる。それが俺の流儀だ」
「では、案内を頼む」
「付いてきてくれ」
幸いな事と言うべきか、それとも秀吉の油断と言うべきか。
与一郎の屋敷は、秀吉の住む本丸の直ぐ外、二ノ丸内の最も重要な場所にあった。
与一郎の家臣である将監も、その屋敷内で暮らしている。
だから、本丸を守る門番を排除すれば、直ぐに秀吉の居住区に押し入る事が出来た。
だが騒ぎが大きくなると、与一郎と親しい人間が、何も知らずに秀吉を助けにやってくるかもしれない。
例え与一郎の友人であろうと、秀吉を殺す邪魔をするのなら、殺してでも排除する覚悟をしていたが、出来る事なら少しでも巻き添えは少なくしたかった。
そこで大金を払って雇ったのが、出浦盛清だった。
木下忍軍に参加し、めきめきと頭角を現した出浦盛清だったが、その身体には道々の者の自由な血が脈々と流れていた。
家臣として主人に仕える忠義と、土豪として主人よりも領地の維持を優先する心もあるが、忍者として約束を守る信義が一番強かった。
木下将監から、豊臣秀吉殺害の協力を頼まれた時、面白いと心が躍ってしまったのだ。
その面白さを優先し、配下の中でも荒事が得意な忍者と侵入が得意な忍者を、後北条担当から外して畿内の送り、秀吉の身辺を探らせていたのだ。
「与一郎様から殿下に火急の知らせだ、ここを通らせてもらう」
「駄目でございます」
「何故だ、小一郎殿から北条が動くと言う知らせが来たのだ。直接殿下に知らせねばならぬ、重大な機密があるのだ」
「将監様、本当に駄目なのでございます。殿下から、例え相手が与一郎様であろうと、本丸には誰一人入れてはならないと、厳命されているのです」
「仕方あるまい。許せよ」
将監の言葉と共に、出浦盛清が暗器を振るい、一言の悲鳴を上げさせる事なく、門番を殺した。
将監は直ぐに隠れていた将兵に合図を送り、軍勢を引き連れて本丸に押し入る判断を下した。
それでも、二ノ丸に屋敷を持つ他の大名衆に気付かれないように、出来るだけ音を立てないように本丸に攻め込んだ。
そこに事前に本丸に忍び込んでいた出浦盛清の配下が現れ、秀吉と茶々が参籠を行っている持仏堂にまで、将監達軍勢を案内してくれた。
将監達が押し入った持仏堂には、秀吉と茶々だけではなく、百人を超える男女がいた。
全員が全裸でむつみ合う姿は、この世のモノとは思えない、淫靡な中にも真剣な願いが伺える不思議な情景だった。
「殺せ。ここにいる犬畜生を皆殺しにしろ」
秀吉は秘薬の影響で恍惚の表情を浮かべ、何人もの奥女中とむつみ合っていた。
将監が秀吉を見間違えるはずはないが、念の為に指が六本ある事を確かめ、自らの手で首を刎ねた。
茶々も恍惚の表情を浮かべて、陰陽師・神官・僧侶など六人とむつみ合っている。
秀吉が殺された事にも気が付かず、獣のようにひたすら男を求めていた。
将監は何も言わず、他の男共々首を刎ねた。
「金を貰った以上、約束した仕事はやり遂げる。それが俺の流儀だ」
「では、案内を頼む」
「付いてきてくれ」
幸いな事と言うべきか、それとも秀吉の油断と言うべきか。
与一郎の屋敷は、秀吉の住む本丸の直ぐ外、二ノ丸内の最も重要な場所にあった。
与一郎の家臣である将監も、その屋敷内で暮らしている。
だから、本丸を守る門番を排除すれば、直ぐに秀吉の居住区に押し入る事が出来た。
だが騒ぎが大きくなると、与一郎と親しい人間が、何も知らずに秀吉を助けにやってくるかもしれない。
例え与一郎の友人であろうと、秀吉を殺す邪魔をするのなら、殺してでも排除する覚悟をしていたが、出来る事なら少しでも巻き添えは少なくしたかった。
そこで大金を払って雇ったのが、出浦盛清だった。
木下忍軍に参加し、めきめきと頭角を現した出浦盛清だったが、その身体には道々の者の自由な血が脈々と流れていた。
家臣として主人に仕える忠義と、土豪として主人よりも領地の維持を優先する心もあるが、忍者として約束を守る信義が一番強かった。
木下将監から、豊臣秀吉殺害の協力を頼まれた時、面白いと心が躍ってしまったのだ。
その面白さを優先し、配下の中でも荒事が得意な忍者と侵入が得意な忍者を、後北条担当から外して畿内の送り、秀吉の身辺を探らせていたのだ。
「与一郎様から殿下に火急の知らせだ、ここを通らせてもらう」
「駄目でございます」
「何故だ、小一郎殿から北条が動くと言う知らせが来たのだ。直接殿下に知らせねばならぬ、重大な機密があるのだ」
「将監様、本当に駄目なのでございます。殿下から、例え相手が与一郎様であろうと、本丸には誰一人入れてはならないと、厳命されているのです」
「仕方あるまい。許せよ」
将監の言葉と共に、出浦盛清が暗器を振るい、一言の悲鳴を上げさせる事なく、門番を殺した。
将監は直ぐに隠れていた将兵に合図を送り、軍勢を引き連れて本丸に押し入る判断を下した。
それでも、二ノ丸に屋敷を持つ他の大名衆に気付かれないように、出来るだけ音を立てないように本丸に攻め込んだ。
そこに事前に本丸に忍び込んでいた出浦盛清の配下が現れ、秀吉と茶々が参籠を行っている持仏堂にまで、将監達軍勢を案内してくれた。
将監達が押し入った持仏堂には、秀吉と茶々だけではなく、百人を超える男女がいた。
全員が全裸でむつみ合う姿は、この世のモノとは思えない、淫靡な中にも真剣な願いが伺える不思議な情景だった。
「殺せ。ここにいる犬畜生を皆殺しにしろ」
秀吉は秘薬の影響で恍惚の表情を浮かべ、何人もの奥女中とむつみ合っていた。
将監が秀吉を見間違えるはずはないが、念の為に指が六本ある事を確かめ、自らの手で首を刎ねた。
茶々も恍惚の表情を浮かべて、陰陽師・神官・僧侶など六人とむつみ合っている。
秀吉が殺された事にも気が付かず、獣のようにひたすら男を求めていた。
将監は何も言わず、他の男共々首を刎ねた。
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