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25話

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 私たちは表向きは招待とはいえ、証人として保護隔離状態です。
 本当の賓客を迎えるような、高貴な部屋に案内されるわけがありません。
 それでも私には気を使ったのでしょう。
 いえ、利用価値があると判断したのでしょう。
 家出中とはいえサンディランズ公爵家の令嬢です。
 エルフィンストン王国と開戦することになれば、色々な使い道があります。

 だから私と他の人間で部屋を変えようとしました。
 ですがそれだけは認められません。
 特にネイから離されるのだけは絶対に認められませんでした。
 激烈に抗議しました。
 貞操の危機を表にだしても抗議しました。
 戦って斬り死にすることも覚悟して抗議しました。

 私の本気が伝わったのでしょう。
 私たちは一つの塔に幽閉されることになりました。
 エルフィンストン王国の刺客に殺されないように。
 私たちが逃げられないように。
 三之丸まである王城の、二之丸城壁に付随した塔です。

 側防塔とか側壁塔とか呼ばれる、城を攻撃された時に、まずは遠くの敵を見つけ監視する事、次に城壁を登ろうとする敵を横射することが目的の軍事塔です。
 特にサンテレグルラルズ王都の城壁と塔は、歴史上極稀にある魔獣や竜の暴走も考慮されているので、厚く高く作られています。
 だから内部の部屋数も多く広いのです。

 私たちは最上階から六階層分の部屋を与えられました。
 最上階は私とネイが使い、下順に、共用部屋、カルラ部屋、ダニエラ部屋、ヴァレリア部屋、ソフィア部屋となっています。
 食事やオマルの持ち運びが不便ですが、ネイの安全には代えられません。
 それと、魔法書や魔法巻物の秘密もです。
 塔の中では何もしないという言う選択肢もありましたが、非常時を考えれば、武器になるモノは数多くそろえたかったのです。

 幸いというべきか当たり前というべきかは別にして、襲撃者の残していった武器や防具、個人資産は全て私たちのモノとされました。
 これも私への懐柔策でしょう。
 エルフィンストン王国の領地を割譲させるには、サンディランズ公爵家令嬢ルシアの証言はとても重いのです。

 ですが正直、個人資産全てが与えられるとは思っていませんでした。
 敵の個人資産の中には、よく鍛えられた軍馬がいたのです。
 騎士が騎乗し戦うための軍馬です。
 その金銭的価値はとても大きいのです。
 購入するなら小銅貨で七十万枚、小金貨なら七十枚も必要になります。
 いえ、金額以前に、直ぐに買えるようなモノではないのです。

 サンテレグルラルズ王国は、自分たちの正義を諸国アピールしたいのでしょう。
 それに、どれほど高価でも、騎士用の軍馬を確保したかったのでしょう。
 若駒を軍馬に鍛えようと思えば数年かかりますから。
 形だけ私の与えて、買い取る条件なのです。

「国王陛下が話を聞きたいと申されていおられる。
 直ぐに用意しろ」

 まったく、王族はどこに行っても身勝手です!
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