四代目 豊臣秀勝

克全

文字の大きさ
上 下
43 / 103
第二章

徳川家康動く

しおりを挟む
 この頃、徳川家康が動いていた。
 駿河・遠江・三河から、甲斐と信濃に攻め込んだのだ。
 徳川軍が後北条軍を引き付けている間に、上杉軍が川中島四郡から中信濃に攻め込んだ。
 この動きに危機感を感じた武田遺臣と旧信濃衆が、又しても裏切り、後北条家から徳川家や上杉家に鞍替えした。
 哀れな境目の国衆が、情勢に応じて寝返るのは戦国の常識なので、徳川家も上杉家も受け入れた。
 地元の人間を味方につけた徳川軍と上杉軍は、それぞれ夜襲を仕掛けて大勝利を得た。
 この機会を利用して、木曽福島城に籠城していた織田信雄が討って出た。
 木曽福島城の抑えに残されていた後北条軍が、味方の敗戦に狼狽えている隙を突いたのだ。
 散々後北条軍を討ち破った信雄軍だが、そのまま尾張に逃げ帰ってしまった。
 信雄と家老達が、滝川一益達に相談することなく、徳川家康と上杉景勝に甲斐と信濃の切り取り勝手を約束してしまっていたのだ。
 滝川一益達は信雄に激怒したものの、私兵が激減しているので、逆らう事が出来なかった。
 愚かな信雄は、主のいなくなった美濃は、信雄が取って当然だと言う家康の言葉を真に受けたのだ。
 更に家康から、織田家の頭領は三介様こそ相応しいと言われ、舞い上がっていたのだ。
 それに信孝を失った柴田勝家達も、信雄を奉じて近江に攻め込んでいると教えられた。
 家康が伊賀者を使って、勝家に偽の使者を送っていたのだ。
 尾張に帰り着いた信雄は、尾張を守らせていた兵だけでなく、老若男女問わず徴兵し、美濃に攻め込む軍勢を整え始めた。
「織田信雄軍」
 織田信雄:一万二千兵
 滝川一益:千兵 
 森長可 :二百兵 
 毛利秀頼:二百兵 
 三木自綱:千兵(飛騨から美濃へ)
 無理矢理集めた兵は、戦闘力の低い寄せ集めの軍勢だった。
 とても戦えるような軍勢ではないのだが、織田家の当主になれると思った信雄は、美濃の国衆に使者を送って調略を始めた。
 この動きは、美濃を任されて岐阜城に入っていた、木下与一郎の元に直ぐに届いた。
 与一郎は直ぐに美濃各地の与力国衆に使者を送り、三法師様と御次公に忠誠を誓うなら軍を出せと命じた。
 一種の賭けなのだが、この行動は羽柴家で事前に打ち合わせてあった。
 織田信孝に従い、大きな損害を受けた美濃衆であったが、それでも生き残りをかけて、軍役に応じた兵を集めて岐阜に参集した。
 一万の軍勢を整えて集まった美濃衆を、与一郎は丁寧に慰労した。
 だが信雄は、この美濃衆の動きに激怒した。
 美濃衆を忘恩の徒と罵り、留守居役しかいない加賀井重望の加賀野井城に攻めかかったのだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原

糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。 慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。 しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。 目指すは徳川家康の首級ただ一つ。 しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。 その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

処理中です...