悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全

文字の大きさ
上 下
13 / 60

12話

しおりを挟む
「私たちはアマゾーンという冒険者だ。
 私がリーダーのダニエラ、ハルバートを使う」

「私が盾役で剣士のヴァレリアだ」

「私は元盗賊で斥候や投擲をしているソフィアです」

「私は魔法使いのカルラです。
 もっとも魔法使いといっても初級なんですがね」

 今日はクランの面接日です。
 孤児のネイを保護した翌日に、念願だった女冒険者パーティーが入団を希望してきてくれました。
 私が女なので、しかもパーティーにたった一人の女なので、トイレや眠るときの警備が問題になるのです。
 魔境でもダンジョンでも、トイレと眠るときが最も無防備になるのです。

「私が今日の説明をさせてもらうウィリアムだ。
 今回の入団契約には色々と制約がある。
 理由はポーラの弟子になる者には、知識と技術の秘匿を護ってもらうためだ。
 その事は冒険者ギルドを聞いているかな?」

「はい、聞いています。
 ですがそれはポーラ様の弟子になる私だけではないのですか?」

 彼女たちのうち、カルラだけが私の弟子になるつもりなのですね。

「それだけでは困るのだ。
 ポーラに危害を加えられては困るのだ。
 具体的に言えば、ポーラを直接誘拐するのはもちろん、誘拐の協力は当然として、見て見ぬ振りも困るのだよ」

「それは、随分警戒しますね。
 よほど高度な魔法を使われるのですね」

「いや、魔法自体は中級の上までしか使えない。
 だが、その中級の上の魔法書と魔法巻物を創る出すことができる。
 それがどれほどの金を生むか、同じ冒険者ならわかるだろう」

 四人の女冒険者が息をのむのが分かります。
 カルラは生唾まで飲み込んでいます。
 彼女は、自分が初級の魔法書や魔法巻物を創るところを、思い浮かべているのでしょう。

「眠い」

 私が膝の上に抱き上げていた天使、ネイがぐずります。
 たった一日で信じられないくらい懐かれてしまいました。
 でも嫌な気はしません。
 昨日宿に戻って湯で身体を洗ってあげたら。
 アカや汚れ、悪臭を洗い流したら、天使が現れたのです。
 プラチナブロンドの髪と処女雪のように純白の肌。
 そんな天使のような幼子に慕われてうれしくない人間などいません。
 私は優しく抱きしめてあげました。

「まあ、そういう理由なんで、ポーラに危害を加えないための制約を色々設けたうえで、魔法誓約を交わしてもらう。
 それと基本ポーラの護衛役になってもらう。
 率直なところ、俺たちだけではトイレと眠るときに問題がある。
 ポーラに嫌われて逃げ出されたら困るのは俺たちも同じなんだ。
 護らなければいけないのだが、トイレの時に近づきすぎるわけにもいかん。
 その辺を頼みたいのだよ」

 女四人が噴き出してしまっています。
 ウィリアムには笑いの才能もあるようです。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。

ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」 ──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。 「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」 婚約者にそう言われたフェリシアは── (え、絶対嫌なんですけど……?) その瞬間、前世の記憶を思い出した。 彼女は五日間、部屋に籠った。 そして、出した答えは、【婚約解消】。 やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。 なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。 フェリシアの第二の人生が始まる。 ☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。 侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。 家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。 友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。 「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」 挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。 ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。 「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」 兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。 ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。 王都で聖女が起こした騒動も知らずに……

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

処理中です...