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第二章
三法師流転
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織田信孝は、美濃国内の男を根こそぎ動員して、二万五千の軍勢を整えた。
織田信長の残した旗本の半数と、軍資金と兵糧の二割を引き継いだ信孝は、その全てをこの合戦に投入した。
だがこれは、秀吉の罠だった。
柴田勝家が雪で動けない季節に四国に渡り、信孝の暴発を誘ったのだ。
信孝は春まで待つべきであったが、待てなかった。
秀吉の数々の実績が、信孝に強大な圧力をかけていた。
秀吉だったら、冬の間に四国を平定してしまうのではないかと言う恐怖で、春を待つことが出来なかった。
準備万端整えていた秀吉は、三法師の傅役・織田信包と堀秀政を調略していた。
三法師の旗本衆と、織田信包と堀秀政の家臣を合わせ、六千の兵力が安土城を守っていた。
開城を命じる信孝に対して、織田家に対する謀叛だと厳しく指摘した手紙を送ったのだ。
激怒した信孝は、織田信包と堀秀政を逆臣と断じ、安土城に攻めかかった。
下克上の時代である。
幾ら三法師が織田家の頭領であろうと、信孝が命じれば家臣達は攻撃を躊躇わない。
明智光秀の家臣が、織田信長を攻め殺したのと同じだ。
信長の元旗本衆も同じだ。
秀吉と光秀の合戦では、共に肩を並べて戦った者同士が、命を奪い合ったのだ。
二万五千対六千では、普通は六千に勝ち目はない。
籠城戦とは言っても、三対一の比率を越えてしまっている。
だが信孝の謀叛を誘った秀吉は、この日の為に安土城を強化していた。
それに期限のない籠城なら苦しいが、秀吉が戻るまでの限定的な籠城だ。
しかも近江各地の城には味方がいて、瀬田城には羽柴長秀の五千兵が援軍に入っていた。
信孝は数に任せて猛攻を繰り返した。
その度に撃退され、手痛い損害を受けた。
中国大返しを成し遂げた秀吉への恐怖が、信孝に我攻めを行わせていた。
そして秀吉は、準備万端用意していたので、与一郎から信孝謀叛の知らせを受けて、すぐさま全軍を反転進軍させていた。
中国大返しの時と同じように、進軍路の村々に宿泊と食事の準備を整えさせていた。
重い武器や装備は小荷駄に後から運ばせて、身一つで移動していた。
宝寺城は勿論、高槻城や茨木城と言った西国街道沿いの諸城にも、武器弾薬に兵糧を準備させていた。
秀吉の瀬田城到着が後一日となった十二月二十七日に、蜂須賀正勝配下の忍者が、安土城に向けて狼煙を上げた。
狼煙を見た織田信包と堀秀政は、信孝に使者を送った。
信孝を三法師の後見人として認め、三法師を預けるから、安土城の囲みを説いて欲しいと言うモノだった。
信孝としても、天下の主の象徴ともいえる安土城を焼きたくはなかった。
それに、一日でも早く京に入り、天下の主であることを朝廷に認めさせたかった。
秀吉が戻ってくる前に、宝寺城を攻め落としておきたかった。
だがこれも秀吉の仕掛けた罠だった。
織田信長の残した旗本の半数と、軍資金と兵糧の二割を引き継いだ信孝は、その全てをこの合戦に投入した。
だがこれは、秀吉の罠だった。
柴田勝家が雪で動けない季節に四国に渡り、信孝の暴発を誘ったのだ。
信孝は春まで待つべきであったが、待てなかった。
秀吉の数々の実績が、信孝に強大な圧力をかけていた。
秀吉だったら、冬の間に四国を平定してしまうのではないかと言う恐怖で、春を待つことが出来なかった。
準備万端整えていた秀吉は、三法師の傅役・織田信包と堀秀政を調略していた。
三法師の旗本衆と、織田信包と堀秀政の家臣を合わせ、六千の兵力が安土城を守っていた。
開城を命じる信孝に対して、織田家に対する謀叛だと厳しく指摘した手紙を送ったのだ。
激怒した信孝は、織田信包と堀秀政を逆臣と断じ、安土城に攻めかかった。
下克上の時代である。
幾ら三法師が織田家の頭領であろうと、信孝が命じれば家臣達は攻撃を躊躇わない。
明智光秀の家臣が、織田信長を攻め殺したのと同じだ。
信長の元旗本衆も同じだ。
秀吉と光秀の合戦では、共に肩を並べて戦った者同士が、命を奪い合ったのだ。
二万五千対六千では、普通は六千に勝ち目はない。
籠城戦とは言っても、三対一の比率を越えてしまっている。
だが信孝の謀叛を誘った秀吉は、この日の為に安土城を強化していた。
それに期限のない籠城なら苦しいが、秀吉が戻るまでの限定的な籠城だ。
しかも近江各地の城には味方がいて、瀬田城には羽柴長秀の五千兵が援軍に入っていた。
信孝は数に任せて猛攻を繰り返した。
その度に撃退され、手痛い損害を受けた。
中国大返しを成し遂げた秀吉への恐怖が、信孝に我攻めを行わせていた。
そして秀吉は、準備万端用意していたので、与一郎から信孝謀叛の知らせを受けて、すぐさま全軍を反転進軍させていた。
中国大返しの時と同じように、進軍路の村々に宿泊と食事の準備を整えさせていた。
重い武器や装備は小荷駄に後から運ばせて、身一つで移動していた。
宝寺城は勿論、高槻城や茨木城と言った西国街道沿いの諸城にも、武器弾薬に兵糧を準備させていた。
秀吉の瀬田城到着が後一日となった十二月二十七日に、蜂須賀正勝配下の忍者が、安土城に向けて狼煙を上げた。
狼煙を見た織田信包と堀秀政は、信孝に使者を送った。
信孝を三法師の後見人として認め、三法師を預けるから、安土城の囲みを説いて欲しいと言うモノだった。
信孝としても、天下の主の象徴ともいえる安土城を焼きたくはなかった。
それに、一日でも早く京に入り、天下の主であることを朝廷に認めさせたかった。
秀吉が戻ってくる前に、宝寺城を攻め落としておきたかった。
だがこれも秀吉の仕掛けた罠だった。
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