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「おのれ、ルシア!
この恥知らずが!
エルフィンストン王国の至宝である聖女マルティナを殺そうとするなど、我が妹でも許せん!
いや、実の妹だからこそ絶対に許せん!
サンディランズ公爵家の名誉を護るため、兄である私が成敗してくれる!」
「お待ちください兄上!
私は何もしておりません。
聖女マルティナの誤解です。
何か行き違いがあるのです。
兄上は、幼い頃からの私の言動を知ってくださっているではありませんか!
その兄上が私を信じてくださらないのですか?!」
「だまれ、だまれ、だまれぇえぇぇ!
聖女マルティナが嘘をつくはずがない!
私に偽りを言うはずがない!
全てお前が悪いのだぁあぁああぁぁあ!」
ああ、知っているのだ。
私が何もしていないと兄上は知っているのだ。
知っていて、マルティナの歓心が買いたくて、私を殺すのだ。
自分で自分を騙して、私が無実だと知りながら、汚名を着せて殺すのだ。
己の劣情を満たすために、妹の私を貶めて殺すのだ。
また、また殺される。
兄上には斬り殺されるのが決まりだ。
どのように頑張ろうと、最後は兄上に斬り殺される。
この夢の最後はそこに行きつくのだ。
マルティナが笑ってる
兄上には弱弱しい恐怖に怯えるような表情を向けながら、私には、私を陥れて殺せた愉悦に満ちた視線を送ってくる。
趣味が悪すぎます。
陥れた相手に、嘲笑の視線を向けて勝利宣言をするのです。
私は兄以降も、毎夜マルティナに陥れられ殺される夢を見続けました。
代々副宰相を務めるトーフィッケン侯爵家のアレハンドロ。
代々左将軍を務めるマンフォード伯爵家のマルティン。
代々右将軍を務めるグレンヴィル伯爵家のディエゴ。
最後の止めが、マルティナに血迷った国王陛下に殺されるのです!
私はあきらめました。
どうにもならない事だと思い知りました。
国王陛下にも頼れないのです。
国王陛下まで私を殺そうとするのです。
この状況で生き残る術などありません。
ですが、すべてが夢ならいいのです。
全てが夢魔による呪いなら、悪夢に負けなければ生き続けられます。
そう決意して、ずっと耐えてきました。
実際夢から覚めた世界では、マルティナなどいないのです。
この国に聖女はいないのです。
そう思い、これからは悪夢に立ち向かう覚悟をしたとたん、ぴたりと悪夢を見なくなりました。
油断する気はありませんでしたが、夢魔に勝ったのかもしれないと思いました。
ですが、事は最悪の状況になったのです。
教会が聖女を発見したと大々的に公表したのです。
しかも、その名はマルティナだと言うのです。
私はその日のうちに屋敷を抜け出し隣国に逃げました。
この恥知らずが!
エルフィンストン王国の至宝である聖女マルティナを殺そうとするなど、我が妹でも許せん!
いや、実の妹だからこそ絶対に許せん!
サンディランズ公爵家の名誉を護るため、兄である私が成敗してくれる!」
「お待ちください兄上!
私は何もしておりません。
聖女マルティナの誤解です。
何か行き違いがあるのです。
兄上は、幼い頃からの私の言動を知ってくださっているではありませんか!
その兄上が私を信じてくださらないのですか?!」
「だまれ、だまれ、だまれぇえぇぇ!
聖女マルティナが嘘をつくはずがない!
私に偽りを言うはずがない!
全てお前が悪いのだぁあぁああぁぁあ!」
ああ、知っているのだ。
私が何もしていないと兄上は知っているのだ。
知っていて、マルティナの歓心が買いたくて、私を殺すのだ。
自分で自分を騙して、私が無実だと知りながら、汚名を着せて殺すのだ。
己の劣情を満たすために、妹の私を貶めて殺すのだ。
また、また殺される。
兄上には斬り殺されるのが決まりだ。
どのように頑張ろうと、最後は兄上に斬り殺される。
この夢の最後はそこに行きつくのだ。
マルティナが笑ってる
兄上には弱弱しい恐怖に怯えるような表情を向けながら、私には、私を陥れて殺せた愉悦に満ちた視線を送ってくる。
趣味が悪すぎます。
陥れた相手に、嘲笑の視線を向けて勝利宣言をするのです。
私は兄以降も、毎夜マルティナに陥れられ殺される夢を見続けました。
代々副宰相を務めるトーフィッケン侯爵家のアレハンドロ。
代々左将軍を務めるマンフォード伯爵家のマルティン。
代々右将軍を務めるグレンヴィル伯爵家のディエゴ。
最後の止めが、マルティナに血迷った国王陛下に殺されるのです!
私はあきらめました。
どうにもならない事だと思い知りました。
国王陛下にも頼れないのです。
国王陛下まで私を殺そうとするのです。
この状況で生き残る術などありません。
ですが、すべてが夢ならいいのです。
全てが夢魔による呪いなら、悪夢に負けなければ生き続けられます。
そう決意して、ずっと耐えてきました。
実際夢から覚めた世界では、マルティナなどいないのです。
この国に聖女はいないのです。
そう思い、これからは悪夢に立ち向かう覚悟をしたとたん、ぴたりと悪夢を見なくなりました。
油断する気はありませんでしたが、夢魔に勝ったのかもしれないと思いました。
ですが、事は最悪の状況になったのです。
教会が聖女を発見したと大々的に公表したのです。
しかも、その名はマルティナだと言うのです。
私はその日のうちに屋敷を抜け出し隣国に逃げました。
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