四代目 豊臣秀勝

克全

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第一章

着実

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「でかした、与一郎」
「御褒めに預かり、有難き幸せです」
「これで毛利を崩壊させることが出来る」
「名のある国衆を切腹させるのですね」
「ああ、吉川経家は毛利一門の端に連なる者だ」
「はい」
「その者が命を許されて、国衆だけが切腹させられるとなれば、毛利と国衆の絆は切れる」
「今回は卑怯者でしたから、それほどの効果はありませんが」
「ああ、だが次に毛利に忠誠を尽くした国衆の腹を切らすことが出来れば」
「毛利を崩壊させることが可能ですね」
「大内や尼子のように、ほとんどの国衆を寝返らすことが出来る」
「はい」
 秀吉は次々と手を打った。
 伯耆や備中の国衆の寝返りを誘うべく、但馬の国衆で、早くから水軍を率いて秀吉に協力していた、垣屋光成に鳥取城と因幡巨濃郡一万石を与えた。
 これは長秀の献策を採り入れたもので、秀吉の領地である近江長浜から因幡まで、海路の連絡と輸送、いや、交易を行う事にしたのだ。
 蜂須賀小六が川並衆として水運業をしていた仲間の中から、武士を止め商売に専念したい者を選び、生野銀山から得た豊富な資金を貸し与え、月額六分の利息を受け取る仕組みを創り出した。
 秀吉はその後直ぐに伯耆に兵を進め、羽衣石城の南条元続を救援しようとした。
 南条元続は、鳥取城を干殺している間、毛利家が鳥取城に兵糧を運び込めないように、羽衣石城から討って出たり籠城したりして、毛利軍を牽制してくれていたので、支援しなければ信義を失ってしまうからだ。
 迎え討つ吉川元春は、六千の兵を率いて馬ノ山に布陣した。
 橋津川の橋をことごとく落とした。
 備えていた数百の舟は、全て陸上に引き上げ、櫓を残らず折り捨てて、決死の覚悟で背水の陣を敷いた。
 この時秀吉の率いる軍は六万に達していたが、無理に戦って損害を増やすよりは、確実に勝てる所で国衆に切腹させることを選んだ。
 羽衣石城に大量の兵糧や弾薬などを運び入れ、南条元続が籠城を続けられる体制を整え、軍を淡路に転戦させた。
 秀吉は十一月に池田元助と共に淡路に侵攻し、由良城の戦いで安宅清康を降伏させた。
 安宅清康は、三好長慶の弟・安宅冬康の次男であった。
 父が伯父の三好長慶に殺され兄・安宅信康が跡を継ぐも、兄は織田信長と戦って敗れて信長の臣下となり、その後で毛利に誘われるも、織田に忠誠を尽くしていた。
 その兄が三十の若さで亡くなり、清康が跡を継いだのだが、事もあろうに毛利に寝返ったのだ。
 だが再度安宅清康を降伏臣従させたことで、清康が支配下に置いていた小豆島も勢力圏に置くことになり、毛利の畿内への足掛かりを完全に断つことになった。
 十一月十五日には、菅達長の守る岩屋城は僅か一日で落城し、菅達長は毛利を頼って落ち延びた。
 淡路を平定した秀吉は、播磨灘の制海権を握り、四国への侵攻路を確保した。
 岩屋城を生駒親正に与え、淡路全体の支配は仙石秀久に任せた。
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