四代目 豊臣秀勝

克全

文字の大きさ
上 下
61 / 103
第二章

双頭侵攻

しおりを挟む
 二軍に別れた与一郎と長秀は、それぞれが確実に国衆地侍を従え、戦略目標を目指した。
 長秀は南信濃を遠江に向けて侵攻し、信濃田中城の保科正直を調略したのを契機に、南信濃衆を次々と調略した。
 調略した南信濃衆を先方として、堅実に遠江に向けて侵攻。
 毛利秀頼が追われた飯田城を取り返した秀長は、改めて毛利秀頼に信濃伊那郡十万石と飯田城を与える朱印状を渡した。
 長秀軍は吉岡城に入り、遠江に攻め込む構えを見せて、尾張にいる徳川家康に圧迫をかけた。
 一方甲斐に占め込んだ与一郎は、秀吉から武田三郎信清に一万石と勝山城を与えると言う許可をもらっていたので、それを言い訳に武田遺臣が降伏臣従し易いようにした。
 その結果多くの武田遺臣が降伏臣従してきたが、望月兵大夫による調略を優先して後回しにしていた、信濃上田方面の根津昌綱が頑強に抵抗してきた。
 根津昌綱は後北条に味方し、本領と根津城に加え、甲斐国手塚千貫と清野一跡二千七百貫の広大な領地を与えられていた。
 更に今後の功名次第で、海野領より四千貫の領地を与えると、北条氏政より約束されていた。
 だが望月兵大夫には、そのような事を認める権限はなかったし、与一郎も認める気がなかったので、後北条の援軍を当てにして望月兵大夫の調略を拒否した。
 出来るだけ人的損耗を避ける与一郎ではあったが、後北条の威を借る根津昌綱を許すわけにはいかなかった。
 夜盗衆・伊賀衆・甲賀衆・信濃衆。武田遺臣を駆使して、根津昌綱の与力同心は勿論、家臣にも調略を仕掛けた。
 調略が成功するように、武力的威圧をかけようと、降伏してきた甲斐衆を先方に、根津昌綱が占拠している小諸城を四万二千兵の大軍で囲んだ。
 これに恐怖した根津昌綱の雑兵が逃げ出した。
 半農半武の地侍は田畑に戻った。
 後北条の援軍が当てに出来ず、このままでは滅ぼされると考えた根津信政・禰津常安・真田昌幸・望月信雅などの一族は、必死の説得を試みた。
 雪が降り始め、後北条の援軍が峠を越えられない時期となって、ようやく根津昌綱は諦め降伏臣従に応じた。
 だが与一郎は根津昌綱を信濃や甲斐に残すのは危険と判断した。
 雪で完全に交通が遮断される前に、根津昌綱などの疑わしい国衆地侍を岐阜城に送ることにした。
 高山右近・中川清秀・黒田官兵衛の九千兵に、甲斐信濃の国衆地侍の人質を護衛させ、美濃岐阜城に送った。
 与一郎と長秀が甲斐信濃を平定した時には、雪が激しくなり身動きが出来ない状況となっていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

【架空戦記】蒲生の忠

糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。 明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。 その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。 両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。 一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。 だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。 かくなる上は、戦うより他に道はなし。 信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

処理中です...