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第二章
清州会議
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天正十年六月二十七日(一五八二年七月一六日)、尾張の清洲城で、織田家の後継者と遺領の分配をめぐる話し合いが行われた。
次男の北畠信雄、三男の三好信孝、四男の羽柴秀勝が後継の座を争い、三者一歩も引かなかった。
信雄は次男であることを主張し、自分こそが織田家の当主に相応しいと言い張った。
信孝は三男だが産まれたのは自分の方が早いと主張し、更に自分は仇討ちに参加しているが、信雄は参加していないと主張した。
秀勝は四男だが、仇討ちの主力軍は自分であり、怨敵光秀の首を取ったのは自分の家臣であり、しかも義理の従兄だと主張した。
会議に参加した重臣は、四人だった。
神流川の戦いで後北条氏に惨敗した滝川一益は、信濃から伊勢へ敗走中で会議に間に合わなかった。
各方面の総大将を務めていたもので、生き残り会議に出られるのは柴田勝家・丹羽長秀・羽柴秀吉の三人だけだった。
激減した重臣を補う為に、母親が信長の乳母を務め、信長と乳兄弟である池田恒興が加えられた。
乳母であった母が、後に信長の父親の側室になった事や、明智光秀を破った戦いで、大きな武功を上げたことが考慮された。
だがその推薦は、柴田勝家と反目する羽柴秀吉と丹羽長秀が結託して決めたことだった。
しかも遺領の分配で池田恒興に大領を与える事を約束していた。
最初に北畠信雄が脱落した。
本人は最後まで激しく次男であることを主張したが、四人の重臣の誰も支持しなかった。
激論に激論が重ねられたが、信孝と勝家組と秀勝と秀吉組が一歩も引かなかった。
丹羽長秀と池田恒興が秀勝を押したが、三対一になっても勝家は折れなかった。
重臣ではない織田一門や譜代衆を巻き込んで、必死の抵抗を繰り返した。
「三法師様、これはどうですか」
秀吉は秀勝と共に度々三法師に会いに行き、三法師を手懐けることに成功していた。
僅か三歳の三法師では、人誑しと言われた秀吉に抗する事などできるはずがなかった。
秀吉は最初から次善の策を用意していたのだ。
三法師を織田家当主として、羽柴秀勝が後見人を務めると言う代案を出した。
これにも信孝と勝家組は反対し、後見人には三好信孝が相応しいと言い募ったが、北畠信雄が秀勝と秀吉組支持したので、屈服することになった。
秀吉と秀勝が、三好信孝と柴田勝家が権力を握ったら、北畠信雄を殺すと囁いたのだ。
話し合いの最中、特に三好信孝・柴田勝家と対立し、激しく罵り合った北畠信雄は、その言葉を信じてしまった。
北畠信雄が秀勝と秀吉組に傾いた事で、三好信孝と柴田勝家に賛同していた者も、秀勝と秀吉組支持に代わった。
最後の止めは、秀勝を引き連れた秀吉が、三法師を抱いて上段に現れたことだった。
北畠信雄・三好信孝・柴田勝家・丹羽長秀・池田恒興の五人が、三法師・羽柴秀勝・羽柴秀吉に頭を下げる形になった。
次に問題だったのは、遺領の分配だった。
誰が織田家の当主になるのか、誰が三法師の後見人になるのかに絡み、激しい駆け引きが繰り広げられた結果だった。
次男の北畠信雄、三男の三好信孝、四男の羽柴秀勝が後継の座を争い、三者一歩も引かなかった。
信雄は次男であることを主張し、自分こそが織田家の当主に相応しいと言い張った。
信孝は三男だが産まれたのは自分の方が早いと主張し、更に自分は仇討ちに参加しているが、信雄は参加していないと主張した。
秀勝は四男だが、仇討ちの主力軍は自分であり、怨敵光秀の首を取ったのは自分の家臣であり、しかも義理の従兄だと主張した。
会議に参加した重臣は、四人だった。
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各方面の総大将を務めていたもので、生き残り会議に出られるのは柴田勝家・丹羽長秀・羽柴秀吉の三人だけだった。
激減した重臣を補う為に、母親が信長の乳母を務め、信長と乳兄弟である池田恒興が加えられた。
乳母であった母が、後に信長の父親の側室になった事や、明智光秀を破った戦いで、大きな武功を上げたことが考慮された。
だがその推薦は、柴田勝家と反目する羽柴秀吉と丹羽長秀が結託して決めたことだった。
しかも遺領の分配で池田恒興に大領を与える事を約束していた。
最初に北畠信雄が脱落した。
本人は最後まで激しく次男であることを主張したが、四人の重臣の誰も支持しなかった。
激論に激論が重ねられたが、信孝と勝家組と秀勝と秀吉組が一歩も引かなかった。
丹羽長秀と池田恒興が秀勝を押したが、三対一になっても勝家は折れなかった。
重臣ではない織田一門や譜代衆を巻き込んで、必死の抵抗を繰り返した。
「三法師様、これはどうですか」
秀吉は秀勝と共に度々三法師に会いに行き、三法師を手懐けることに成功していた。
僅か三歳の三法師では、人誑しと言われた秀吉に抗する事などできるはずがなかった。
秀吉は最初から次善の策を用意していたのだ。
三法師を織田家当主として、羽柴秀勝が後見人を務めると言う代案を出した。
これにも信孝と勝家組は反対し、後見人には三好信孝が相応しいと言い募ったが、北畠信雄が秀勝と秀吉組支持したので、屈服することになった。
秀吉と秀勝が、三好信孝と柴田勝家が権力を握ったら、北畠信雄を殺すと囁いたのだ。
話し合いの最中、特に三好信孝・柴田勝家と対立し、激しく罵り合った北畠信雄は、その言葉を信じてしまった。
北畠信雄が秀勝と秀吉組に傾いた事で、三好信孝と柴田勝家に賛同していた者も、秀勝と秀吉組支持に代わった。
最後の止めは、秀勝を引き連れた秀吉が、三法師を抱いて上段に現れたことだった。
北畠信雄・三好信孝・柴田勝家・丹羽長秀・池田恒興の五人が、三法師・羽柴秀勝・羽柴秀吉に頭を下げる形になった。
次に問題だったのは、遺領の分配だった。
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