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第1章
第54話:ケンカ
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「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」「「「ピュアリフィケイション」」」
ライアンは常に最大の身体強化を使って最前線で戦ってきた。
軍神テュールの加護による身体強化の上から、桁外れに強力な完全同調の身体強化魔術を重ね掛けした状況で、敵の攻撃を躱し急所を貫き戦ってきた。
身体を上手く操る事に関しては誰にも負けないと自負してきた。
その自信通り、一度の練習も無しに完全同調を成功させた!
エマはアイリスのホーリー・ピュアリフィケイションに自分のホーリー・ピュアリフィケイションを完全同調させられなかったが、ライアンとカインとアベルは、エマのホーリー・ピュアリフィケイションにピュアリフィケイションを完全同調させた!
エマとライアン、カインとアベルが四乗の浄化を成功させた。
その直後にまたアイリスの身体が激しく輝きだした!
「エマ、俺たちがついている、安心しろ」
「エマはホーリー・ピュアリフィケイションを放つ事だけを考えろ」
「俺たちが同調させるから心配するな」
再び光り輝いた母親にエマは気が動転してしまっていた。
また母親が死にかけるのかと恐怖してしまっていた。
三人に声をかけられなかったら、普段の能力を発揮できなかった。
だが、三人が声をかけてくれた事で、最低限の冷静さを取り戻した。
何があっても三人が助けてくれると信じられた。
自分は何も考えずに聖浄化術を放てばいいと思えた。
最悪の状況を想定していた四人だったが、現実は違っていた。
悪神ロキの呪いは再起動せず、アイリスの身体の奥深くに抑え込まれた。
四人による四乗浄化は桁外れに強力で、代替解呪薬で凶悪な起動をした悪神ロキの呪いを抑え込む事に成功した。
「……すまない、私の作った解呪薬が最悪の事態を引き起こすところだった」
「あなたが気にする事はありません、悪いのは悪神ロキです。
それと、自らの使徒を見殺しにしようとした神々です。
神殿室に行って正式に抗議しましょう。
加護を返して普通の人間として暮らしましょう」
アイリスがきっぱりと言い切った。
治癒神エイルから強い影響を受けているアイリスが、エイルを批判するなど普通は有り得ないのだが、今回だけは母性が上回った。
父親が作った解呪薬がきっかけで母親が死ぬ。
自分が上手く聖浄化術を操れば助けられたのに、失敗して死なせてしまう。
そうなった時のエマの苦悩と苦しみを考えれば、治癒神エイルを許せなかった。
亜竜ダンジョン村に移住するにあたって、神殿室を造るか造らないかは、とても大きな問題だった。
神々の身勝手さを精霊たちから聞いた四人だが、生きていくために神々の力を上手く利用しなければいけないのも確かだった。
それに、四人なら神々の支援なしでも大魔境で生きて行けるが、村長をはじめとした村人たちは、神々を信じる事で困難な大魔境の生活に耐えている。
信仰の心を蔑ろにはできなかったので、神殿室を造った。
それに、実際問題四人にも神殿室は必要だった。
エマとライアンは、神々から更なる加護を得る為ではなく加護を突き返すために。
カインとアベルは神々を騙して強力な支援を得るために。
「軍神テュール、もう二度と俺に付きまとわないと約束しろ!」
ライアンが軍神テュールの神像を前にして言い放った。
「治癒神エイル、加護と使徒の役目を返上します。
悪神ロキにつけ狙われるだけの加護と役目なら邪魔なだけです」
母親を失いかけたエマが本心から言った。
「主神オーディン、魔術の破壊力を底上げしてください」
「決闘の神ウル、悪神ロキを斃す力を下さい」
カインとアベルは利用できるモノは何でも利用しようとどん欲に願った。
「治癒神エイル、娘を苦しめる加護と役目を返上します」
アイリスは自分の事ではなく娘を理由に加護と役目を返上すると言い切った。
加護が無くならなかったら、主神オーディンに祈り無理矢理にでも消す気だった。
主神オーディンに願って普通の魔術を使ったら、加護が無くなるとライアンの実例を見て分かったからだ。
「教えてください治癒神エイル、私の作った代替解呪薬が悪かったのでしょうか?」
村長、ガブリエルは真剣だった。
代替素材を使ったとはいえ、一世一代の製薬だった。
全身全霊を込めて作り、十分な薬効があると思えたから愛する妻に使ったのだ。
「ガブリエル、貴男の真摯な質問に答えましょう。
あなたが作った解呪薬は完璧でした。
あのような事が起きたのは、悪神ロキが神々の協定を破ったからです。
あなたが解呪薬を作っているのを知り、決められていた呪いを、解呪した瞬間にもっと強力な呪いに変化するように作り変えたのです」
「神々の協定を破ったロキに罰を与えないのですか?」
「残念ながら協定を破ったと言っているのはロキと敵対している神だけです。
ロキと仲の良い神々は、正式な解呪薬なら呪いが解けるから問題ない、先に解呪薬作り方を教えた私の方が協定破りだと言っています」
「そんな言い分を黙って聞いておられるのですか?
向こうの身勝手もですが、貴女様の弱気にも程がるのではりませんか?!」
「神々とそういうものです」
「だったら妻と娘に押し付けた加護と役目を消してください。
ロキにやられっぱなしの神の加護と役目など害悪にしかなりません」
「今加護と役目をとったらロキに対抗する事ができなくなりますよ」
「あなたの加護と役目をなくしたら、ロキが呪いを解いてくれるかもしれません。
神々の支援が欲しければ、その時々に応じた神に願います」
「分かりました、そこまで言うのなら加護と役目を取り上げます!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」「「「ピュアリフィケイション」」」
ライアンは常に最大の身体強化を使って最前線で戦ってきた。
軍神テュールの加護による身体強化の上から、桁外れに強力な完全同調の身体強化魔術を重ね掛けした状況で、敵の攻撃を躱し急所を貫き戦ってきた。
身体を上手く操る事に関しては誰にも負けないと自負してきた。
その自信通り、一度の練習も無しに完全同調を成功させた!
エマはアイリスのホーリー・ピュアリフィケイションに自分のホーリー・ピュアリフィケイションを完全同調させられなかったが、ライアンとカインとアベルは、エマのホーリー・ピュアリフィケイションにピュアリフィケイションを完全同調させた!
エマとライアン、カインとアベルが四乗の浄化を成功させた。
その直後にまたアイリスの身体が激しく輝きだした!
「エマ、俺たちがついている、安心しろ」
「エマはホーリー・ピュアリフィケイションを放つ事だけを考えろ」
「俺たちが同調させるから心配するな」
再び光り輝いた母親にエマは気が動転してしまっていた。
また母親が死にかけるのかと恐怖してしまっていた。
三人に声をかけられなかったら、普段の能力を発揮できなかった。
だが、三人が声をかけてくれた事で、最低限の冷静さを取り戻した。
何があっても三人が助けてくれると信じられた。
自分は何も考えずに聖浄化術を放てばいいと思えた。
最悪の状況を想定していた四人だったが、現実は違っていた。
悪神ロキの呪いは再起動せず、アイリスの身体の奥深くに抑え込まれた。
四人による四乗浄化は桁外れに強力で、代替解呪薬で凶悪な起動をした悪神ロキの呪いを抑え込む事に成功した。
「……すまない、私の作った解呪薬が最悪の事態を引き起こすところだった」
「あなたが気にする事はありません、悪いのは悪神ロキです。
それと、自らの使徒を見殺しにしようとした神々です。
神殿室に行って正式に抗議しましょう。
加護を返して普通の人間として暮らしましょう」
アイリスがきっぱりと言い切った。
治癒神エイルから強い影響を受けているアイリスが、エイルを批判するなど普通は有り得ないのだが、今回だけは母性が上回った。
父親が作った解呪薬がきっかけで母親が死ぬ。
自分が上手く聖浄化術を操れば助けられたのに、失敗して死なせてしまう。
そうなった時のエマの苦悩と苦しみを考えれば、治癒神エイルを許せなかった。
亜竜ダンジョン村に移住するにあたって、神殿室を造るか造らないかは、とても大きな問題だった。
神々の身勝手さを精霊たちから聞いた四人だが、生きていくために神々の力を上手く利用しなければいけないのも確かだった。
それに、四人なら神々の支援なしでも大魔境で生きて行けるが、村長をはじめとした村人たちは、神々を信じる事で困難な大魔境の生活に耐えている。
信仰の心を蔑ろにはできなかったので、神殿室を造った。
それに、実際問題四人にも神殿室は必要だった。
エマとライアンは、神々から更なる加護を得る為ではなく加護を突き返すために。
カインとアベルは神々を騙して強力な支援を得るために。
「軍神テュール、もう二度と俺に付きまとわないと約束しろ!」
ライアンが軍神テュールの神像を前にして言い放った。
「治癒神エイル、加護と使徒の役目を返上します。
悪神ロキにつけ狙われるだけの加護と役目なら邪魔なだけです」
母親を失いかけたエマが本心から言った。
「主神オーディン、魔術の破壊力を底上げしてください」
「決闘の神ウル、悪神ロキを斃す力を下さい」
カインとアベルは利用できるモノは何でも利用しようとどん欲に願った。
「治癒神エイル、娘を苦しめる加護と役目を返上します」
アイリスは自分の事ではなく娘を理由に加護と役目を返上すると言い切った。
加護が無くならなかったら、主神オーディンに祈り無理矢理にでも消す気だった。
主神オーディンに願って普通の魔術を使ったら、加護が無くなるとライアンの実例を見て分かったからだ。
「教えてください治癒神エイル、私の作った代替解呪薬が悪かったのでしょうか?」
村長、ガブリエルは真剣だった。
代替素材を使ったとはいえ、一世一代の製薬だった。
全身全霊を込めて作り、十分な薬効があると思えたから愛する妻に使ったのだ。
「ガブリエル、貴男の真摯な質問に答えましょう。
あなたが作った解呪薬は完璧でした。
あのような事が起きたのは、悪神ロキが神々の協定を破ったからです。
あなたが解呪薬を作っているのを知り、決められていた呪いを、解呪した瞬間にもっと強力な呪いに変化するように作り変えたのです」
「神々の協定を破ったロキに罰を与えないのですか?」
「残念ながら協定を破ったと言っているのはロキと敵対している神だけです。
ロキと仲の良い神々は、正式な解呪薬なら呪いが解けるから問題ない、先に解呪薬作り方を教えた私の方が協定破りだと言っています」
「そんな言い分を黙って聞いておられるのですか?
向こうの身勝手もですが、貴女様の弱気にも程がるのではりませんか?!」
「神々とそういうものです」
「だったら妻と娘に押し付けた加護と役目を消してください。
ロキにやられっぱなしの神の加護と役目など害悪にしかなりません」
「今加護と役目をとったらロキに対抗する事ができなくなりますよ」
「あなたの加護と役目をなくしたら、ロキが呪いを解いてくれるかもしれません。
神々の支援が欲しければ、その時々に応じた神に願います」
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