91 / 103
第二章
伴天連追放令
しおりを挟む
「ところで与一郎、伴天連が日本人を奴隷にして、海外に連れ去っていると言うのは本当か」
「本当でございます」
「止めさせる事は出来るか」
「羽柴家も戦で捕虜にした者を奴隷としております。それを伴天連だけ禁止するのは、公平とは言えません」
「我らが戦で捕まえた者を奴隷にするのは、人死にを少なくするためだ」
「その通りではありますが、伴天連が不公平だと騒ぎ、天下の政に信者が不満を持つように仕向けるでしょう」
「伴天連が日本人を連れ去るのを止めさせるには、我らも奴隷を解放せねばならぬのだな」
「はい。六宮を猶子に迎えるにあたり、日本から奴隷をなくすことにしましょう。羽柴家が率先して行えば、今迄の犠牲者を助ける事は出来なくても、これから連れ去られる者はいなくなります」
秀吉は与一郎の意見を聞いたうえで、イエズス会準管区長のガスパール・コエリョを呼び出して詰問した。
だがコエリョは素直に謝らず抗弁した。
いや、強弁したと言うほどだった。
しかも、小型だが最新鋭の軍船・フスタ船に大砲を三門積み込み、大阪城を威嚇する暴挙に出てしまった。
激怒した秀吉は、伴天連を日本から追放すると宣言した。
同時にフスタ船を拿捕するように海賊衆に命じたが、搭載されている大砲の威力と帆走能力が和船を凌駕しており、全く歯が立たなかった。
そこで秀吉はコエリョを人質として、降伏しなければコエリョをはじめ、日本にいる伴天連全員を死刑にすると、フスタ船の船長を脅迫した。
三日間に渡って激しい交渉が行われたが、拷問寸前にまで追い込まれたコエリョに懇願で、船長も遂に折れてフスタ船を秀吉に引き渡した。
だがこのコエリョの行動が、日本の未来を大きく変えた。
一向衆や叡山の僧兵など、現生利益の為に武装して天下を騒がせた宗教家に辟易していた大名国衆は、伴天連も同じだと気が付いたのだ。
一部の愚か者は、この後も伴天連の教えを妄信したが、秀吉は段階的にキリシタンの力を奪う事にした。
伴天連の教えに騙されているキリシタンは後回しにして、元凶である伴天連を追放するように、日本中の大名国衆に命じたのだ。
同時に海賊衆が小型の南蛮船すら拿捕出来なかった事と、南蛮船の大砲に大阪城が無抵抗である事に危機感を感じたのだ。
そこで船大工に、フスタ船と同型船の量産と、フスタ船を強化発展大型化させた、日本独自の軍艦を研究開発するように命じた。
勿論、堺や国友村の鉄砲鍛冶達にも、フスタ船に搭載されていた大砲の量産と、大砲を強化大型化した大砲を研究開発するように命じた。
更に大阪城の防備も、海上を含む全周囲から大砲で砲撃されることを想定した、強化増改築を命じた。
「本当でございます」
「止めさせる事は出来るか」
「羽柴家も戦で捕虜にした者を奴隷としております。それを伴天連だけ禁止するのは、公平とは言えません」
「我らが戦で捕まえた者を奴隷にするのは、人死にを少なくするためだ」
「その通りではありますが、伴天連が不公平だと騒ぎ、天下の政に信者が不満を持つように仕向けるでしょう」
「伴天連が日本人を連れ去るのを止めさせるには、我らも奴隷を解放せねばならぬのだな」
「はい。六宮を猶子に迎えるにあたり、日本から奴隷をなくすことにしましょう。羽柴家が率先して行えば、今迄の犠牲者を助ける事は出来なくても、これから連れ去られる者はいなくなります」
秀吉は与一郎の意見を聞いたうえで、イエズス会準管区長のガスパール・コエリョを呼び出して詰問した。
だがコエリョは素直に謝らず抗弁した。
いや、強弁したと言うほどだった。
しかも、小型だが最新鋭の軍船・フスタ船に大砲を三門積み込み、大阪城を威嚇する暴挙に出てしまった。
激怒した秀吉は、伴天連を日本から追放すると宣言した。
同時にフスタ船を拿捕するように海賊衆に命じたが、搭載されている大砲の威力と帆走能力が和船を凌駕しており、全く歯が立たなかった。
そこで秀吉はコエリョを人質として、降伏しなければコエリョをはじめ、日本にいる伴天連全員を死刑にすると、フスタ船の船長を脅迫した。
三日間に渡って激しい交渉が行われたが、拷問寸前にまで追い込まれたコエリョに懇願で、船長も遂に折れてフスタ船を秀吉に引き渡した。
だがこのコエリョの行動が、日本の未来を大きく変えた。
一向衆や叡山の僧兵など、現生利益の為に武装して天下を騒がせた宗教家に辟易していた大名国衆は、伴天連も同じだと気が付いたのだ。
一部の愚か者は、この後も伴天連の教えを妄信したが、秀吉は段階的にキリシタンの力を奪う事にした。
伴天連の教えに騙されているキリシタンは後回しにして、元凶である伴天連を追放するように、日本中の大名国衆に命じたのだ。
同時に海賊衆が小型の南蛮船すら拿捕出来なかった事と、南蛮船の大砲に大阪城が無抵抗である事に危機感を感じたのだ。
そこで船大工に、フスタ船と同型船の量産と、フスタ船を強化発展大型化させた、日本独自の軍艦を研究開発するように命じた。
勿論、堺や国友村の鉄砲鍛冶達にも、フスタ船に搭載されていた大砲の量産と、大砲を強化大型化した大砲を研究開発するように命じた。
更に大阪城の防備も、海上を含む全周囲から大砲で砲撃されることを想定した、強化増改築を命じた。
4
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
天竜川で逢いましょう 起きたら関ヶ原の戦い直前の石田三成になっていた 。そもそも現代人が生首とか無理なので平和な世の中を作ろうと思います。
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
和ませ屋仇討ち始末
志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。
門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。
久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。
父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。
「目に焼き付けてください」
久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。
新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。
「江戸に向かいます」
同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。
父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。
他サイトでも掲載しています
表紙は写真ACより引用しています
R15は保険です
武田義信は謀略で天下取りを始めるようです ~信玄「今川攻めを命じたはずの義信が、勝手に徳川を攻めてるんだが???」~
田島はる
歴史・時代
桶狭間の戦いで今川義元が戦死すると、武田家は外交方針の転換を余儀なくされた。
今川との婚姻を破棄して駿河侵攻を主張する信玄に、義信は待ったをかけた。
義信「此度の侵攻、それがしにお任せください!」
領地を貰うとすぐさま侵攻を始める義信。しかし、信玄の思惑とは別に義信が攻めたのは徳川領、三河だった。
信玄「ちょっ、なにやってるの!?!?!?」
信玄の意に反して、突如始まった対徳川戦。義信は持ち前の奇策と野蛮さで織田・徳川の討伐に乗り出すのだった。
かくして、武田義信の敵討ちが幕を開けるのだった。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
鶴が舞う ―蒲生三代記―
藤瀬 慶久
歴史・時代
対い鶴はどのように乱世の空を舞ったのか
乱世と共に世に出で、乱世と共に消えていった蒲生一族
定秀、賢秀、氏郷の三代記
六角定頼、織田信長、豊臣秀吉
三人の天下人に仕えた蒲生家三代の歴史を描く正統派歴史小説(のつもりです)
注)転生はしません。歴史は変わりません。一部フィクションを交えますが、ほぼ史実通りに進みます
※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』『ノベルアップ+』で掲載します
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる