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35話

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 私たちは再び関所破りをしました。
 偽造書類があるので、徒歩の時は正々堂々と関所を超えます。
 ですが今回は、それぞれ軍馬にまたがっています。
 騎士を乗せられるような、鍛え抜かれた軍馬は、売れば一財産になりますから、関所で莫大な税金をかけられてしまいます。
 なので今回は関所を通らずケングロス王国に入りました。

 暁の騎士たちと私は、牧場から牡馬を選んで乗ってきました。
 一番二番に体格と頭がいい牡馬は、種馬にすべく牧場に残しました。
 子が生める牝馬も当然牧場に残しました。
 選んだ牡馬は、多くの軍馬の下から順番となりますが、そもそもどの子も軍馬になれたくらいの名馬ぞろいですから、何の問題もありません。
 ネイは私と相乗りしたがりましたが、いざという時の事を考え別々です。
 私の愛馬、ティシュトリヤに乗せる以外の選択はありません。

 今回馬にこだわった理由は、ケングロス王国の魔境が荒野だからです。
 奥に砂漠が広がる、広大な荒野・半砂漠の魔境なのです。
 それこそ独特の魔獣が住んでいて、単価の高い珍しい魔獣がいます。
 ではなぜ冒険者が集まらないかといえば、魔獣の密集率です。
 水が少ないと人間が住みにくいのと同じように、魔獣も住みにくいようです。
 広大な魔境に魔獣が点在するので、狩りをするには効率が悪いのです。

「いいかい、血を撒くからね。
 相手は毒をもっているから、魔力を惜しまず、一撃で斃してくれ」

 ウィリアムが指揮を執ります。
 ここは慎重派のウィリアムの出番のようです。
 相手は十メートル級の強力な魔毒蛇です。
 高価な解毒薬がなければ、噛まれれば確実に死にます。
 いえ、それだけではありません。
 巻きつかれたら、強烈無比の締めで、全ての骨を折られて圧死してしまいます。

 私達には解毒の魔法書があるから大丈夫ですが、普通の冒険者では採算が合わないので、ひたすら逃げの一手です。
 こういう点も、この魔境が冒険者に人気がない要因です。
 でも解毒薬を使わずに魔毒蛇は狩れれば、とても儲かる魔獣でもあります。
 毒腺は暗殺には欠かせない毒ですが、同時になくてはならない解毒薬の素材です。
 強固な鱗は、鱗鎧の材料になります。
 肉や血は滋養強壮薬、いえ、精力薬や催淫薬には欠かせない素材です。

 ウィリアムが、ここだと思われる場所に、魔法袋からだした血を撒きます。
 撒き血にするために、売り物にならない鼠や兎の血を取ってあるのです。
 案の定、この魔境固有の魔毒蛇が地面から頭を出しました。
 お前は蚯蚓か!
 思わず突っ込みを入れそうになります。

 そう思った時には、既に無意識で中級上の風魔法を使っていました。
 喉の方から魔毒蛇の首を刎ね飛ばしていました。
 普通の魔蛇なら、少しでも多くの鱗を回収するために、口から魔術を叩き込んで脳を破壊するのですが、毒腺が高価に売れる魔毒蛇は、毒腺に血が混じらないように首を斬り落とすのです。

「次の狩場に移動する」
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