四代目 豊臣秀勝

克全

文字の大きさ
上 下
59 / 103
第二章

夜盗組

しおりを挟む
「その方達が謙信公に仕えていたという『夜盗組』の者か」
「「「「「はい」」」」」
「代表する者はいるのか」
「千坂対馬守景親でございます」
「ほう。頭巾を取って顔を見せてくれ」
「は」
「確かに見た顔だな。上杉家では、重臣が忍びの頭領を務めるのか」
「謙信公は、情報を集めることに特に力を入れられ、常々近習を隣国に派遣されていましたので、自然とこうなりました」
「そうだな。集めた情報も、十分理解出来ねば役に立たぬから、自国の事と隣国全ての関係を広く知らねば、宝の持ち腐れであるな」
「はい」
「では改めて尋ねるが、甲斐信濃の状況はどうなっておる」
「殿は既に伊賀者と甲賀者、それに川並衆を通じて御存知とは思いますが、夜盗組で集め判断した事を話させて頂きます」
「流石上杉の忍びだ。よく調べている。景勝は忍びを活用しきれなかったようだな。対馬守の諫言を聞き入れていたら、滅びずにすんだのであろうな」
「有難き御言葉でございます。恐らく殿が一番御聞きになりたいのは、川中島の国衆と地侍の動向だと思われますが、彼らは上杉家が出した恩賞を殿が御認めになられれば、そのまま木下家に仕えるものと思われます」
「今後の信濃、甲斐、上野の働き次第で、上杉家が認めた本領を安堵すると言うのではどうだ」
「十中八九は味方すると思われますが、万が一殿が不利になられれば、一斉に刃を向けると思われます」
「それはどれほど多くの恩賞を約束しても同じであろう。負ける方に味方して、先祖代々の領地と命を失う酔狂は少ない」
「はい」
「他の信濃衆や甲斐衆はどうだ」
「北条も徳川も、今は信濃にも甲斐にも兵を送れない状況でございます。大軍を率いて力押しすれば、間違いなく攻めとれますが、不満を持つ者が野や山に隠れ、一朝事あれば蜂起するものと思われます」
「対馬守はどうすればいいと思うか」
「名目だけでも武田三郎信清殿に武田家を継がせ、武田家遺臣の名目を潰される事だと思われます」
「武田恩顧に兵をあげるのは、己の野心を隠す御題目だから、それを取り上げろと申すのだな」
「はい」
「これは余の判断だけで決められることではない。安土城におられる三法師様の、いや、御松の方様の御気持ちを聞かねばならぬ」
「はい」
「よき話を聞かせてくれた。今日から余の側に控えるように」
「有難き幸せでございます」
 与一郎は、元服してからは義伯父・木下将監を後見人としていた。
 次いで父・長秀が付けてくれた藤堂高虎が後見人に加わった。
 川並衆が側近に加わるも、多くの者が商売に力を入れるようになった。
 伊賀を領地に得ることで、伊賀衆の大半を家臣に加え、下忍の端々にまで領地を与えることで、その心を掴み、百地丹波を側近に加えることになった。
 伊賀者の仲介で甲賀者も配下に加えるようになった。
 甲賀者の代表として側近になったのは、三雲成持であった。
 そこに千坂対馬守景親が束ねる夜盗組が加わったのだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

近江の轍

藤瀬 慶久
歴史・時代
全ては楽市楽座から始まった――― 『経済は一流、政治は三流』と言われる日本 世界有数の経済大国の礎を築いた商人達 その戦いの歴史を描いた一大叙事詩 『皆の暮らしを豊かにしたい』 信長・秀吉・家康の天下取りの傍らで、理想を抱いて歩き出した男がいた その名は西川甚左衛門 彼が残した足跡は、現在(いま)の日本に一体何をもたらしたのか ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載しています

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

蒼雷の艦隊

和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。 よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。 一九四二年、三月二日。 スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。 雷艦長、その名は「工藤俊作」。 身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。 これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。 これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。

枢軸国

よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年 第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。 主人公はソフィア シュナイダー 彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。 生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う 偉大なる第三帝国に栄光あれ! Sieg Heil(勝利万歳!)

処理中です...