悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全

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33話

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「よお!
 なにも手伝えなくて悪かったな。
 次は必ず手伝うからよ。
 あ、でも、次なんてない方がいいか?」

 天真爛漫と言うべきか、お調子者と言うべきか?
 でも、たぶん、計算ずくでやっていますね。
 イライアスの言動は、ウィリアムと相談しての発言です。
 役割分担して、今回はイライアスが任されたのでしょう。
 私だけでなく、アマゾーン達の事も考えての話です。

 私とアマゾーン達がヘリーズ王国に居を構えると決めて、放棄されていた牧場を購入し、軍馬達を放牧して直ぐに、イライアス達が追いつきました。
 まだエリアスの腐れ外道の事を鮮明に覚えているころです。
 イライアス達が私達の安全を図って消えたのか、私達を見捨てて逃げたのか、モヤモヤとした疑念があったころです。

 アマゾーン達は遠慮せずにイライアス達に詰問しました。
 雇い主でクラン長、先輩格の上位冒険者でも遠慮などしません。
 実際に死ぬ可能性が高い揉め事に巻き込まれたのです。
 詰問どころか戦いになって当然の案件です。
 冒険者は舐められてはいけない仕事でもあるのです。
 舐められたら、死に直結する悪い条件を押し付けられます。

「すまん、完全に俺たちの落ち度だ。
 だが分かって欲しい。
 俺たちが囮の心算で逃げた時は、ネイが王族だなんて知らなかったんだ。
 ネイが王族でなかったら、全く違う展開になっていたんだ。
 俺たちの予想では、本当の賓客として扱われるはずだったんだ。
 だが見謝ったのは確かだ。
 この通りだ、悪かった」

 イライアスが代表して詫びを入れたので、アマゾーン達は納得しました。
 表向きの理由はその通りです。
 でも真実は違います。
 強力な魔道具である鎧を確保するための逃走でした。

「じゃあ、仔馬が生まれるまでここで休憩しようか」

 暁の騎士とアマゾーンが相談して、ここで牧場を営むことになりました。
 軍馬達が安全に仔馬を生むためでもありますし、魔法巻物と魔法書を大量に作り置きしておく必要があったからです。
 予定とは違って、魔法巻物と魔法書を蓄えるどころか、生き残るために大量に消費してしまっていたからです。

 私はカルラの教えながら。
 誰にも分からないように、ネイにも教えました。
 ネイには私を超える魔力と才能があります。
 その事はイライアスにもウィリアムにも秘密です。
 イライアスとウィリアムも、アマゾーン達には内緒で魔法巻物と魔法書を製作備蓄しているようですが、冒険者として生きていくなら当然の事です。

 互いに秘密を抱えながら、でも、とても穏やかに暮らすことができました。
 私にとっては人生初めての安楽な日々です。
 これほど幸せな時間は初めてです。
 馬を育て物を作りネイに慕われる日々。
 この日々を奪われないように、全力を尽くすと誓いました。
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