悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全

文字の大きさ
上 下
4 / 60

3話

しおりを挟む
「うへぇぇぇぇ。
 運が悪いねぇ、ねえちゃん。
 俺たちに見つかるなんてよぉ!」

「抵抗するんじゃねえぞ。
 抵抗すれば抵抗するだけ痛い思いをするぞ。
 おとなしくしてりゃあ、直ぐに天国に連れて行ってやらぁ」

「ふぇふぇふぇふぇ。
 最初はちょっとだけ痛いかもしれないが、直ぐによくなるよ」

 山賊に囲まれてしまいました。
 今までは愛馬ティシュトリヤが危険を避けてくれていましたが、今回は避けきれなかったようです。
 私の護身術程度で対抗できるでしょうか?
 恥をかかされる前に自害しなければいけません!
 拘束される前に、身動きできるうちに、死を決断しなければいけません!

「ちぃ!
 いいか、上玉だから絶対に傷つけるなよ!
 恐らく貴族令嬢のお忍びだ。
 身代金を手に入れるにしても、密かに金持ちに売るにしても、傷物じゃあ買い叩かれちまうぞ」

「そんなぁ、俺らが黙ってりゃ分かりませんよ」

「じゃかましいぃわ!
 逆らうなら殺すぞ!」

「ヒィィィィイ!
 ゆるしてください、お頭!」

 仲間割れですか。
 今の会話から、少なくとも直ぐに恥をかかされることはなさそうですね。
 ですが、捕まってから逃げるのは、ほぼ不可能です。
 山賊がもめているうちに包囲を突破すべきだと思うのですが、今までは軽々と盗賊や山賊の罠を突破してくれていた愛馬ティシュトリヤが、全く動いてくれません。

「ギャァァァァ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ヒィィィィイ!」
「たすけてくれぇぇぇぇぇ!」
「探せ! 
 敵の居場所を探せぇ!
 ウギャァアァアァアァ!」

 不意に、山賊団が攻撃を受けました!
 山賊団にどこからともなく矢と石礫が降りそそいだのです。
 なんと、魔法の攻撃まで含まれています!
 火炎弾が山賊の頭を斃したのです。
 板金鎧で完全武装していた山賊の頭ですが、私を脅かすために面貌をあげていたのが弱点になったのでしょう。
 そこに火炎弾が叩きつけられ、地に伏してピクリとも動かなくなっています。

「ウォォォォォ!」
「しねぇぇぇぇぇ!」

 ひと目で訓練された軍馬だと分かる馬にまたがった二人の騎士が、生き残っている山賊団に突撃してきました。
 奇襲と頭目の死で混乱していた山賊団は、ろくに抵抗せずに逃げ出そうとしましたが、騎士二人が見逃しはしませんでした。
 馬上から槍をふるって次々と刺し殺していきます。

 周囲からの矢と石礫もやみません。
 ですが矢の数は一気に数を減らしました。
 最初の矢による攻撃には、二人の騎士も加わっていたのでしょう。
 私は、山賊にも後から攻撃してきた者たちにも気づかれないように、密かに逃げ出そうとしましたが、私の合図をティシュトリヤが無視します。
 これは?
 いったいどういうことなのでしょうか?
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです

天宮有
恋愛
 子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。  数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。  そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。  どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。  家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした

黒木 楓
恋愛
 魔力が優れていた公爵令嬢の姉妹は、どちらかが次の聖女になることが決まっていた。  新たな聖女に妹のセローナが選ばれ、私シャロンは無能な姉だと貴族や王子達に蔑まれている。  傍に私が居たからこそセローナは活躍できているも、セローナは全て自分の手柄にしていた。  私の力によるものだとバレないよう、セローナは婚約者となった王子を利用して私を貶めてくる。  その結果――私は幽閉されることとなっていた。  幽閉されて数日後、ある魔道具が完成して、それによって真実が発覚する。  セローナが聖女に相応しくないと発覚するも、聖女の力を継承したから手遅れらしい。  幽閉しておいてセローナに協力して欲しいと私に貴族達が頼み始めるけど、協力する気は一切なかった。

必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓
恋愛
 私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。  前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。  その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。  森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。  数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。  そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

処理中です...