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54話

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「何かあったの、ウィリアム?」

「なんだかきな臭い話になってきた」

「なにを聞き込んできたの?」

「どうやらこの国中の貴族とその一門の魔力検査をするそうだ」

「大事ね。
 いよいよサンテレグルラルズ王国が報復に攻め込んでくるの?」

「実際に攻め込んで来るかどうかは別にして、それを不安視しているのは確かだ。
 この国の王が体調を崩しているらしい。
 唯一王族に相応しい魔力を持っていた王太子が死んでしまっている。
 このままでは国王不在の状態で厳しい交渉をしなければいけなくなる。
 国内の戦力を把握しておきたいのだろう」

「まさかとは思うけれど、王族に相応しい魔力を持っている者がいたら、養子にするなんて話にならないでしょうね」

「普通はありえない。
 だが王家の流れを汲む公爵家や伯爵家ならないとは言えない。
 その点でいえば、ルシアが狙われる可能性は高い。
 ルシアを女王にして、王族から王配を選べばおさまりがいいからね」

「その話が本当だったら、男爵位を買ったお金はドブに捨てることになるけど、逃げる準備をしてくれないかな」

「それは構わないけれど、本当にそれでいいの?」

「なにが言いたいのよ?」

「ネイは結構この国の生活が気にいっているようだよ。
 ルシアが女王になったら、もっといい暮らしができるんじゃないか」

「本気で言っているの?!
 だったらアンタらを置いて私だけで逃げるわよ。
 ティシュトリヤの子供達がいるから、以前より安全に逃げられるのよ」

「そうしたければそうすればいいいけど、ネイはサンテレグルラルズ王国の王孫なんだぞ、どこに逃げても追手はやってくる。
 追手から逃げ続けるくらいなら、少々の不自由や不便はあっても、この国の王族になる方が安全だし、一ケ所に腰を落ち着けて暮らせるんじゃないのか?」

 確かにウィリアムのいう事にも一理あります。
 どこの国に逃げても、ネイには追手が放たれるでしょう。
 王位継承争いが無くなる事などありません。
 ですが、魔力検査の後なら、私に対する追手も加わります。
 この国の王族に相応しい魔力を持つ者が、どれくらいいるかで変わってきますが、それほど多いとは思えないです。

 それでなくても、私との抗争で多くの優秀な魔力持ちが死にました。
 厳密に魔力検査をすれば、今後継者に内定している公爵や侯爵、いえ、伯爵や子爵まで後継者であることを否定されるかもしれません。
 本当に魔力検査をやれるのでしょうか?
 まあ、王族に残れない国王の子弟が、公爵家以下の爵位を継ぐことになるかもしれませんが、早く逃げるか留まるか決断しなければいいけないですね。
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