悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全

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29話

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「分かった!
 私たちはポーラの指示に従うよ。
 なんだって言ってくれ」

 リーダーのダニエラが、会心の笑みを浮かべて承諾してくれました。
 これほどいい笑顔を見るのは久しぶりですね。
 それに、私の事をルシア嬢と呼ぶのを、ポーラと呼び捨てにしてくれます。
 同じパーティーメンバーとして、肩を並べて戦うと言ってくれているのです。
 背中を預けて戦うと言ってくれているのです。
 私もその心意気に応えないといけません。

「私の愛馬に念話を届けました。
 私のモノになった軍馬を率いて暴れてくれるそうです。
 これで二之丸三之丸は大混乱になるはずです。
 その混乱を利用して、この国を出ます。
 まずはソフィア。
 貴女が城外に出て逃走準備をしてください」

「分かった。
 だが少し確認させてくれ。
 拠点の屋敷に残してきたモノは、全て捨てていくんだね?」

「はい、命に勝るモノはりません。
 生きてさえいれば、取り返せる可能性もあります。
 自分の力で新たに手に入れる事もできます。
 まずは生きて逃げる事を考えます」

「分かった。
 私もその考えに同意する。
 まずは生き残る事だけ考えよう」

「じゃあ、準備と覚悟はいいですか?」

「ああ、何時でも飛ばしておくれ」

 ソフィアに確認を取って、空に送り出しました。
 そこそこのスピードで城外に向けて飛ばしたのですが、見張りがちゃんと仕事をしていたようです。

「逃げたぞ!
 一人空を飛んで逃げたぞ!
 あいつら、飛行魔術を使うぞ。
 追え、急いで追うんだ!」

 見張りが周囲に知らせます。
 急いで矢を射る者まで現れました。

「殺すな!
 矢を使いうんじゃない、バカモノ!
 急いでここを開けろ、さっさと扉を壊さんか!
 逃げた者を追え!
 絶対に逃がすな!」

 腐れ外道のエリアス王太子が怒鳴り散らしています。
 想定外の事が起こって慌てふためいているのでしょう。
 いい気味です。

「うわああああ!
 馬が、馬が暴れています!
 伝令が蹴り殺されました。
 追撃の指示が伝えられません!」

「バカかお前は!
 次の伝令をだせ!
 四人五人だぜ!
 いや、徒士隊十人全員を伝令に出せ!」

 ティシュトリヤが上手くやってくれています。
 本当に賢い馬です。
 なんといっても、私をウィリアム様たちに出会わせてくれた馬です。
 普通の馬とは全く違います。
 私の願いを聞いてくれた時から、伝令を潰すために準備してくれていたとしか思えない対応です。

「二人目です!
 二人目が飛行魔術で逃げます。
 本当に逃がしていいんですか?
 矢を射らなくていいんですか?」

「誰が逃がせと言った!
 絶対に逃がすな!
 だが殺してはならん。
 絶対に殺してはならん!
 生け捕りにしろ!」

 エリアスの腐れ外道が、思い通りにいかなくて、配下に罵詈雑言を浴びせていますが、その程度では、信望が地に落ちて権力を失ったりはしないのでしょうね。
 まあ、いいです。
 地道にいきましょう。
 次はヴァレリアを王都外に送ります。
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